表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜子様と桜姫  作者: 白羽湊
不良様のお姫様。
4/21

我が儘と姫

はっと気付いた時はもう遅く、視界が揺らいだ。

瞬間頭の中をかき回されたような酷い衝撃が私の意識を呑み込もうとする。

しまったと思いながらも、どうしてだか意識が揺らぎ、遠退いていく。

その感覚に逆らえないまま、段々と視界がぼやけ、音も届かなくなる。

「動くんじゃねえ!!」

ナイフボーイの大声が耳元に届き、この人にやられたのだと気付いた。

が、もう遅い。

体は自分のものじゃないみたいに、言うことを聞かず動かない。

最後に(じゅん)が私の名前を読んだ気がした…。

そこで私の意識は途切れる。




俺は(あかり)がこいつらに、人質扱いされた時から、頭の中が無性に怒りで満ちていた。

何故かなんて、考えなくても想像できる。

簡単な話。

俺らの世界に、何の関係もない奴を巻き込まれたせい。

知り合ったばかりだったとはいえ、何だか変わった奴だななんて悪い意味じゃなく感じていた。

俺らみたいな明らかな不良にたいして、いい奴だなんて一般人に言われたのは初めてだったせいもあるかもしれないが…。

普通に生きて笑えていた奴を、簡単にこっちの世界に巻き込まれた。

しかも人質なんて…。

本当に腹立たしい。

でも…何か俺もいつもと違う。

____何故だろう?

ああ、そうか。

これも簡単な話だ。

俺もあいつらと、何ら変わらないから…か。

『不良』って言う同じ部類の人間だから。

星に恐怖を与えたであろう奴らと結局は俺も変わらないから、単純に怖いと思ったのかもしれない。

本当に出会ったばかりでこんな事を考えている理由が分からないが、自らに恐怖を与える存在として、嫌われたくなかった。

…まあ、なんて思ったのかは俺自身も実際わからない。

でも気が付いたら、その怒りみたいなものが抑えられられなくなって、奴らに叫んでた。

あんな奴らに簡単にムキになって自分でもバカだと思う。

やってらんねえ。

兎に角どうしようもないこの怒りを、ぶつけるように相手に向かっていた。

…だから周りにまで気を付けていられなかった。

______鈍い打撃音と、星の小さく短い悲鳴を聞いてから漸くハッとした。

でも、その時じゃもう遅い。

「動くんじゃねえ!!」

星を背後から襲ったのであろう奴が、星を抱えたまま叫んだ。

星の首元には、光に反射してギラつくナイフがある。

星を挟んで反対には、ナイフを構えている奴と一緒にペラペラ話していた奴。

今回の計画の発案者はこいつら辺りだと思う。

星は頭を強く打たれたのか、既に意識を手放しているようで、両脇の奴らが支えている。

「おいっ!星ぃ!!」

俺の頭の中が一瞬真っ白になった。

それに、ここまで完全に人質の形をとられてしまうと、俺も迂闊に動くわけにはいかなくなる。

まあ、奴らも一応そのつもりで星を縛ったまま連れてきたのかもしれないが…。

そうなれば、脳みその足りてなかったのは俺だったということになる。

何とも情けねえ話だ。

挑発して、簡単に終えるはずだったのに、頭に血が上ると状況は見えなくなるし、判断力も鈍くなる。

…俺の悪い癖。

「おい!動くなって言ってんだろうが!!」

ナイフを持った奴が、また叫んだ。

その声で渋々動きを止めた。

敵の半数位は片づけたとは言っても、俺の周りはまだ複数人残っている。

残っていることはさして問題ではないが、星を人質に取られている事で色々ややこしい。

これからどうしたものか…。

考えようとはするが、星のことが気がかりで仕方ない。

「ゔりゃあ!」

星の方へ意識をやっている間に、背後から殴りかかって来られ寸でのところでかわす。

すぐさま殴り返そうかとも思ったが、一応動くなと言われているのだから下手に動かない方が良いだろう。

別方向から今度は二人同時に向かってくる。

喧嘩のやり方の美学じゃねえけど、基本複数人いたとしても相手するのは一対一じゃねえのか?

