勉強の意味
これは、ある高校での授業の一部だった。
ある男子生徒がこう言ったのである。
「センセー!勉強なんてする意味あるんですか?」っと、、、
その生徒が本気で勉強したくないと悩んで言ったわけではないと俺はわかっていた。 だが、 あいにく教師という仕事をしていた俺はこう答えた。
「それは、それぞれの進路とか目標のためだろうよ。それに将来困るのはお前たちだぞ」っともっともらしく答えた。
俺が高校生の頃は高校が嫌いだった。
いや、高校が嫌いだったというよりも勉強が嫌いだったのだ。
確かに教師から進路の話をされると勉強しなきゃと思う。
自然と勉強がしたくなったぐらいだ。
だが、いざ家に帰ってきて机に座るとなんだかすげー勉強したくなくなる。
そして、勉強する意味を意味もなく考えるのだ。
結論 勉強する時間はもったいない
本気で思った。
ここで一つ誤解しないで頂きたいが、決して自分に秀でた才能があったわけじゃない。
特に趣味もない。(強いて言うなら漫画)
特技もない。(これに関しては何もない)
そう、つまりは勉強する時間を潰してまでやりたいことがあったわけではない。
正直、なぜこういう結論に辿り着くのか自分でも分からない。
だけど、本気で思っていた。
これを先生や家族に相談する(その当時はあまり深刻に考えていなかった)わけにもいかなかった。
というか、相談してもわかりきったことを言われるだけだ、な〜んて思っていた。
そうやってなんとなく高校生活を過ごした。
なんと3年間も自分の結論を曲げずにきたのだ。
まぁさすがに大学受験の時は勉強したけど、
そうして今の職業である”教師”という職場に行き着いたのだ。
俺は生徒たちに”模範解答”を答えたあとこう続けた。
「っというのは建前だ。俺は教師として言っただけだ。人として言うならば、勉強の意味を探しているやつは甘えているんだ」
教室は静まり返った。
時計の針が時を刻んでいる音しか聞こえない。
「自分たちで勉強する意味は気付いているはずなんだよ。気付いていないふりをすれば楽だからな。でも、あくまで俺は君たちに勉強をしろと命令しているわけじゃない。教師という仕事は、君たちに等しくチャンスを与える仕事またはチャンスが与えられていることに気づかせる仕事だ。人間、生まれた時から平等じゃない。性格、ルックス、生活環境、
いろんなことで差異が生まれる。じゃあ、全てが最初から完璧だった人間がいたとしたら
その時点で勝ち組負け組が決まってしまう。でも、今の社会それだけでは決まらないのは
皆が平等に教育を受けられるからだ。そのことにいち早く気づいた人が勉強を頑張ったりするのだ。俺が高校生の頃はそんなことには気づかなかった。教えてさえくれなかった。
そのことに関して恨む気持ちはまったくもってないが、君たちだけには気付いてほしい。
だから、勉強頑張れ。以上だ」
授業時間が短くなった。
まぁ俺が柄にもないことをペラペラと喋ったからだが、、
生徒たちに俺のことを教師として面倒くさいやつだと思われたんじゃないかなんて考えている自分の恥ずかしさに暴れだしたくなる。
俺の気持ちとは裏腹に生徒たちはキョトンとした顔でこちらを見つめている。
恥ずかしさのあまり授業を再開しようとおもって喋りだそうとした瞬間、ひとりの生徒が手を叩き始めたのである。
それを合図にして生徒のみんなは、俺に向けて賞賛の拍手を送った。
俺は突然のことでなにがなんだかわからなかったが、一つだけわかったことがあった。
それは、これからの教師人生のどんなときよりも恥ずかしい体験だろうということを、、