5話 悪夢の始まり その1
研究所の帰り道にアテナと俺はラーメン(俺は醤油でアテナは豚骨)を食べていた。
この店に入る前、俺は古ぼけた店に入ることを拒んでいたがアテナに引きずり込まれてしまった、まあ入ったら食べて行こうと思いラーメンを頼むと何というか滅茶苦茶美味かった。これこそ隠れた名店と言えるだろう・・・
「ふぐぐぐ!」
「呑み込んで喋れ!」
俺は食べ物を口に含んだまま話すアテナに注意した。注意されたアテナは急いで飲み込むと何かを話し始めた。
「てか禁書目録は何故エルシオさんが持っているのかしら」
「それは研究者だか・・・」
俺は話そうとした口を止めて考え込む。確かに「研究者だから」という理由であの禁書目録を渡す奴が果たして居るのだろうか?それなら裏で何か企んでいる可能牲も無いとは言い難い。
「なあアテナ。お前も禁書目録を持っていたとか言っていたよな」
「ええ、私は創造神だから禁書庫に入るのも自由だけどそれがどうしたの?」
尚更おかしすぎる、何故エルシオさんは禁書目録を読んだことがあると言ったのだろうか・・・
「なあアテナ。禁書目録を出すことはできるか?」
「えっ」とアテナは驚嘆の声を上げて「出来るけどここでは危ないわ」と言ってきた。
「じゃあ家だな」
アテナは頷くと再びラーメンを食べ始めた。
一方エルシオは・・・・
「あの2人に私の秘密がばれてしまった・・・」
俺達が帰ってから数時間。研究室の机で頭を抱えて悩んでいると誰も居ないはずのロビーから靴音が聞こえてきた。
「誰だ!?」
エルシオは立ち上がり暗闇をジロリと睨めつける。
「エルシオさんよぉ、んなの殺せばいいじゃねえのかぁ?」
その暗闇から放たれた声にエルシオは「ああ、居たのか」と安心したように言った。
「ちっ。なんだなんだぁ?その言い方は」
舌打ちしてそポケットに両手を突っ込んで現れたのはジェネシス・マグノリア。赤色の長袖シャツに赤い長ズボン、金髪に整った顔立ちをしている。外見年齢だと17歳だろうか。
「研究者さんよぉ?あ~いいわめんどくせぇ簡単に終わらせるから」
頭を掻いた後、袖口から短剣を出した。その光景を見たエルシオは目を見開き数歩下がる。
「何をしようとするんだ?まさか・・・」
短剣を見て戸惑うエルシオ、その一方でジェネシスは
「ギヒ・・・ギハハハハ!面白れぇよ。そうだ・・・逃げろ!泣き叫び助けを乞いながら逃げろぉ・・・」
ジェネシスの気味悪い笑い方とそれに続く言葉にエルシオは震え上がる。
(くそ・・・裏切られたか)
追い詰められたエルシオは近づいてくるジェネシスから遠ざかるように数歩ずつ下がりながら考えた。
(何か手はないのか?)
「さぁ楽しいショーを始めようぜぇ?」
もうこれは完全に「殺される」という感じしかない。もしこいつと戦っても勝算は0.1%にもならないため逃げるか素直に殺されるか2択だ。
「ジェネシス」
その名を呼ぶと同時にエルシオは「まった」のポーズを取る。
「ああ?何だこの場に及んで命乞いかぁ?」
「違う。誰に動かされているんだ?」
エルシオはジェネシス・マグノリアという人物を誰よりも知っている。何故ならジェネシス・マグノリアはエルシオが作ったクローンだからだ。
「知るかよそんなもん。お前に見捨てられたから恨みを晴らしにって理由でもいいだろ?」
「お前を見捨ててはいない!あれは・・・」
「失敗したから俺を捨てたんだろ」
「!?」
エルシオは言葉が出なかった。そうエルシオは昔に護衛のアサシンを作ったが何も目覚めなかったので殺処分しようとしたが当時7歳のジェネシス・マグノリア(別名アルティメット)を殺せなかった。
「もうこの議論はいいだろ?さっさと終わらせようぜ?」
笑顔で近づいてくるジェネシスに対して白衣の内ポケットから出したのは小型の超電磁砲だ。
「許せ・・・ジェネシス!」
超電磁砲の引き金を引くと同時に銃口に電気がチャージされる。
「超電磁砲なんかそんな科学が俺に通用するかよぉ!」
ジェネシスは短剣を片手に走ってくる。エルシオは狙いを定めて「チャージ完了」と表示された超電磁砲を放つと
「だぁーかぁーらァ〜そんなんじゃ俺を倒せないぜぇ?」
超電磁砲を弾いたジェネシスはエルシオに近づくとエルシオの目に目掛けて短剣突き出してきた。それをエルシオは手を目をカバーするように出すとグチャという音と共に痛みがやって来る。
「ぐ・・・」
短剣が手を突き抜けている。その光景に驚いて短剣を抜こうとしたが敵に隙を与えてしまう。落ち着いて深呼吸をして手に襲い来る痛みに堪えながら防御体制を整える。
「へぇ・・・それでも死なないのかァ?」
興味ありそうな笑顔で見ているジェネシス。そして・・・
「もう休めよォ?エルシオさんよぉぉぉ!」
キィン!って音が研究室に鳴り響き、その後は何も音は無かった。
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一方アテナ達というと?
「なぁ魔法陣書いて大丈夫なのか?」
鼻歌を歌いながら床にチョークで魔法陣を書いているアテナを心配そうな顔で見る。
「大丈夫だよ?終わったら消えるしね!さて完成よ!」
床に書かれたのは星座だった。俺はなんか神秘的だなと心で感心していた。
「さてと・・・これから始めるわね」
アテナは魔法陣の中心に立つと肘をついた状態で魔法陣の書かれた床に手を触れる。
「はぁ・・・エルゴラ・ブルーズ!」
ため息混じりに訳の分からない言葉を言うとそれに応えたように魔法陣は赤く光り始めた。
「我は創造神アテナ。禁書庫第23番列禁書番号128番の禁書目録を召喚。」
アテナは召喚の言葉を言い終わると同時に魔法陣の光は増す。
「リジェクトインデックス!」
赤い髪は下から風が吹いたように上に揺れている。木製の床に書かれた魔法陣の床から表れたのは辞書並みに厚い本。
「さてと、ソラ終わったわ」
魔法陣は役目を果たしたように消えていく、それを気にせず本を持った状態でアテナは俺の前に立つ。
「これか禁書目録は」
アテナは頷きながら渡した後「開いたらダメだよ」と俺は注意された。
「アテナはこれを見ても大丈夫なんだよな?」
「ええ、私が見ても使えるかは分からないけど。」
俺はその言葉を聞き、真顔でアテナに禁書目録を渡すと外に出た。
続く――――