屋上
私の名前は日角星。
ここ私立千里学園に通う、ごく普通の高校生…のはず。
だけど、私はどこかで何かを間違えてしまったらしい。
何が一体どうなっているのやら。
さっぱりだ。
もちろん、私の知らないだけ、若しくはこれらは悪い夢である事も考えられるが…。
だから、試しに両手で頬を抓ってみる。
ーーーーイタイ。
やはり夢ではないようだ。
でもでも、これはきっと何かの間違い、間違いであって欲しい。
段々と自信が無くなってきた…。
この学園には不良様なんていう種類の方は居なかったはずなのだから。
思考をフル回転させている分、私の本体は…つまり体は完全に機能停止。
直ぐにでも何かしらの手段を考えなければならない筈だが、頭の中はご覧の有様であるから、当然体も動かない。
「あらら、完全に固まってしもてるやん。」
目の前の不良様の一人が可笑しそうに笑う。
私の目の前にいる不良様は全部で五人…多分。
いや、間違ってはいないだろうけど、なにせこの思考回路だ。
人数を数えるという簡単な事も、今の私では間違えているという事も十分に考えられる。
「「盾がガンつけたカラだよ。」」
別の二つの声が綺麗にハモった。
「俺は何もしてねえよ!ガンつけるとすれば、俺より健次郎だろ。」
先程の声にまた別の声が答える。
会話の流れから、今答えた人は盾と言うらしい。
「俺はそんな無駄な事しねえよ。」
次に聞こえたこの声の主が健次郎なのだろう。
何処か凄みのある、苛立っていそうな声だった。
「ってか、あいついつまでああやって固まってる気だ?」
「せやなあ、そろそろ戻って来るんちゃうか?」
「「もどっておいでえ」」
「………。」
私が固まっている間に、喋り出してしまった彼等。
どうやら私のことを話し出したらしいが…生憎まだ私の頭は停止中の為、動くことは疎か、声も出せそうにない。
ああ、誰か私を助けてーーー。
そんな事を思っていた私の視界に、突然影がさした。
驚いて視界をクリアにし、ピントを合わせる。
「おーーい。お前大丈夫かあ?」
目の前に広がるのは先程と打って変わり、人の顔。
かなりの至近距離から覗き込まれているらしく、下手に飛び上がって驚けば、ぶつかってしまいそうだ。
そうなれば、きっとますます状況が悪くなってしまう。
それだけは避けるべきだ。
かと言って、このままでいるのも気まずいことこの上ない。
どうしよう。
それに、近すぎるとはいえ、彼の行動は私を少なからず気遣ってのことだ。
ふいには出来ないし、話しかけられたのなら返事を返さなければ。
「あっ、ああ!…ええと、はいっ!!」
いけない…。
完全に声は裏返り、明らかな挙動不審ぶり。
我ながら情けなくなってくる。
ああ、絶対良くは思われなかっただろう。
もしかすると、相手の人にぶつかってしまうのと同じ展開になるのでは…。
恐る恐る覗き込んできた相手の顔を見やる。
彼は、驚いた表情…というより、私の目には強張っているように見えてならない。
やばい、本当に怒らせてしまったのかもしれない。
背中を冷たいものが伝った気がした。
何か言った方が良いのだろうか。
いや、何か言うべきに決まってる。
でも、なんて言おう?
そもそも、最早手遅れかもしれないではないか。
何やってるんだと自分を責めていれば、返ってきたのは複数の笑い声だった。
「「「ははははは!!」」」
更に状況が掴めなくなりそうだと肩を落とす。
「あっ、あのぉ…」
口を開いてみるが、小さな声は笑い声に掻き消された。
「おい、お前らなんで笑ってんだよ!?」
私の側に来ていた彼も、この状況が掴みかねるらしい。
振り返って大声で問うている。
それでも笑っている方々は、笑うのをやめない。
聞こえていないのか、はたまた聞こえているが無視なのか。
隣に立つ彼は益々不機嫌さが滲み出ているように感じるのは、私の気のせいと言うことにしたい。
「おい、好い加減!!ーー」
「ああ、笑ろたわ。」
「「やっぱり盾が怖いんだよお。」」
「はっ!?何で俺が怖いんだよ。意味わかんねえ。」
隣にいる彼は私を見やりながら、苛ついた声色で言う。
やはり謝らなくちゃいけない。
そう思った私は、思い切って口を開いた。
「あっ、あの!ーーーごめんなさい!!」
そう言って勢いよく頭を下げる。
我ながらなかなか大きな声が出たと思う。
頭を下げたまま、相手の返答を待っていたが、返って来たのはまたしても複数人の笑なんい声だった。
「「「ははははっ!」」」
驚きというより、単純に疑問に思い思わず頭をあげて、状況を確認しようとする。
今度は隣に立っていた彼も笑っていた。
ポカーンとしている私ーーー。
「やっぱり、怖がっとったんやね。なんか、怖がらせたみたいですまんかったなあ。」
関西弁を話す彼が、眉を下げて私を見ている。
それを見て思った。
あれ?何だか、私は急な展開に驚いていただけで、肝心なところを見逃していたのではないかと。
そもそも、私はどうして、彼らを怖がっていたのだろうか?