まあ、そんなの古い考えかもしれねえし、彼奴らも切羽詰まってそういうことにかまってられねえってことか。

そんなことを考えながら、特に慌てるわけでもなくそいつらの攻撃をかわす。

手は出してねえし(星が捕らわれてからは)、まあいいかと勝手に納得。

「おい!う、動くなって言ってるだろ!!こいつがどうなっても良いのかよ!?」

やはり相手様は不満だったらしく、再び俺に向かって叫んだ。

強がってる割には、声が震えてるけど?

でも…ナイフを握る手に力が込められているのは頂けない。

星の首にはナイフを当てすぎたのか、色の白い首元には細く赤い線がついている。

これ以上は本当にまずい。

今度こそ俺は動きを止め、そいつに向き合った。

「本当に、どうしたもんかねえ。」

軽い溜息とともに、独り言が漏れる。

今度こそといきり立つ奴らに周りを囲まれる。

こいつらを一瞬で片付ける事は容易でも、それだと星に危険が及ぶ…。

絶体絶命ってやつかな?なんて考えていると、星の両サイドにいた奴のナイフを構えていない方がゔぁぁ!と呻きながら地面に倒れた。

「何や、随分と派手にやらかしとるやないの。」

星達の背後からの声。

その瞬間ナイフを持ったやつの顔が恐怖に引きつり、俺は思わずにやける。

「いいとこ取りのナイト気分か?尊。」

「その気取ったやつに助けられたんや。感謝しい。」

そういう尊は声こそ明るいものだが、目は全く笑っていない。

「その子、離してもらえる?」

尊が背後からナイフを持ったやつに向かって言う。

口調は穏やかだが、疑問形であってもそれは命令。

ナイフを持つ手が震えている。

まるで蛇に睨まれた蛙のよう。

震えるばかりで動けないらしい。

「…遅いわ。」

ドガッ!

待てなかったらしい尊が、一瞬で奴の目の前に移動し、その腹を一発殴りつける。

そいつがバタッと前方に倒れこむと同時に、ナイフはカランと音を立てて地面に転がった。

支えをなくした星が、倒れこもうとするのを尊が抱きとめる。

俺同様、俺の周りでいきり立っていた奴らも、一瞬の出来事に思わずその場で見入っていた。

「おい、盾。さっさと済ましい。」

尊が星を抱きかかえたまま、俺を見て言う。

「ああ、言われなくても。」

尊の言葉にニヤリと周りに視線を向けたまま笑う。

何ともいいタイミングで来てくれたもんだ。

おかげで星も無事に助けられたし…。

無事と一言では済まないのだが、今は良しとする。

俺が笑ったのと、周りのやつからゴクリと唾を飲む音が聞こえたのはほぼ同時。

そこから周りの奴らを片付けるのは、あっという間だった。

_____「おい!そこで伸びてる奴らに言っとけ。次にこんなことしやがったら、派遣争いなんかに関係なかろうが、お前らのチームを潰してやるってな!」

俺が殴った奴の一人の髪を掴んで顔を上げさせ言い、俺らはその場を後にした。






_______から________!!

__________だよ。

何処かで聞き覚えのある声が聞こえる。

その声は刺々しく感じられ、怒っているようだ。

まだ頭がぼうっとしていて、会話の内容は聞き取れない。

少しずつ意識が覚醒してゆく。

「だから!俺が行った時には、星は彼奴らに捕まってたんだよ!」

…盾?

どうやら大声を挙げている一人は盾のようだ。

「せやから、何で星ちゃんが巻き込まれてんねん。」

「俺も知らねえよ!」

盾と話しているのは…尊?

