「死神さん2」「死神さん3」
「死神さん2」
ごめんと呟いた方は果たしてどちらだったのだろうか。今やどちらでもない、或いはどちらでもあったように感じてしまった双方向の矛盾が複雑に絡み合ってどちらがどちらだか見分けもつかない。そのいとは妄想の世界だけで実際はとてもシンプルだというのに。
死神さんは本当に、死ななければ消える訳がないのに僕は何を勘違いしていたのだろうか。音に敏感な男は防音の部屋に入っても五月蝿いと言う。最終的には、自分の生命活動をしている音でさえ五月蝿いと呟きその音を消してしまうのであった。という話を何処かで見たのを思い出した。
死神さん死神さんお元気ですか?今も僕の影からその黒い眼で勝機を伺っていらっしゃるのですか?死神さんとの付き合いは友人や恋人や、家族でさえも遥かに上回るんだ、僕が生まれ死んでいくまで、一生ね。君に逃げてばかりだった僕は最近、週に何日か君と共存する方法を考えている。まだ勿論、君から逃げきってしまいたいという願望は消しきれていないのだけれど、でもこれは僕にとっては大きな一歩だと思うんだ。ねえ、君もそう思わないか、死神さん。
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「死神さん3」
ぴぃん、だか、きぃん、だか、一瞬、高い音がした。
それは…、成る程、私の肉を綺麗に削ぎ落としてくれた黒い死神の刃であった。死神は躊躇いもなく、足、腕、腹、と美しい刃で突き刺してく。私は眺めていたが、何処か遠くの方から名前を呼ぶ声がしたと思ったら、死神は姿を消していた。嗚呼死神さん今日は私の命を頂きに来たのでは無いのですか私はまだ生きている、傷口から体温が溢れ出ている、私を揺する友人がいる。死神さん死神さんどうかコイツだけは人生を全うさせてあげてお呉れよ。私もコイツもまともに生きてはいないが…、…?、…しかし自分が生きるためなら何だってしてきた、其れこそが生に執着しているという点では、幾らか浮かばれる、のか?少なくとも、少ない私の良心は、美しい花は愛でていたいと思った。訳だが、けれどもけれどもヤハリ、あの罪、あの罪、あの罪あの罪、罪、罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪とゲシュタルト崩壊が成る程に犯してきたものが死神さんを急かしている、
死神さん死神さんあなたが切り落とした腕が足が酷く滑稽で汚らしい。次はいつ来てくれるのかい、私は傷口を縛る友人を笑った。
ごめん。