確かに、いつもなら誰もいないはずの屋上に、居たことで驚いてしまったのは本当だが…。
よくよく考えれば、彼らが私に何かしたわけではない。
私の勝手な思い込みで、怖いと思っていただけではないのか?
そう思うと、急に今までの自分の行動が恥ずかしく、申し訳ない思いで一杯になる。
と、同時に今までの緊張や怖さが自然となくなった。
頭も段々と冷静さを取り戻し、頭が動き出す。
「ごめんなさい!!」
「はっ!?」
「「えっ!?」」
私の口から再び謝罪の言葉が聞かれるとは思っていなかったのだろう。
先程私を気遣う言葉をかけてくれた人は口があんぐりあいているし、他の人はご丁寧にもそれぞれにリアクションをとってくれたようだ。
「だからそんな謝るなよ。俺らだって別に何も怒ってねえのに。」
「「そうだよお。」」
今度はオロオロしているようだ。
益々この人達は悪い人じゃないと思い始める。
きっといい人達なんだななんて考えると、自然と表情からも緊張が解け、思わずクスリと笑ってしまう。
「いえ、そうではないんです。」
周りは頭の上に"はてな"が浮かんでいるらしい。
首を傾げる人、眉を寄せる人、顔を見合う人等反応はそれぞれに違うが、同じことを言いたげだ。
「私の勝手な思い込みで、皆さんの事を悪い人だとか、怖い人だとか思ってしまって。本当にごめんなさい。」
そう言って、もう一度頭を深く下げた。
「きっと皆さんはいい人なんだと思うんです。…すいません。私、いつも誰もいない屋上に人がいて、しかも目立つ感じの方だったので、一人でパニックになってしまって…。」
私の言動が恥ずかしいし、申し訳ないですと続けた。
聞いていた周りの人達はまだ私の言った事が上手く消化できていないのか、固まっている。
「ははは、君ってええ子なんやろね。」
一番に口を開いてくれたのは、関西弁の彼。
「そんなことはありません。」
「俺らにいい人だと思うんです何て言う子初めてやわ。」
「「僕らもそう思う。」」
「確かに、変わってるよなあ。」
他の人達も口を開く。
「見た目からして僕らって」
「明らかに『不良』だもんねえ。」
「だよな、不良に向かってあなたはいい人だとか言わねえよ。」
私の言動の何が面白かったのか分からないが、分かって貰えた?ようだったのでホッとした。
「やっぱり皆さんはいい人です。」
私もそう言って笑った。
そんな私の笑顔を見てなのか、
「君、俺らの事怖かったんと違うの?今はもう怖くないの?」
関西弁の彼が言った。
「驚いてパニックになって、誤解してただけなので。誤解も解けましたし、こうして話せている時点で怖がる理由もありません。」
「何で俺らの事怖いと思ってたのは誤解やと思うん?最初の見た目通り、本当に怖い奴かもしれへんやろ?」
「怖くないですよ?」
彼が一体何の意図があって、私にこの質問をするのかは分かりかねたが、素直に答えた。
彼の表情を伺ったが、何も分からなかったので、そのまま続けることにする。
「だって、本当に怖い人なら、今の質問もしないでしょう?それに、私は身の危険を感じるなら、こうやって話したりしませんよ。」
正直いって、完全に警戒心が無くなったとは言えないが、少なくとも彼らはいい人だと私の中の本能のようなものが告げていた。
まあ、何を持って"いい人"というのかははっきり言えないのだが…。
「やっぱり、君は変わってるなあ。」
関西弁の彼はやれやれといった表情で笑った。
「「でも本当に珍しいよね?」」
再び聞こえた綺麗なハモリ。
漸く意識してそちらを向くと、そこにはよく似た二つの顔があった。
所謂双子というやつ見たいだ。
