7話 悪夢はいつか覚めるさ
昨日の事件後、俺は研究所で小さな女の子と出会う。
「そこまでよジェネシス」
黒いショートヘアーに黄色い眼というのに少々戸惑いと驚きが半分半分だった俺。そして幼女、いや女の子は「その体からどう出すんだその魔力」と思わせるくらい強い魔法を目の前で展開していた。
「ロート・ウィンド!」
ロート系魔術。この魔法についてはまだ話していないだろうから話しておこうか。この子が使うロート系魔術は風、土、炎と
3種類があるのだが俺の場合は完全憑依能力の「ロート・エクリプス」もロート系魔術の類である。だがこれは世界に数人しか使えないという「別ロート魔術」で簡単に言えばロート系魔術の外れという感じだろうか?
「チッ!覚えてろ」
尻尾を巻いて逃げ出すジェネシスに対して女の子はその光景を見た後にため息をついて倒れた。
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翌日、俺は重い体を動かすと腕から痛みを感じた。
「昨日のアレか」
手に刺さった研究所の床の破片の跡を見る。まだ完治はしていないので我慢するしか無いのだが出来れば見たくはない。
「アテナは寝てるのか?」
俺が起きたのは日本時刻4時半くらいだろうか、そりゃあ皆も起きていないだろう。
「寝るか」
俺は周りを見渡して二度寝アピールをすると布団へと戻っていった。その時、ソファーから可愛いダブル寝息が聞こえた。
「おいおい、アテナもここで寝てんのかよ」
長くて赤い髪の毛を後ろで結び、ピンク色のパジャマを着て寝ていたアテナ。その光景を俺は見てこう思った。
『か、可愛い!』
2次元の寝顔なんかリアルでは見れない、これは最高であり人生初の出来事でもある。
「あれ?抱いてるのは誰だ」
アテナに抱きしめられている物?につついてみる。
「ん・・・」
モゾモゾ動いて再び寝息を立てる。
「黒髪のショートヘア?まさかあの女の子?」
俺は昨日の記憶をリストアすると確かにジェネシス戦後にこの子は倒れてしまい、俺は女の子を家まで運んだ。
「うん、俺の記憶が無かっただけだよな」
俺の独り言でブツブツ言いながら頷くとソファーからアテナが起き上がった。
「なに・・・起きてたの」
半目で俺の顔を見ているアテナ。
「悪ぃ、起こしちまったか?」
「いいの、もう起きるし」
アテナは女の子をゆっくり寝かせて毛布を被せると髪のゴムを取った。
「なあアテナ。この子は大丈夫なのか?」
俺は女の子に指をさして問う。その問いにアテナは欠伸をして、目を擦ると眠そうに答えた。
「ええ、抱いてた時にマナの暴走を止めたわよ?まあ安静にしてれば大丈夫。」
その言葉に安堵した俺、女の子の髪を撫でていると・・・
「お兄ちゃん・・・」
女の子は何故か髪を撫でているのに反応したのか「お兄ちゃん」と呟いた。
「はへ?お兄ちゃんだって?」
俺はつい変な声が出てしまう、アテナはその俺を見て「まさか?」と疑惑の目を向けてくる。
「いやいや!俺には妹居たけどさ!?違うからな!!」
そう、青空には妹が居た。完全無欠の完璧な妹が。
「ソラの妹の名前は?」
「明日葉」
「へぇ、アスハね」
顎に手をつけて悩む姿勢を見せるアテナ。俺はため息をついて女の子の頭を撫でていると・・・
「ここ、何処?」
女の子はソファーに横になった状態で言う。そしてその声に俺とアテナは女の子に視線を合わせる。
「起きたのか。家だぞ」
正しく言えばご老人夫婦のご好意で家を貸してくれている。
下の階にご老人の家で2階に俺達の家。キッチンやソファーなどはアテナの「創造発明」により作り出された物である。
「お兄ちゃん・・・?」
再び同じ言葉を言って今度は俺に抱きついてきた。
「な・・・?なんだぁぁ!!!?」
現在、天城青空は幼女・・・小さな女の子に壁ドンのソファーバージョンのソファドンをされている。
「ま、まて!それは男子が女子にやる行動なんだが!?ととと、とりあえずどきんさい!」
俺は頬を赤らめながら言うと、指示通りに退いてソファーから降りる。
「青空、あんたそんな趣味があるんだ」
アテナの目からは「リア充死ねばいいのに」 という言葉が俺の心にローカル通信で送られてくる。
「べべべ別に!?これで発情する天城様ではないしぃ!?」
初のソファドンに顔を赤くし、それプラスアテナの不意打ちで額から汗、心拍数上昇。これはほぼ限界に近い。
「お兄ちゃん、隠さなくていいんだよ?」
赤くして双眸を髪で隠すように俯く俺に対し、女の子は俺の顔を覗いてくる。
「う、うるさい!おおお俺は健全で!現実を受け入れない男だぞ!」
もう焦っていて言葉が上手く出ない。
「つーかお前の名前は何だよ!」
顔を赤くしたまま「ビシッ!」という効果音と共に女の子を指す。」
「もう仕方ないなぁ〜。私は風神アスハ、ダンジョン階位7位 スロイングベイルのボスです♪」
小首をかしげながら笑顔で自己紹介をするアスハ。俺は間を置いて?
「はぁ!?おまおまお前まさか明日葉なのかぁぁぁ!?」
「はて?私の他にも同じ名前の方が存在するのでしょうか?」
「なら良かった・・・」
俺は安堵に胸を撫で下ろした後アスハに手を出し
「よろしくなアスハ」
「よろしくです♪お兄ちゃん♡」
これから始まる俺達の物語。次回は何をしようか?