07 将来設計
その日の午後は空が暗くなったため、来る雨に備えることにした。
先にゲズゥが、倒れている大樹の太い根幹の下に屈んで入った。ミスリアが続く。二人は土の上にそれぞれ腰をかけて、間に荷物をまとめて置いた。
数分もしない内に、小雨が降り出した。
「水筒は」
「はい、ここに」
ゲズゥの言わんとしていることが伝わったのだろう。ミスリアは空の水筒の蓋を開け、雨水を貯め始めた。二本の水筒が一杯になると、蓋を閉めた。
「後は食べ物を確保しなければなりませんね」
ぽつりと、ミスリアが呟いた。
「何か狩るか」
目を合わせずに提案する。
「狩りの道具あるんですか?」
「罠を作る」
勿論その気になれば他にも作れるが、ゲズゥは元々飛び道具の扱いが苦手なため、罠を好んで使っている。大型の動物もそれなりの成功率で獲れる。
「何かお手伝いできることがあれば言ってください。残念ながら、私は狩りはあまりしたことがありませんけど……」
「漁は?」
前に島育ちだと言っていたのを思い出したので訊いてみた。
「網を使った漁ならお父さまとよく行っていました。お父さまは銛打ちも得意で」
懐かしそうに語るミスリアを、ゲズゥは横目に眺めた。
「漁師の家だったのか」
少しだけ意外に感じる。普通なら、いずれはどこかへ嫁に行くのが自然な将来設計だったろうに。
それをわざわざ聖女になろうと考えたのには、何かしらきっかけがあったはずだ。
「そうです」
返事はたった一言。
それきりミスリアは口をつぐんだので、ゲズゥも特に追求しなかった。
その頃には、大雨になっていた。