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3 僕はメイド服を着た美少女とドライブしたい訳じゃない!

「………時……」

 …………。


「起……任………」

 …………んっ。


「……起きて」


 誰かに声をかけられて、揺さぶられてるような感覚がする。


 だけど、僕の身体はまだ起きる事を許してくれなかった。


「起きて……って……むにゃむにゃ……今日は土曜……むにゃむにゃ……朝早……」


「……………っ!」


「ぐあっ⁉︎⁉︎⁉︎」


 突然の激痛に勢いよく起きあがる


「ふぅ〜ふぅ〜……な、何……が……」


 一体、何が起きたか分からず状況を確認しようとして、ようやく自分の身体の上に重みがある事に気付く。僕はまだ寝ぼけていて頭が覚醒していないのかと思い、なんども頭を振ったが、残念ながら何も状況に変化はない。


 メイド服を来て頭にカチューシャを付けた美少女が僕の腹の上に馬乗りでまたがり僕を見下ろしているのだ。


「…………………」


「おはようございます。目は覚めましたか?」


 そう言ってぺこりと頭を下げる。


「……う……」

「う?」


「うわあああ〜〜⁉︎⁉︎⁉︎」


 僕はあまりの驚きに大声を出して起き上がり、腹の上の女の子を突き飛ばして一階に降りた。


「か、か、か、母さん‼︎」

「もう〜そんな大声出して、どうしたのよ〜」


 母は朝ご飯を作りながらのんびりした声を出す。


「どうしたのじゃないよ⁉︎ 今、見知らぬ女の子が僕の部屋にいるんだよ‼︎」

 慌てながらも何とか伝える。


「女の子って……あっ! 俊一を起こしてくれてありがとうね、鈴ちゃん」


「え? うわあああっ〜〜⁉︎⁉︎」


 隣を見ると、先程のメイド服を着た女の子が立っていた。僕は驚いて飛びずさる。


「いえいえ、お気になさらずに」

「俊一! 起こしてもらったのに、お礼も言わないで驚いているなんて失礼でしょ⁉︎」


 ど、ど、ど、どうなっているんだ⁉︎


「改めまして……藤咲家の使いで来ました、香川 鈴と申します。以後お見知りおきを」


 …………。


「お母様、何故俊一様は先程からぼ〜っとされてるのですか?」


「うふふっ……本人信じられなくてびっくりしてるのよ。だって、この子ったら、ずっとこんな話しある訳ないって言ってたもんだから」


「あれっ? 手紙は届きませんでしたか?」

「読んだけど、いたずらって言って聞かなかったのよね〜」


「なるほど〜」


 居間に移動し、そんな二人の会話を頭の片隅で聞きながら、今だに信じられない思いでいた。


(ど、どうなってるの⁉︎ う、嘘じゃない? あの藤咲家が僕を婿にしたい? あはは、漫画じゃあるまいし……)


「うが〜〜〜〜っ! 分からない⁉︎」

 僕は頭を抱えた。


「大丈夫ですよ。しっかりと説明しますから。……というか、まあ安心して下さい」


 そう話す香川さんの言葉に何か嫌な予感がする。


「本当にもうこの子ったら! 大丈夫だと思うけど、まあ馬鹿だからよろしくお願いしますね」


 母さんにだけは、馬鹿って言われたくない‼︎


「それでは、分かりやすいように場所を変えて話したいと思いますがよろしいですか?」

「よろしいです! そうしてあげて」


「ち、ちょっと、待って! 勝手に決めないでよ! その話しが仮に本当だとしても僕は嫌だよ‼︎ ……って、どうして香川さんはそんなに驚いてるの⁉ 普通そうでしょ!︎」


 彼女は目と口を大きく開けて僕を見てくる。


「驚きました! 貴方のような方初めて見ました。信じられません!」


 興奮気味に話してくる香川さん。


「へ?」


 びっくりして素っ頓狂な声を出してしまった。


「今までお嬢様の婿養子を探しているとワイドショーや週刊誌で発表しましたら、それはそれは蜜に群がる蜂のごとく集まる集まる……俊一様のように断った方は初めて見ました!」


「まあこの子ったら本当に馬鹿なんだから」

「か、母さん! そんなに何度も馬鹿馬鹿言わないでよ!」


(でも……あれっ? 本当に僕がおかしいの⁉︎)


「いいですか、俊一様。もしお嬢様と結婚されましたら、藤咲家の全てが手に入ると言っても過言ではないと思います。つまりですね。現在この国での半分以上がゆくゆくは、貴方の者になると言う事ですよ!」

「………………」


 そう言われても、スケールが大きすぎて理解できません! 理解できる事は色々大変そうだな〜と思うだけで、僕は両手を広げお手上げのポーズを取った。


「お母様! この人の頭大丈夫ですか!」


 不機嫌そうに僕のを方を見て、母に尋ねる香川さん。


「初対面なのにずいぶんな言い方で……」

「本当よね〜、私もそれが心配で大丈夫かしら?」

「ちょっ⁉︎ 母さんまで話しに乗らないで⁉︎」


「だってね〜」

「ですよね〜」


「「あはははははっ」」

 二人は声を揃えて笑いだす。


「はははっ……さて行きましょうか」


 香川さんは、いつの間にか僕の腕を取り、無理矢理立ち上がらせようとしてくる。


「鈴ちゃん、よろしくね。彼女にも」

「はい」


「ちょっ⁉︎ だから……僕は」


「とりあえず来て下さい! そして、話しだけでも聞いて下さい。そうしないと私が困ります!」

「いや、困りますって言われても……」


「煮え切らない子ね〜。さっさと行きなさい!」

「わ、分かったよ! 行けばいいんでしょ行けば!」


 外に出るとものすごい車が玄関の前に止まっていた。


「これってイタリアの高級スポーツカーじゃ⁉︎⁉︎」

「良く分かりません。早い車が欲しいですって頼んだらこれを下さいました」


 すごい話だ。


「さあ、そろそろ旦那様が起きて来られる時間だと思いますから急ぎますよ! ぼけっとしてないで、さっさと乗って下さい!」

「うわっ⁉︎ ちょっ⁉︎」


 香川さんは僕を車に押し込むと同時に車を急発進させた。


「ま、まだ、シートベルト………って、これ何キロ出てるの⁉︎」

「見てないから知りません! それよりも飛ばしますから、しっかり掴まっていて下さいね!」


「頼むから速度メーター見て下さい! あと、危ないから飛ばさないで安全運転を‼︎ わあっ、信号赤⁉︎⁉︎」

 グングンスピードが上がり、周りの景色を追い抜いていく。


 グングングン………。


「上がりすぎ〜〜〜⁉︎⁉︎ ぎゃあああ〜〜〜⁉︎⁉︎⁉︎」

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