一卵性双生児なのだろう、鏡に写したように外見がそっくり。
二つの顔を交互に見た。
「「ああ、僕らの事にも漸く気付いてくれたみたいだ。」」
双子はおかしそうに笑った。
「僕らは見た通り、」
「「双子なんだよお。」」
何度聞いても本当に綺麗にハモる。
双子だからと言って、ここまで簡単に同じことを言えるものなのだろうかと多少疑問に思ってしまう。
「あいつらは、本当に仲がいい双子だからなあ。驚くのも無理ねえよ。」
私の心を理解したみたいな言葉が言われる。
そちらを見ると、固まっていた私に声をかけて覗き込んだ彼が笑っていた。
ニコニコと裏表のなさそうな笑顔だななんて思いながら彼を見た。
「そうみたいですね。双子とは言え、こんなに簡単に同じことが言えるなんて凄いですもんね。」
私の言葉に、だよなあと言う声。
「「僕らは特別なんだ。」」
双子はお互いに手を取り合って笑っている。
その笑顔に可愛いなあなんて思ってしまう私。
ここでそう言えばと、思い周りを見渡した。
私がパニックになっていた時に見えた人の数は、五人だった…。
まあ、あの時私が人数を数え間違えてしまう程にパニックになっていたのなら、話は別だが…。
ーーーーやはり、数え間違いではなかったようで、見渡した結果、私達から少し離れた、彼らがもといた場所にいた。
壁にもたれかかって、…寝ている?ように見えるが…。
あまり興味もないらしい。
「ああ、あいつのことはほっといてええよ。」
私の視線を追ったのか、関西弁の彼が言う。
「「ね〜ね〜、君の名前なんて言うのお?」」
双子に聞かれて、そう言えば名乗っていなかったなと思い名乗る。
「私は日角星です。ここ私立千里学園の高等部二年生です。ーーーあれ?」
「「どうしたのお?」」
「いえ、自己紹介も良いんですけど、皆さんはこの学園で一体何してるんですか?というより、この学園に何か御用でも?」
「はっ!?」
「「えっ!?」」
何故かまた、いい感じのリアクションで返されてしまう。
私は先程からそんなにおかしな発言をしているのだろうか?
心当たりはないのだが…。
「お前ってさ、今日づけ、もしくは最近この学園に来たの?」
「何故ですか?」
「「だって、おかしいよお。僕らがここに、どうしているのかが分からないなんて。」」
「知ってるはずやけどなあ。」
あれ?私が質問をしたのに、何故か私に質問が返ってきているのは…何故??
「あの、意味が分からないんですが…。」
「「「はあ…。」」」
みんなが一斉に肩を落とす。
「あっ!もしかして!他校からの交換留学生的な!?」
もう一度発言して見て後悔した。
目の前の彼らがどこか遠いところを見つめている。
慌てて、じゃあ…と言おうとして遮られる。
「おい!星、もういい、分かったから。」
「分かったって…何が?ーーあっ、じゃあやっぱり、留学ーー。」
「ちげえ。」
「ーーーあれ?」
何だろう、また頭がおかしくなったんだろうか…。
「「ね〜ね〜、星、本当にわかんないの?」」
「…分からないです。」
今度は私が肩を落とす。
「俺ら私立桜里高校の生徒なんやけど?」
「…だから?」
「はあ、駄目やな…。」
また大きくため息をつかれてしまう。
「あの、そろそろ教えてもらえませんか?」
仕方なく聞いてみる。
「はあ、わかった、わかった。簡単な話だよ。俺らのいた私立桜里高校と、お前のいる私立千里学園は本日付で"合併"されたんだ。」
「「そういうことお。」」
「そういうわけや。」
「……………がっ、合併??ーーーーー合併!!」
また声が裏返りそうになる。
合併ですって!?
何がどうしてそんなことになった??
