03 食べられるモノなら何でも
草の上に寝転び、木陰にて涼んでいた午後だった。
頬杖ついて、どこともなく目線を泳がせていた。が、ふいに何か黒いものが視界を過ぎった。考えうる可能性としては虫や小動物が妥当だろう。
ゲズゥは大して気にせず、続けてぼーっとする。
まもなくして何かふわふわしたものがまつげをくすぐった。反射的に何度か瞬くと、すぐそこに前足を持ち上げて立つ黒いリスが現れた。尻尾が当たっていたらしい。
それは野生の黒リスにしては肥えた個体だった。本来の小柄な体格ではなく、まったく食うに困らない生活の気配を漂わせる。教会の中庭のパティオに設置された、鳥の餌でも横取りしているのか。
人間に近づくことに恐れを抱かない、よく太ったリス。真っ先に思い当たることといえば「焼けば美味そうだな」という予想だった。
黒リスはつぶらな瞳を光らせ、食べ物をねだるように頭を何度か上下させている。一度前足を下ろして二歩進み、期待に満ちた様子でまた後ろ足立ちになった。
しかしゲズゥの頭の中ではリスを可愛がってやろうなどという気持ちよりも捕まえて腹の足しにしようという思考の方が強い。彼は少しだけ上体を起こした。
ガラス張りの戸がガラッと開けられた。
「こら、クレパチオ。こっちにおいでなさい」
建物の中から、黒い服を着た四十路の男が出てきた。
呼ばれて黒リスはすぐに反応した。素早く走り寄ってはピーナッツのようなものを司祭の手のひらから食べさせてもらっている。なるほど、餌付けされているから人懐っこいのだろう。
捕まえる気が失せたので、ゲズゥは寝返りを打った。
「…………残念だな」
「何がですか?」
司祭は不思議そうに訊ねる。