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ワールドサーガ   作者: 唯辻
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008 vs高等部

 ローレン大陸、勇者の国マークナム、王城、玉座の間。

 その一角に、2人の女がテーブルを挟んで、向かい合わせで腰をかける。

 1人は長い金髪の20歳くらいの見た目の女性。

 彼女の名は、エレノア。

 複数の勇者の中から1人だけがなることのできる聖剣に選ばれし勇者である。

 1人は長い黒髮の16、17歳くらいの見た目の女性。

 彼女の名は、ティナ。

 悪魔たちの統括であった、闇の王。

「ワイスから連絡がきた。リーンが7大悪魔を食べたみたい」

 ティナが困った顔をして言う。

「えーー。本当なの。何がしたいのよあの子 」

 エレノアがくたびれた顔で答える。

「何かを起すつもりかもー。その為に力を集めてるし。 」

「頼むから、こっちには来ないでほしいわね」

 リーンが人の国に来たら大混乱が起きる。

 あの暴れん坊は何をするかわからない。

「リュウ様に連絡をしてみよっと。何か知ってるかもしれないし」

「えーー。あいつかー。まーしょーがないかー」

 エレノアが嫌そうに言う。

「じゃあ、早速」

 ティナは、ウキウキしながらリュウへの連絡を試みようとしていた。






 リード軍事学校、2年7組。

「それでは、授業を始めるぞ」

 代理の教師の声と共に授業が始まる。

 同時に、勢いよく1人の女が入ってくる。

 長い斧を片手に持った、白い修道服をきた金髪の女性。

 その女は教室に入った瞬間に代理教師に襲いかかり、首を斧で飛ばす。

 教室中が絶叫する。

「あらあら」

 そんな教室の中、車椅子に座ったアシリアは呑気に呟く。

「わたくしが目の前で先生を殺させてしまうなんて失態ですわ。普段の担任が強いので油断してしまったかしら」

 1番後ろの席から眺めていたアシリアが、残念そうに続けて言う。

 そんなアシリアの眼前に2人の生徒が左右から飛び出してくる。

 右がアレン、左がアリスだ。

 アレンは左の拳で、アリスは右手のレイピアで斧の女に襲いかかる。

 リュウと共に実戦訓練をしていた2人は、即座に斧の女を殺す為に動き出せた。

 先ほどの斧の女の動きを見て、2人は自分達よりも卓越した動きを斧の女ができることを分かっていた。

 それでも、勝算皆無ではない。

 2人の思いは同じ。

 ここで動かないで、いつ動くんだ。

 たとえ強敵でも、ここにいるクラスメイト達のために戦う。

 襲いかかる2人を斧の女も即座に認識し、斧を構える。

 斧の女は寒気がするほどの殺気で2人を睨みつける。

 それでも2人は覚悟を決め、迷いなく迫る。

 アレン、アリス、斧の女が激突する、、、、その前に、3者は止まる。

「えっ?」

「えっ?」

「なっ?」

 戸惑いを見せる3人に、アリシアが話しかける。

「みなさん、暴力沙汰はもうおしまいですわ。落ち着いて話し合いをしましょう」

 落ち着いた口調だが、声には圧力がある。

「ちょっと、アリシア!この女はともかく、私達を止めることはないでしょ」

「そうですよ。どうゆうつもりですか?」

 止まったままのアリスとアレンは、アリシアに言う。

「話し合いと言いましたわよね。この女のような雑魚でも情報を持っているかもしれませんわ。さて。」

 そう言うとアリシアは炎の魔法発動させ、ピンポイントに斧の女の手足だけを焼き消す。

「ぐあぁぁぁぁぁ!」

 斧の女がその場に倒れる。

 魔法は手から発動させるのが普通だが、直接出てくるのではなく起点となるだけだ。

 繊細なコントロールがしやすい手を起点に、その近くから魔法を発動させる。

 遠距離に魔法を発動させる場合も、その元となる小さな光が飛んでいく。

 しかし、アリシアは直接焼いた。

 手の周りから離れたところから発動など普通はありえない。

 しかし、アリシアにとっては教室程度の広さは手中だ。

 つまり、教室内の人に自由に直接に魔法を発動させることができる。

 崩れ落ちる斧の女と共に、アリスとアレンも動き出す。

「なるほどね。でも、そいつに聞くまでもなく大規模な学校襲撃よ。周りが騒がしいし」

「そういうことではなくて…まあいいですわ」

 アリスにアリシアがめんどくさそうに言う。

「それはそうと、早くみんなを助けに行かねーと」

 アレンが言う。

「そうね。行くわよ、アリシア」

「私は逃ますわよ」

「はっ?」

 アリスが間抜けな声を出す。

「なんでよ。あんた超強いじゃない」

「そう素直に言われると照れますが、危険が来たならこの身が最優先ですわ。防衛は本来この学校の職員がするとこですし」

「そうだけど、これはかなりヤバイわよ。みんなで協力しないと」

「はー。しょうがないですわね」