関西弁で訛りのあるこの声はきっと間違いない。

「…兎に角、もう仕方ないわ。それでいくで。」

何か決まったみたいだけど、何のことやら。


それより…。

「私…何で…?」

目を開けてみるも、そこは見覚えのない天井。

自分はソファーに寝かされているようだ。

「「星の目が覚めたみたい。」」

私の呟いたのが聞こえたのだろう、双子が声を揃えて言ったのを聞いて、複数の足音が近付いてくる。

「星!!大丈夫か!!」

真っ先に目の前に飛び込んできたのは、盾。

「盾…?」

他のみんなも口々に、私を気遣う言葉をかけてくれる。

でも…全然状況が掴めない。

「あの、えっと、私一体どうしたの…?」

自分の体勢から眠っていたらしい事は分かった。

取り敢えず起き上がろうと、ソファーに手を付く。

「____っ、痛いっ!」

起き上がろうとしたはずが、手に思うように力が入らず、腕の力ががくんと抜ける。

ソファーに倒れ込みそうになるのを、背中に添えられた腕によって支えられた。

「大丈夫かいな?」

視線をやると、眉を寄せて覗き込む尊の姿。

尊がそのまま私の体勢を変え、背凭れ(せもたれ)に背中を預けるようにしてくれる。

「ありがとう、尊。」

どういたしまして、と返ってくるも、その表情は申し訳なさそうに眉が下がっている。

「どうしたの尊?…それに、私は一体どうして…。」

考え出して、漸くハッとする。

先程までの事を思い出した。

「私…不良様にぶつかって…それで、私の知ってる桜里高校の人のところに案内しろって…。…で、千里に戻ってきた時、盾が来て私を助けようとしてくれて……。あれ?それで私どうしたんだっけ?」

その先は…。

「俺のせいで、お前が気絶させられて、人質になった。…んで、尊が来てお前を助けた。…安心しろよ。あいつらは全員しめといたから。」

私の先を盾が話してくれる。

…成る程、成る程。

つまり、私の不注意でトラブルになったのに、それに盾、そして尊を巻き込んでしまったと。

そして情けないことに、気絶させられこうして今、双子達にも迷惑をかけてしまっていると。

……うん。

おい自分!一体どれだけ人様に迷惑かければ気が済むんだ!?

申し訳なさ過ぎるじゃないか!!

…私の馬鹿、馬鹿、馬鹿。

「本当に、俺のせいで_____、」

「ごめんなさい!!」

こんな私に向かって尚も謝ろうとする盾を遮って、できる限りの大きい声で告げる。

ガバッとソファーから立ち上がり、頭を勢いよく下げる。

「「「はっ!?」」」

「えっ??」

揃いも揃った間抜けな声に思わず私も、間抜けな声を返してしまう。

「おい!ちょっと待て!星、今の話のどこにお前が謝るとこがあったよ!?」

盾が盛大に突っ込む。

「えっ??」

「えっ?っじゃねえ!大体なんでお前が謝るんだよ!!」

「何でって、そりゃあ私が悪かったから____」

「はっ!?だから何でお前が悪いんだ!!」

「だって、私が不良様にぶつかったりしたから…。だから私の不注意で絡まれたのに、みんなを巻き込んでしまって…。だから!」

「はいはい、二人ともちょっと落ち着こな。」

尊の言葉で会話は途切れ、同時に盾は盛大に溜息を付く。

「星、…お前が悪いんじゃねえよ。」

今までよりトーンの下がった低い声で呟く盾。

「悪いの俺らの方だよ。俺らが迂闊に一般人と…星、お前と関わっちまったせいだ。星だって、俺らと知り合ってなかったら彼奴らに捕まることもなかった。」

盾の視線は私と絡むことはなく、下を向いている。

何だろう…。

何か話があっているようで、食い違っているような…。

「星ちゃん堪忍な。勝手に俺らの世界に巻き込んでしまって。」

…これって、さっきも聞いた。

「尊も、盾と同じこと言うんだね?」

「同じこと?」

「うん。盾もね、私を助ける時に相手の人たちに言ったんだ。俺らの世界に巻き込むんじゃねえって。」

「…そうなんか。」

「でもさ、それって違うと思うんだよね。」

「違うって、何がや?」

「俺らの世界って、『不良様の世界』って事でしょ?そこに巻き込まれた…ううん。勝手に関わってしまったのは、誰のせいでもなくて私のせいなのに。」

「そやけどな、そういう事だけじゃないねん。」

尊が何か言いそうなのを無視して続けた。

「何か勘違いしてるみたいだけど、私はそもそも今回のこと、尊達のせいだとかこれっぽっちも思ってないよ?寧ろ、危ないところを助けてもらって、感謝してるの。だから、なんかその申し訳ない、みたいな態度やめてよ。」

