表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/27

8. 星を結ぶ二人

 夜の街を抜けて俺の小屋のある丘の上に着いた後、ラオンはひとしきり星を見ながらはしゃいでいた。

 ラオンは、星座を見つけては俺に嬉しそうに教えてくれた。

 ラオンが指差す夜空を見上げてみたけど、俺にはどの星が何座なんだか全く判んなかった。そもそも星を結んで絵を想像するってのが、良く判んねえ。俺には、そのイメージすら難しい。

 そういう繊細なのは、俺にはどうやら向かないらしい。


「小さな頃、点と点を結んで絵を描く遊びが大好きだったんだ。星座を探すのって、それに似てるね」


 ラオンは、綺麗な指で夜空をくるくるとなぞりながら云った。

 そんな遊びも、俺した事ねえから、やっぱ判んなかった。


 夜もだいぶ深まって、小屋に入り扉を閉めると、俺はいよいよ落ち着かなくなっていた。

 狭い、薄暗い小屋の中に、ラオンと俺、二人っきり。


 一瞬呼吸を止めて、そして大きく息を吐き出す。

 変な汗が出てきた。

 心臓が、ドクンドクンしてるのが判る。


 一年前と同じ、二人だけで過ごす、二度目の夜。

 あの時と同じ状況だけど、微妙に違う。


 あの時俺とラオンは、全くのガキそのもの。

 今だって、大人からすれば充分ガキなんだろうけど。


 俺は、閉めた扉の取っ手を握ったまま、ゆっくりと振り向いた。

 

 天井から吊るされた夕陽みたいな色をした電球に照らされて、ラオンは俺のベッドにちょこんと座っていた。膝下を宙ぶらりんに揺らしながら、ちょっと首を傾げるようにして俺を見ている。

 その仕草が可愛い過ぎて、取っ手を握ったままの手のひらに汗が滲んだ。


 うわっ、この感じ、ヤバイ! 雰囲気に呑まれちまいそうだ。

 なんか、話さないと……。


 別に、いけない事とか考えてるわけじゃねぇ。

 けど、夜の魔力にやられて余計な事とか云っちまったり、しちまったりすんのだけは勘弁!


「あっ……、寝間着(ねまき)貸してやるよ。その格好、眠りづらそうだから」


 咄嗟に口をついて出た言葉が、それだった。

 ……なんか俺、下心っぽい事云ってねえ?


 ラオンの服装は、つなぎになったズボンにシンプルな半袖という格好。一年前と同じ。ただ、あの時巻きつけてた不自然な感じのマントはしていない。

 城ではもちろん姫らしい格好してる筈だから、外に抜け出すような服はこれくらいしかなかったんだろうな。このまま寝るには、確かに窮屈そうな格好。


 ラオンの服装を見ていたつもりが、いつの間にか体の線をなぞっている自分に気がついて、慌てて眼を逸らした。


 壁の方を向いたままラオンの前を通って、俺は服がしまってあるチェストの引き出しを引いた。


 ……ろくな服、入ってねぇ……。

 普段と仕事兼用の、汚ねぇTシャツやらタンクトップばっかだし……。


 俺は必死に引き出しをあっちこっち引っ掻き回して、ようやく唯一の新品Tシャツを探し当てた。下は……、このスエットが一番ましかな……。


「ほら、これ」


 俺はその上下二枚を、ラオンの方へ差し出した。

 なんだか照れ臭い気がして、ラオンの事、見れねえ。


「ありがと」


 ラオンは素直に、それを受けとる。

 至って、いつもと同じ調子。取り乱してんのは、やっぱ俺だけなんだ。


「ソモル」


 ラオンが、申し訳なさそうな感じで俺を呼んだ。


「ん、何だ?」


 スエットの方、やっぱ汚くて気に入らないか。そうだよな、俺の着古しだもんな。


「着替えるから、外、出てて」


 少し困ったような眼で俺を見ながら、ラオンはぼそっと云った。


 しまった! そこ肝心なとこ! 全然頭が回ってなかった!


「……おっ、おうっ! そうだよな、ごめん!」


 俺はラオンに背を向けたまま、扉の方へ小走りで直進した。


「着替え終わったら、呼んでくれ」


 一言だけ云い残すと、俺は振り向かずに外に出て、そのまま扉を閉めた。


 湿ったような夜の風が、俺の火照った頬や頭を撫で付ける。

 閉めた扉に寄りかかって、俺は夜空を見上げた。そして、なるべく余計な事を考えないように、俺自身の高ぶった気持ちを誤魔化(ごまか)すように、おぼつかない指で星座を辿った。


                     to be continue    



 

次回 8/30(水)夜の更新を予定しております。

いつも読んで下さる方々、本当にありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