 アリシアは、白い腕輪を2つを取り出し、それぞれをアレンとアリスの利き腕につける。

「これで貴方達はわたくしの力を貸し受けることができます。戦力不足の貴方達を補強して、わたくしは逃げられるということですわ」

 2人はキョトンと腕輪とアリシアを見る。

「まあ、ありがとうと言っておくわ」

「ありがとうございます。アリシアさん」

 礼を言う2人にアリシアは優しい笑みで答える。

「ふふっ。死なないで下さいね」

 アリシアはそれだけ言うと、他のクラスメイトと共に脱出口を開いて入って行った。

「行くわよ、アレン」

「ああ、行くぜ。アリス」

 2人は大混乱の戦いの場へと身を投じる。





 リード軍事学校、高等部、1年のフロア。

 ショーンは、難敵とぶつかっていた。

 その難敵は長い金髪のポニーテールで、軽装な鎧を纏った30代前半の女。

 その手は白く美しい剣を握っている。

 彼女の名は、ヒストリア。

 複数の国に名を知られる剣聖である。

 対するショーンは両手に魔術式の銃を握っている。

 母譲りの魔法を銃弾に纏わせて放つ。

 もしくは、空の銃から魔法のみを放つ。

 2人の戦闘は拮抗していた。

 ショーンは、高いポテンシャルがある身体能力と魔力で真っ向から銃弾で叩き潰そうとする。

 ヒストリアは、完成された動きで剣を振るう。

 距離の取りにくい校内ではショーンが不利。

 それでも圧倒的な身体能力と魔力を持つショーンは、互角の戦いを見せ、戦闘は長引いていた。

「強いわね。あと2年も鍛えれば、私では絶対勝てなかったあでしょうね」

「舐めるな、雑魚。今で十分だ。さっさと死ね」

 ヒストリアが感心するように言うのに対して、ショーンがイラつきながら答える。

 ヒストリアは迫り来る弾丸を躱し、剣で受けるなどしてショーンを攻め立てるが、ショーンは接近戦になっても引けを取らない強さを見せた。

 完成された超速の剣技を短い銃で受ける。

 ショーンの魔法で強化された銃は簡単には切れない。

 もう一方の銃で拡散弾を撃ち距離を取る。

 それが何度も繰り返された。

 銃の利点を消している状況でも、ショーンは強かった。

 ヒストリアは、それほどの相手でも怯まずに攻め続ける。

 十数回目にもなるヒストリアの接近。

 ショーンは見事に右に避けつつ、左に剣を流す。

 右手の空の銃をヒストリアに向ける。

「本気でいくぞ!」

「私もよ!」

 右手の銃から数百の魔法が弾丸となって飛び出す。

 光り輝くホーミング弾。

 瞬間ごとに数百の弾がヒストリアに襲いかかる。

 それでも、本気のヒストリアは止まらない。

 ヒストリアは自分の知覚能力を最高まで高める。

 予知の域に達した分析能力。

 考えるより遥かに先に動く体。

 見るものには恐怖を通り越し、美しさに感じさせるほどの殺気のこもった攻めがショーンを襲う。

 ショーンがホーミング弾、拡散弾、高速弾などいった多彩な弾を撃っても全てをさばく。

 それでも、銃撃によって動きは制限されるのでショーンは距離を取り続けることができた。

 距離を取り続けながら銃を撃つショーンをヒストリアが追う形となった。

 前衛が欲しいショーンは味方を求めて校内を駆け回る。

 2人の戦いは上の階まで進んでいった。






 リード軍事学校、高等部、3年フロア。

 アイリス、カイト、ケイラの3人も難敵と戦っていた。

 相手は長い銀髪をポニーテールにしている、15、6歳の少女。

 彼女の名は、ソフィ。

 剣聖ヒストリアの弟子であり、才能はヒストリア以上と言われるほどの剣士である。

 手には白く美しい剣を握っている。

 彼女は、一方的にスティレットを持つカイトを翻弄してた。

 しかし、殺しきることができない。

 アイリスが精神系魔法で、ケイトが物理魔法でカイトをサポートしているからだ。

 アイリスの魔法によってカイトが5、6人に増えたように錯覚させ、さらに本物は知覚できないようにしている。

 ケイトの魔法は、ガラスのように透明で鉄のように硬い物質を作り出す魔法である。

 その物質で壁を作って自分とアイリスを守りつつ、礫のようにソフィに向けて放っていた。

 それでも、ソフィは剣聖にも引けを取らない知覚能力と動きで3人を防戦一方にさせるほどの強さを見せていた。

「強すぎるぞ、こいつ!」

「ええ、私達3人でやっとだなんて、凄すぎるわ」

 驚くカイトとケイトに、ソフィは落ち着いて言う。

「いやいや、君たちもなかなかだよ。特に小さい君。今も一番大きな役割を果たしているのにまだまだ余裕が透けて見えるね。僕とサシでやっても勝敗が読めないかもね。」

「買いかぶりすぎだよ。でも、僕達が勝つよ」

 アイリスは笑顔で答える。

「へー。面白いね」

「いくぞ、2人共!」

「ああ!」

「ええ!」

 意気込む彼らだっだが、アリスだけは少し戸惑いを覚えていた。


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