9 僕は婚約者と楽しくお昼を食べれる訳がない!
「わあ〜〜、結構見晴らしがいい所ね〜」
僕達は屋上にご飯を食べに来ていた。どうやらこの学校の屋上は藤咲さんに気に入ってもらえたらしい。
「さ〜て……」
そう言うと藤咲さんは、屋上の周りを見渡し、誰もいないのを確認すると
「ああ〜〜、つっかれた〜」
と屋上に設置されてるベンチに座って足を組む。
「………………」
健は口を大きく開けて固まっていた。
「大体さ〜、何であんな根掘り葉掘り聞かれなくちゃいけないの! 何が『彼氏とかいるんすか?』よ! いちゃあ悪いのかって⁉︎ あんたに関係ないってーの!」
「……お、おい、俊一……こいつマジで、あの藤咲の娘なのか?」
「う、うん。間違いない!」
半信半疑な健に僕ははっきりと答える。
「あっ⁉︎ やっぱりだ! 俊君、そいつに私の事話したんでしょ?」
「う、うん……い、いいでしょ?」
「うん、いいよ! だけど……」
「ぐあっ⁉︎……い、いだい……」
いきなり頬をビンタされました。
「未来の妻に相談ぐらいしてね」
「…………はい」
「……は、はは……し、俊一の気持ちが理解できたぜ」
僕が叩かれた姿を見て顔を引きつらせている健がいた。
「で、坂口……だっけ? こいつ呼ばわりしたり、私に動じなかった様子からして……全く私に関心ないわよね?」
「ん? ああ、まあ、そうだが。何だ? 喋り方とか直してほしいのかよ?」
「結構よ。そのままでいいわ。やっぱりね〜、自己紹介の時に唯一、私の方じゃなく違う方みてたからね〜。あぁ〜、こいつならうざくなさそうって思ったのよね」
「……ふっ、俺にとったらクラスの男共が何でお前を見て騒いでいたのか理解できないぜ」
「あら、私が美人だからでしょ? ねえ〜俊一君」
藤崎さんは甘ったるい声を出しながら僕に寄りかかってこようとするが、僕はそれをスルーした。
「藤咲さん、そういうのは自分で言うものじゃないと思うよ? さあ、そんな事よりも早くご飯を食べよう」
僕はスルーした事で一人ベンチに転がっている藤咲さんを無視して弁当箱を開けた。
「おっ⁉︎ 美味そうな物入ってるじゃねーか! エビフライくれよ?」
「しかたないね〜、じゃあ健の所に入ってる唐揚げと交換ね」
僕達は互いにオカズを交換しあった。
「藤咲さんも早く……えっ? ち、ちょっ⁉︎ 何でにぎり拳を! 落ちついて……‼︎」
「そんな事よりって何よ〜〜⁉︎ 何でスルーしたのよおおお〜〜‼︎」
「げはっ⁉︎…………ぐふっ……」
グーで殴る女って……。
「お、おい、俊一! 大丈夫か⁉︎」
「こ、こんなんでも…………最高だと……思う? う、うぅ〜」
「俺が悪かった!」
珍しく健が謝ってきた。僕にとっては謝られる方が辛いかもしれない。
「それで話の続きなんだけど……」
え〜っ! 僕は放置?
僕は殴られた鼻を押さえて藤咲さんを見た。そんな僕を見て藤崎さんは眉を吊り上げる。
「何か用かしら? 俊一君?」
「い、いえ……何もありません」
「よろしい!」
にっこり笑いながら胸をはって満足げな表情をする。
「…………は……ははは」
それを見ていた健の口から半笑いが漏れていた。