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天才は、世から疎まれるのが常

 大石悠真おおいしゆうまは、天才であった。

 悪いことに、ユウマ自身そのコトを自覚してしまっていた。

 世の中というのは、そういう者に対して厳しい。徹底的に糾弾きゅうだんし、ありとあらゆる手段を用いて潰そうとする。“出るくいは打たれる”というわけである。


 ただでさえ、人々は異質な存在を嫌う。

 横並び一線。誰もが同じラインの上に立っていなければならない。いくらかの能力差があったとしても、大きく外れてはいけない。大きくおとっていてもいけないし、優秀過ぎても困るのだ。

 劣っていればバカにし、優秀過ぎる者に対しては攻撃を加える。


 人というのは、そういうもので。

 自分よりも下の者が存在すると安心する。

「アイツはバカだなぁ。なんてマヌケな奴なんだ」と上から見下ろすことで、精神の安定を得るわけだ。

 その逆で、見下ろされるのは嫌い。だから、いかなる手段を用いてでも、自分よりも上の存在には消えてもらわなければ困るのだ。

 いわば、嫉妬しっというわけだ。見苦しい行為ではあるが、仕方がない。心の平穏を得るために、人々が編み出した“人生術”であるのだから。


 ましてや、おのれの能力を自覚した天才に対しては、容赦ようしゃしない。

「何を偉そうに!実力もないクセに!自信過剰が!」と攻撃してくる。

 実際には能力に見合っただけの自信だったとしても関係ない。そういった存在を排除せねば、自分の身が危うくなるのだ。はるか上の能力者が存在するだけで、自分の存在価値を失ってしまう。そう考えてしまう。それが、凡人の発想だ。


 ユウマは、以前、別の世界に住んでいる時、そのコトを痛いほど思い知らされた。

 同時に、不思議にも思っていた。

「どうして、その思いを、“自らの能力を上げること”に使わないのだろうか?それだけ人をうらやむ心があるならば、それを成長に使えばいいのに。それだけ人を憎むエネルギーがあれば、それ原動力にすればいいのに。それで、さぞかし大きく成長できるだろうに。強くなれるだろうに…」

 いつも、そんな風に考えていた。

 そして、自分ではそれを実行していた。人に攻撃されればされるほど、憎まれれば憎まれるほど、嫉妬されればされるほど、より強い心のエネルギーを手に入れ、能力に変えていったわけだ。

 ズタズタのボロボロになり、身も心も傷だらけになりながら、それでも決して生きることをあきらめなかった。時として瀕死の重傷を負うこともあったが、その後しばらくの時をかけて回復し、以前とは比較にならぬほど強力な能力を身につけて戻ってくるのだった。


「いずれ、世界を…この世界を滅ぼしてみせる。このオレを認めなかった、このオレを攻撃した、このオレを傷つけ滅ぼそうとした、この世界そのものを!」

 たった1つその信念をかてに生き、戦い、成長をし続けてきたのだ。

 だから、似たような境遇にある者に対してはやさしかった。そこに共感を覚え、援助を惜しまなかった。ユウマによって育てられた優秀な人材も数多い。

 ユウマは、そんな者たちの多くを、前の世界に置いてきてしまっていた。だが、扉を開いたことで、少しずつではあるが、そういった者たちがこちらの世界へとやって来るようになっていた。

 そうして、こちらの世界に影響を与えるようになっていたのだ。


 ユウマ自身、そのコトはよく知っていたし、「いずれは連絡を取るのも悪くないな」と考えていた。「昔のようにまた一緒につるんで何か事を起こすのもおもしろそうだ」などとも考えていた。

 だが、現時点ではそうはしていなかった。

 たった1人、強力な魔力を秘めている魔女をかたわらに置き、それ以外の者とはただ一言の言葉すらわそうとはしていなかった。

「いずれ、時が来れば…」

 それが、ユウマの口ぐせのようになってしまっていた。けれでも、時はなかなかやって来ようとはしない。

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