本音だった。

というより、最初は何で皆が謝ろうとするのかが分からなかったくらい。

「尊も盾も、皆優しいんだね。やっぱり皆いい人だよ。」

素直に思ったことを口にした。

そうしたら自然と笑顔になれて…これも皆の力だろうかなんて考える。

「星ちゃんは、ほんまに変わった子やね。それに優しい。…でもな、」

笑う尊はそこで一度言葉を切ると、真剣な表情に変わる。

「だからこそ、星ちゃんはこれ以上俺らとかかったらあかんよ。」

「____えっ…?」

尊の言った一言に、それ以外に何も言えなかった。

いきなりの展開に頭が追いつかない。

何でそんな話になったのか…。

周りにいる皆もしんとして、尊と私のやり取りをただ見守っている。

「俺らは見てわかる通りの不良やろ?そんな俺らと関わるっちゅうんは、星ちゃん自身も危険に晒されるっていうんは分かるか?」

尊の問いかけに黙ったまま頷く。

「今回は俺らの目の届く範囲やったけど、いつかは本当に何かされるかもしれへんし、さっきみたいな怖い思いはしたくないやろ?」

確かに…尊が言っていることは分かる。

普通なら不良様の世界に首を突っ込んだ挙句、このまま尊達と関わり続けるのは得策だとは言えない。

自分でも分かるし、理解しているつもりだ。

…でも、何だろう。

この納得できないと思ってしまう気持ちは。

「お前が眠ってる間に、色々話したんだ。んで、結論がこれ。今回絡んできた奴らをしめれば、これ以上お前に危険が迫ることもないだろうってな。」

「…盾。」

「お前だって、その方がいいと思ってんだろ?頭は良いんだ。それ位も分からねえようなバカじゃねえよな?」

馬鹿、か…。

確かに、馬鹿だとは思って欲しくないが、やっぱり納得できてない自分がいた。

自分はやっぱりバカなのかもしれない。

「僕らもね、こんな不良に変わらず接してくれた星ちゃんの事、」

「いい人だなって思ったし、」

「「友達になりたいなって思ったんだよ。」」

双子がしゅんとして、寂しそうに言う。

「「でも、だからこそ危険な目には合わせたくない。」」

「…透、馨。」

皆の思いが伝わってくる。

こんな私のことを色々考えてくれたらしい。

それに双子はこんな私のことを友達になりたいと思ってくれていた。

「なんか、不思議。」

ぽろっと出てきた言葉にも、皆は耳を傾けてくれる。

「こんな私のことを出会ったばかりなのに心配してくれる人も、ましてや友達になりたいと思ってくれていた人も、皆が始めてだよ…。」

「「えっ…?」」

双子の反応は予想通り。

「私いつもは、殆ど誰とも話さないの。というより、人に関わらない。…人が怖いとかそういうのじゃないと思う。だけど今までずっとそうしてきたから。…だから皆が私のことを思ってくれて、凄く驚いたし、嬉しかった。____ありがとう。」

