中学校。爆弾魔
大石悠真は、パソコンのディスプレイに映し出されている学校の様子を眺めていた。都内のある中学校の風景だった。
教室の中は、ハチの巣をつついたような大騒ぎになっていた。
突然、部屋の真ん中で爆弾が爆発したのだ。それも、魔力と釘などの金属片で威力を強化された“釘爆弾”だ。
犯人は、1人の少年だった。
彼は世をはかなみ、自らを無視し続けた世界に復讐を果たそうとしていたのだ。
「似ているな…」と、ユウマはつぶやいた。
「似ているな。昔のオレの姿に。1歩間違えば、このオレもあんな風になっていたのかもしれん。あるいは、アレ以上に酷いコトをし続けて生きてきたのだろうか?こことは別の世界で…」
爆弾魔は1人だけではなかった。そんな人間が、数多くいた。
別の世界への扉が開かれて、魔術の基本を身につけた者が、東京都内を中心に全国各地に生まれ始めていた。その多くは、若者であった。
それは当然である。年を取れば、自然と学習能力は落ちる。新しい分野に挑戦する意欲は薄れ、新たな能力を身につけることは困難となっていく。
いかな、別の世界への扉が開かれ、無限の可能性が広がっていようとも、劇的に成長を遂げるチャンスがあろうとも、そんなモノはないに等しかった。
画面の中の少年は、釘爆弾を教室の真ん中に投げ込むと、そのまま教室を飛び出し、学校を飛び出し、逃げ出した。
そうして、そのまま逃げ続け、やがてひとりの男にドスン!とぶつかった。
男は、なにやら少年に話しかけ、少年は激昂しながら反論している。
だが、やがて少年の態度が変わってゆく。徐々に落ち着きを取り戻し、最後には素直になり、男に手を引かれてどこへやら消えていった。
「またか。いつものパターンだな…」と、ユウマはつぶやく。
ここの所ずっとこうなのだ。アチラコチラで爆発やら殺傷事件やらが起こったかと思うと、大人の男や女が現われて、実行犯を連れ去ってゆく。
「昔ならば、これもオレの役割だったのだろうが。さすがに、そういうのにも疲れた。疲れたし、飽きた。全ては同じコトの繰り返し。同じコトはつまらない。つまらないし、退屈だ。今回は、別の者にまかせるとしよう」
そう独り言をつぶやくと、ユウマはまた画面を切り換えて、別の映像へと意識を集中した。