ゆげひのつかさ 活躍譚5
さて 始まります。
玄関を通され 少し入ったそこに その部屋はあった。
「失礼いたします。 瀬織様がおいでになられました。」
「うむ 通せ。」
案内された部屋は、どちらかというと執務室のような作りになっている
渋いフローリングの床に 高価であろうペルシャ絨毯が
敷き詰められており そこにある調度品どれをとっても
名のある作品に違いないものばかりであった。
恭輔は、それらを見て この主人の趣味の良さを感じとり
嫌みのない部屋に 主の人柄を見た。
そして その部屋の中央に置かれたソファーに 一人の老人が
待っておられた。 笑うでもなくかといって威張るものでもなく
自然に 荘厳に その老人は そこにいた。
「まずは 座っていただきたい」
「 そなたが、瀬織の当主か? 何代目になる?」
「はい 私で 87代目と相成ります。」
「そうか、してお父上は かわりないか?」
「先代をご存知ですか? ただ今 父は 田舎で田んぼを
耕しております。」
「なに?! かのものは、畑仕事に? そうか そなたに
全幅の信頼を置いているのだな・・・。 そうか
それでは 私も 何も言わず ことの顛末を見守ろう。」
「申し遅れたが 私が、 この家の当主 西京寺 智親である。
万事 よろしく 頼む。 」
「わかりました。 まずは、我が瀬織の護符を確認した後
ことに あたります。 それまでは、 この部屋から
お出にならないよう お願いいたします。 ただ今から
この部屋を 陰形いたします。 しばらくご不自由ですが
よろしく お願いいたします。」といいながら 勝手知ったる
その手順で 粛々と余分な動きをせず ことに及んだ。
まだ どうした事情で依頼がきたことや
なぜ 恭輔がそれをしないといけないのか
場面を広げながら ご説明いたします。