最後の言葉以外は誰に言うでもなく、空を見上げて窓の方を見ながら、独り言のように呟いた。

「だからかな、急に我儘になっちゃったみたい。こんないい人達と離れたくないなって…。」

「…星ちゃん。」

「でも皆が私のためにそうするべきだって言うなら、分かった。今後は皆に関わったりしない。…色々迷惑かけて御免なさい。」

「いきなり、突き放すみたいになっちまってすまない。」

すまなそうに視線を下げる盾を見て、改めて感じる。

出会ったばかりにも関わらず、助けてくれて、身を案じてくれて…。

自分は凄く恵まれている。

でも、彼らがどうしてここまでしてくれるのかは分からない。

…それに、私は今の気持ちを、それを表現する言葉を知らない。

私自身も、経験のないことにどう言い表せばいいのか分からなかった。

が、自然と頬には涙が伝っていた。

理由は分からないが、悲しくもないのに流れる涙…不思議と嫌な感じはしなかった。

「なあ星、お前のその涙は辛かったこと思い出してんの?それとも俺らの事怖くなった?」

ブンブンと首を横に振る。

急いで流れた何だをごしごしと拭いて、みんなを見る。

「全然怖くないよ。さっきも言ったでしょ?私は皆に感謝はしてるけど、怖いとかそんなこと思ってない。皆が私のこと考えてくれてるんだって思ったら、凄く胸がいっぱいになって…。言葉にしたいんだけど、なんて言ったらいいのか分からないの。でもね、涙が出てるのに、嫌じゃないんだ。嬉し泣きなのかも。」

ニコリと笑って見せると、皆は少しだけ驚いた顔をした。

「それともう一つ、…ねえ、どうしても皆の側にいちゃいけない?」

私はやはり諦めがつかなくて、口にした。

そしたらもっと驚いた顔を返された。

「…何でだよ。お前今まで俺らの話聞いてなかったのか!?」

盾が少し声を荒げる。

「聞いてたよ。」

「だったら!_____」

「理由とか、はっきりとは分からないけど、こんな形で折角出会えのに簡単に離れてしまいたくない…って言うか、何て言うか。うまく言えないんだけど。…ほら、私って友達少ないから?」

全くなんて言い訳だろう。

自分でも呆れる。

でも本当にうまい理由が思いつかなかった。

それにどうして自分が、そもそもそんなことを思っているのかも謎だったりする。

人と関わって来なかった、今までの自分では考えられない。

何なんだろう。

自分でも知りたかった。

「お前なあ!_____」


_____ピリリリッ、ピリリリッ。

盾の大きな声が無機質な音で遮られる。

ケータイの着信?

「俺や。」

鳴っているケータイの持ち主は尊らしい。

着信に出ると、何か言いたげだった盾も静かに尊の話が終わるのを待っている。

何か大事な連絡でもあっているのか、相手の話にああ、と頷く尊の表情もどこか険しいように見える。

「そうか、分かった。半分は返して、残りは引き続き頼むわ。…ああ。」

尊が話を終え、切るとみんなが妙に尊の方に視線をやっているのが分かった。

「…間に合わんかったみたいや。」

それを聞いた周りは、はあっと肩を落とした。

余程良くないことでも起きたのだろうか。

私にはさっぱりだが…。

皆は勿論その一言だけで、状況が掴めるのだろう。

「あの…、間に合わなかったって?」

一応口に出してみるが、今度は私の方に視線が集まり聞くべきではなかったと感じる。

まあそれはそうか、不良様の世界のことだったなら私が首を挟む事じゃない。

「…聞いてちゃまずいなら私は外すよ?」

気まずくなってそう言うが、

「いや、星ちゃんもおってええよ。」

意外にも返ってきたのは、いてもいいという許可。

「寧ろ星ちゃんにも関わることやから、ちゃんと説明するわ。」

しかも、何だって??

どうやら私にも関係があるらしい。

心当たりはないが…。

一体何のことを話しだすのか…疑問だ。

取り敢えずは、話を聞く態勢になる。

「星ちゃん、さっき俺らといたいって言うたよね?」

こくりと頷いた。

「その話やけど、ええよ。」

「………えっ?」

いきなり質問から始まり、何を言い出すのかと思えば、えっ?

