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01 生活習慣
神父アーヴォスを送り出した後、ミスリアは教会の中に戻ってゲズゥの姿を探した。いつも彼は信じられないくらい静かに過ごしているので簡単に気配を読み取らせてくれない。
風呂場にてやっと、見つけた。
ゲズゥは鏡台に向かい、薄くて細い刃物を顎に当てている。
「何をしてるんですか?」
異性の生活習慣に疎いミスリアは何気なく訊ねた。
「ひげそり」
刃物を台の上に置き、ゲズゥは顔を洗いに行った。
彼が髭を剃る場面に出くわしたのは初めてだった。といっても教団の男性は朝は身だしなみを整えてから宿舎を出るゆえ、男性が髭を剃ってるところなんてそもそも初めて見た気がする。
自分が決してやらないことをしているからか、何だか見ていて不思議な気分になる。
「道中もしていたんですか?」
「……生えるのが遅い。必要なかった」
その答えに――なるほど、先天的に髭が生えるのが遅いから今まで私も目についたことが無かったのかな――と、ミスリアは納得した。
ブログに使っていた拍手御礼掌編のログです。