8 僕の親友がこんなに頼りにならない訳がない!
僕は休み時間になると逃げるようにして屋上にやってきた。
ここなら落ち着ける。
「えっ⁉︎」
ポンと肩を叩かれビックリして振り向くと、後ろに健が立っていた。
「やっぱりここにいやがったか……って、んなに驚くなよ! 心配すんな、あいつは教室でクラスの奴らから質問攻めにあってるぜ」
「……………」
「……………」
「何も聞かないの?」
「言いたくなったら、言えよ」
「……そう………………僕と藤村さん、結婚するかもしれないんだ」
「ふーん…………………はあああああ〜〜〜⁉︎⁉︎」
屋上に健の大声が鳴り響いた。
「健、いきなり大声出さないでよ! 鼓膜破れたらどうすんだよ!」
「はっ⁉︎ い、いや………………はあああああ〜〜〜⁉︎⁉︎」
「健、それ2回目だから…………でも、健でもそんなに驚くんだね?」
健はまだ信じられないらしく、何度まかぶりをふっていた。
「い、いや、普通に驚くだろ? 何がどうなってんだよ! すげー面白い話しじゃねーかよ⁉︎」
「全然面白くないけどね。彼女、実はさ…………」
話を聞き終えた健は腹を抱えて笑いだした。
「くっくっくっあっはっはっはっ、ひ、ひぃ〜は、は、腹いてぇ〜」
そんな健の姿を見て少しムッとしてしまう。
「ねえ、そんなに面白い?」
「い、いや、だってさ……ぷっ、あっはっはっはっ」
「………………」
「わ、悪い。ごほんっ……だ、だってよ、何か漫画みたいな話しじゃねーかよ! しかも、ベッタベタな」
「まあーいいよ。それよりもどうすればいいんだろう?」
「いや、どうしようもないだろ? 諦めて結婚しろよ!」
僕は他人事のようにお気楽に答える健をジト目で睨んだ。
「おいおい、俺を睨むなよ。それに考えようによっては最高じゃねーか? いい女と金、全部手に入るじゃんよ!」
「………………」
確かに言いようによっては最高だと思う。
しかし………。
「健、お前は知らないだろうけど彼女は性格がとんでも…………」
そこでタイミング悪く休み時間終了の予鈴がなる。
「おっと、教室に戻ろうぜ!」
「えっ、えーと話の続きが…………うん」
僕らの教室に静寂が戻り、先生の声が室内に響く、その声をみんなは聞いているのか、いないのか、わからないけど黒板の右上にある掛け時計の針は着実に進んでいく。
昼休みになりいつもと同じように健とご飯を食べに行こうとしたら、藤咲さんに呼び止められてしまう。
「時任君? 話しがあるんだけどいいかしら?」
顔はニコニコと笑顔なのだがその笑顔の裏に何か恐怖を感じる。
「えっ⁉︎ け、健、あ、あそこにいる坂口と一緒にご飯食べに行こうと思ってるんだけど……」
藤咲さんは、何故かじーっと健を見ている。
(も、もしかして、健の顔がタイプのなのかな〜)
………………はっ⁉︎
ぼ、僕は何故か今一瞬、それならいいな〜と思ってしまった。僕は馬鹿だ! 友達を巻き込もうと考えるなんて。
彼女は僕にしか聞こえないような小さい声で言った。
「彼なら心配なさそうね」
「え?」
「それなら私もご一緒させて貰っていいかな〜」
上目遣いで聞いてくる。
「えっ? で、でも……」
「いいじゃない、行きましょう」
僕の腕をとり引っ張るように健の席に向かった。
何故かその時、何人かがガタっと席を立ったような気がしたが気にしないようにしよう。
「け、健、藤村さんも一緒にいいかな?」
「いいかな?」
「いいぜ。行こう」