何を言っているんだ。

頭がついてこないから、そう言うことはやめて欲しい。

どういうことかと聞こうとしたが、尊が続けて話し出す。

「というよりな、嫌でも一緒にいてもらわなあかんくなったんよ。」

「……は、はあ。」

変な相槌が出てしまう。

そりゃそうだ。

先程までは、危険だから自分達とは関わるなと言ってきたのに、今度はいきなり一緒にいてもいい…いや、居なければいけなくなったなんて。

「…私はバカにされてます?」

「そんな風に思う?」

「思いません。」

はい、軽はずみなこと言いました。

すいません。

全然ついていけないもんでつい…。

「何でそんなことに?」

自分で冗談を言ったので、自分で話を戻す。

「星ちゃんさっき絡まれたやろ?」

「ええ、まあ。」

「簡単に言うとな、俺らの事探りにきたっちゅう奴らは、彼奴らだけやなかったんよ。」

「………つまり?」

「俺らと直接接触のあった奴らは、全然問題なかったから解決したと思っとったらな、実は別に情報持ち出した奴がおったんよ。」

ええと…。

盾達の事を探りにきたのは、私が絡まれた人達だけじゃなくて、ほかにもいたと。

「問題はそいつの方でな、そいつ自身も派遣争いに関わるようなチームの奴で、俺らの事まんまと持っていかれてしもた。」

つまり、派遣争い?に関わるくらいのチームの人に、情報がばれてしまったと。

ん?でも、待て待て。

「あっ、あのさ尊、話してるとこ悪いけど…盾とかの情報が漏れたことに私って関係ある?関係なくない?」

私の言葉に尊が溜息をつく。

また何か変なことを言ってしまってのだろうか。

内心反省する。

「関係なかったら良かったんやけどなあ。」

その言い方だと、明らかに…。

「星ちゃんも関係あるんや。残念なことに。」

「…デスよね。」

でも、関係があると言われても、今日あったばかりの彼らとそれ程深く関わった記憶はないのだが…。

「そいつがなこう言ったんやって、『桜竜に姫ができた』って。分かるか?」

「桜竜に姫ができた…?」

…何のことだ?

何かの暗号だろうか??

でも、それに私が関係してるなんて…益々分からない。

私が頭を抱えているのが分かったのだろう。

盾が助け舟を出してくれる。

「まず、桜竜が何なのかは分かるか?」

「うん。何となくなら。」

桜竜っていうのは、盾達のチームの事…だと思う。

そんな感じの事を、私を捕まえた人達が言っていた。

「姫ってのは女の事。」

「はあ、女。」

繋げると、盾達のチームに女ができた…?

「女ができたって、日本語が間違ってるんじゃない?」

「「星、突っ込むべきところ間違ってるよ。」」

双子に揃って駄目出しされてしまった。

でも他に何か突っ込むところはあったか?

「女の人がチームに入ったって事?不良様の世界に女の人は珍しいとか?」

「お前はバカか!」

今度は盾からの、大きな駄目出し。

…意味がわからない。

「はあ、星ちゃん。俺らのいう『女』っていうんはな、大事な奴ってことなんよ。」

「大事な人…?」

溜息混じりに説明してくれたのはありがたいが…尊、分からないよ。

ごめんなさい…。

「あぁ、これじゃ先に進めねえ。つまりだ!」

痺れを切らした盾が、話をまとめてくれるらしい。

「そいつが言った『桜竜に姫ができた』ってのは『桜竜に大事な女ができたらしい』ってことになる。その女ってのはお前のことだ、星。」

いい加減話聞いて気付けよ、と付けたされる。

だから…それはつまり…。

整理すると…桜竜に姫ができたという情報の表紙を飾っているのは………私!?

