舌切り雀
舌を切られたチュンを探して、雀のお宿を訪ねたおじいさんは、雀達から大層もてなされました。
「ではおじいさん、お土産をあげましょう。この大きなつづらと小さなつづらのどちらかを選んでください」
「年寄りのワシには重いものはもてないからねぇ、小さなつづらをもらおう」
そう言って、おじいさんは小さな背中に小さなつづらを背負うと、宿を後にしました。
残された雀達は、ほっと一息つきました。
「チュンが舌を切られたと聞いた時は驚いたが、人間悪い人ばかりじゃないね」
「山でチュンを拾ったのもあのおじいさんらしいし、宝物の入ったあの小さなつづらで恩返しができたね」
雀達が口々にチュンチュン話していると、
「緊急事態です!」
一羽の雀が飛び込んできました。
「二つのつづらの中身が入れ替わっていたようです!」
「何だって!と言うことは、小さなつづらに入っているのは宝物ではなく……」
「悪い人間用の、妖怪です!」
「それは一大事だ、このままでは我々は恩人に嫌がらせをしたことになる!」
「大体妖怪なんて心臓の悪いもの、お年寄りに持たせてしまったのですよ!早く取り返さないと……」
「もう不可能だ。我々雀と人間との機動力の差を考えてみろ」
雀達はどうすることもできません。
一方、小さなつづらを背負ったおじいさんは、えっちらおっちら夜の山道を歩いています。
その時、つづらから物音がしました。中身がつづらに当たったようではなく、自らの意思による動きに感じました。
「何だろう?生き物かな」
動物なんかを持って帰ったら、またおばあさんが意地悪しないだろうかと、少し不安になりました。
せめて種類くらいは確かめようと、おじいさんは小さなつづらを地面に下ろし、月明かりを頼りにそうっと開けてみました。
「おかしいな、何も出てこんぞ」
いきなり飛び出してくるかと思ったおじいさんでしたが、そんな様子はありません。
その時、キーキーと微かに鳴き声が聞こえました。よく見ると、月光が射し込むつづらの底に、何かうごめいています。
気になって覗きこむと、そこにいたのは一つ目小僧、河童、ろくろ首、唐傘お化けなどの妖怪でした。
「えらく小さいのぅ」