05 這う彼ら
「わっ」
うねうねと動き回る太いピンク色のソレが間近に見えて、カイルサィートはうっかり手を放してしまった。手に持っていた雑草が、くっついていた土ごと落ちる。
しばらく地面の上でもがいてから、やがてソレは元居た場所に戻ろうと這い回る。
「どうかしたかい、カイル」
少し離れた位置にしゃがんでいる叔父がのんびり問いかけてきた。日よけのために帽子を被っている。
「えーと……ミミズ? が、出てきました、引っこ抜いた雑草の根辺りから」
園芸用の手袋についた土を払いながら答えた。今日の青期日の午後は、空いた時間を利用して叔父の庭弄りを手伝っている。
「うん、抜いた雑草にたくさん土がくっついていると、そういうこともあるね」
「あんなに長くて太いものだとは知りませんでしたよ」
「雨の日なら皆溺れないように土の中から地上へ出てくるよ。もっと大きいのも一杯見れる」
叔父が愉快そうに笑ってそう答える。
なんとなく雨の日の図を想像してみたら、微妙な気分になって顔を逸らした。
「ミミズは苦手かい?」
「そういうわけではありませんが」
さっきは驚いただけだった。
「見た目はともかく、土壌改良に重要な役割を担うんだよ」
「聞いた事あります。人間でいえば土を耕しているような働きで、養分も与えてくれるんですよね」
「そう。他にも薬になったり家畜や釣りの餌になったりと、人間にとって大事な生き物だよ。といっても、総ての生き物は他の何かに取って重要で、役割を持たない生き物なんてこの大陸の何処にも居ないのだけどね」
微笑む叔父に、カイルサィートは頷いた。その通りだと思う。
住処に戻る直前、ミミズが小鳥にくわえられた。鳥は数度口を開閉し、嘴より遥かに大きいミミズを喉の奥へと押し込めている。そのミミズには残念だが、世界の構造は実によくできているなぁ、とカイルサィートはふと思った。