「……えっ?______えええ!!」

一瞬気が遠くなりそうになる。

というより何でまたそんなことに…。

尊が私の表情を伺っているが、私の言いたいことは察して貰えたらしい。

「盾と俺が、あいつらから星ちゃんを守ったやろ。それのせいやで。」

笑って話しているが…すいませんが笑えません。

「特に盾のな。盾が、あいつらに向かってイライラ剥き出しで言うたやろ。」

…ああ、確かに大声でかっこいいようなことを言っていたような。

「それをはたから聞いて、こう思ったんよ。あいつらが守ってるなんて、大事な奴に違いないって。」

完全には間違っちゃいねえよな、盾が笑っていうが…。

「その変な情報に私が関係してるのは分かったけど、それがなんで皆と一緒にいないといけないっていうのに繋がるの?」

「「星ってやっぱりバカなの?」」

「透、馨、しれっと失礼なこと言わないで。」

だって仕方ないと思う。

「私の頭の中今色々忙しいの。それに私、不良様の世界のことなんか全然知らないんだし…。」

ちょっといじけ気味に言うと、

「せやなあ、星ちゃんほんまにこっちのことわからんみたいやし、ちゃんと言わないかんよね。」

尊が優しくフォローしてくれる。

この人たちの中では尊が一番、私の事を分かってくれていると思う。

まあそれだけ、私の事を見ているとも言えるが…。

別に不快感はないし、言わなくても察してもらえるのは嬉しいことでもあるので良しとする。

「桜竜に姫ができたっていうのの、姫がどんなもんで、それが誰なのかは分かったんよね?」

「うん。姫は大事な女の人の事で、…一応それが私って事になってる。」

「なんや気に入っとらんのやね。」

「まあ、それなりに。」

尊がクスクス笑って続ける。

「じゃあ、何で『姫』なのか分かる?」

…質問の意味が良く分からない。

要するに、姫ができたっていう言い方は、どうして姫っていってるのかってこと?

確かに女の人を表すなら、わざわざそんな呼び方をしなくてもいい気がする。

「…分からない。」

「せやったら、お姫様ってどんな存在?」

「えっ?…うーんと、守ってもらってるイメージかな…。」

「良いとこついとるよ。何でお姫様は守られてるん?」

「それは…、お姫様が大切な人だから?」

「そういうことや。俺らの世界で大事な女の事を『姫』って言うんはそれと同じ。だから、桜竜に姫ができたっていう言い方の『姫』て言うんもそれと同じなんよ。」

私が言われてる姫もそれと同じ…?

「さっきも言うたやろ?姫っていうんは大事な女のことやって。大事やから守られとるってこと。だから姫や。」

「成る程、成る程。何で姫なのかはわかったけど…、私の聞いた答えになってないよ?」

「ああ、それと自分が俺らと一緒にいないといけないっていうのは、どんな関係があるのかってことやね?」

こくりと頷く。

「まあ、聞いとき。ちゃんと繋がっとるから。星ちゃんが姫って言われるなら、自分が『大事で守られとる姫』なのは分かるやろ?」

「うん。不本意だけど、理解はする。」

「まあ…それでええわ。その姫はな、ただ愛でられとるだけじゃ済まんのや。」

「それって、どういう意味?」

「敵側に攻めようと思う時、相手に大事にしてる女がおったら、そいつを狙わへん?」

「そうなの…かも。」

「つまり、姫っていう存在は、大事であればある程、チームにとっては弱点になるって言えるやろ?」

ああ、そういうことか。

自分は知らないところで、多いに不良様の世界に関わってしまっていたようだ。

それも、大事にされている姫なんて言う扱いで。

そしてそれは、盾や尊達にとっては、弱点となってしまう存在だと。

「だから…私は皆と一緒にいないといけないんだね。私が『姫』に成っちゃったから。」

「分かってくれたみたいやね。」

…何だか大変なことになりそうだ。




なんかペースが落ちてきている気が…。

い、いや、気のせい気のせい気のせいwww


兎に角!無事に第四話書きあがったし☆

良しとしよう( ̄▽ ̄)

それにしても、星が気絶してから喧嘩が終息するのが早かったような…。

もう少し引っ張るべきだったのかな??

結局、一番長くかかったのが星への説明だったので、

そのまま今回のタイトルにしてます( ´ ▽ ` )ノ


話の内容も、書き方もぶれまくってる気がして…。

読んで下さった方には

感謝と申し訳なさが一杯です( T_T)\(^-^ )

もしそれでもいいという心の優しい方がいてくれたなら

次の話も読んでいただけると嬉しいです☆

ここまでお付き合いいただきありがとうございました☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