「…意味が分かりません。」
率直な感想だ。
「意味が分からんて言われてもなあ、俺らかて賛同したわけやないし、寧ろ不本意やったから、初日やけどすっぽかしとったんよ。」
君の隠れ家やなんて知らんかったしなあ、と言うので、
「ああ、成る程。」と頷いた。
「そんで、俺らの自己紹介まだやったな。俺は桜里高校二年、茅尊って言うんよ。よろしゅう。」
あっ、今はもう元やなあ、と続けた彼の方を見て、もう一度眺める。
関西弁を話す彼は、もしかしなくても関西の出身なのだろう。
そして、改めて見て思った。
茅尊と言った彼は、世間一般にいうイケメンだなと。
第一印象で不良だと思わせるだけあって、髪色は赤茶色(#662300をイメージ)をしており、軽いパーマがかかっている。
同じ高校生と言われるとかなり目だつ。
顔のパーツは綺麗に整い、肌は色が白くきめ細かい。
黒のフレームの眼鏡をかけているのだが、それがまた顔や髪にあっていて何とも言えない大人な色気を感じる。
…とても同い年です、とは言いたくない。
それくらい綺麗な容姿をしている。
いろいろな意味でため息が出そうだった。
「俺の顔に何か付いてる?」
尊に声をかけられハッとなる。
「いえ、茅さんの顔があまりに綺麗だったので…。」
少し見とれていました、と正直にいうと皆に吹かれてしまった。
「なんか、そないにはっきり言われたら照れるわ。まあ、嬉しいけどな。星ちゃん、やったよね?」
「はい。」
「俺のことは、尊って呼んでな。」
そう言ってニコリと微笑まれた。
「「じゃあ、次は僕らが自己紹介するね。」」
次は双子が話し出す。
「僕の名前は三河内透。」
「僕は三河内馨。」
「「よろしくねえ。」」
また綺麗には重なる二つの声。
容姿も本当によく似ている。
髪は焦げ茶色を少し落ち着けた感じ。(#6f5436、バーントアンバーをイメージ)
さらさらとしたストレートだ。
彼らも尊同様綺麗な顔立ちをしているが、尊とはまた違っている。
目は黒く大きく二重で、可愛げのある印象を持ってしまう。
無邪気そうに笑う笑顔が良くにあっていた。
「僕達は桜里高校一年生だったから、」
「星とは一つ年下だね。」
二人に言われて、少々驚くものの、年上だと言われなくて良かったと思う。
年上なんて言われたら、もはやそれは詐欺だ。
神様の悪意を感じる。
「そうなんだ、透、馨よろしくね。」
双子の笑顔に私も自然と笑顔になる。
「じゃあ、次は俺か。」
次に自己紹介するのは、私を覗き込んできた?きてくれた?…どちらでもいいが、彼らしい。
「俺は遠山盾。尊と同じく桜里高校二年生だ。」
盾は一言でいうに、見た目は五人の中で一番目立つ。
目立つのが好きなのだろうか?
まあ、そういう人でもおかしくはないが。
髪はあれこれ説明せずとも伝わりそうだ。
所謂金髪。
尊や双子に比べ短く、ツンツンと立たせている。
そしてもう一つ他と違い、目立つのは目の色だ。
流石に自発、自然的にそのようになったのではないと思うから、カラコン、つまりカラーコンタクトだと思う。
彼の目は不自然に赤いから。
何となく察してはいたが、やはり彼も顔立ちが整っている。
不良様と言うのは、こうもかっこいいものではないと思う。
少なくとも、そうでないと私は思っていた。
でもこの人のかっこいいも他の人とは違う。
かなり着崩した制服等を見ても、彼のかっこいいは綺麗とか、ましてや可愛いの類ではなく、野生的で荒々しい感じのワイルド系統といえば伝わるのだろうか。
かっこいいにも色々あるんだなあ、なんて今更気付かされる。
だって普通どこぞの漫画の世界じゃあるまし、百人が百人とも"かっこいい"といいそうな人に会う。
しかも複数人なんて経験しないだろうから。
それを経験している真っ最中の私は、何だか恵まれてるなあなんて思う。
「よろしくお願いします。」
「おう。あっ、俺達タメだろ?敬語とか堅苦しいから要らねえよ。呼び方も盾でいいから。」
そう言って笑ってくれる。
「あっ、それで…あの人は?」
私が、離れたところで未だに寝ている彼に視線をやりながら問うと、盾がああ、と言って答えてくれた。
「あいつは、境健次郎ってんだ。俺たちと同じく高校二年だよ。」
「はあ、そうなんですか。」
「まあ、見てわかる通り何とも不良感が滲んでるだろ?なんて言うかあいつのオーラ的なものから伝わってくるよなあ。」
盾が言うように、彼からは凄みのあるオーラを感じる。
髪はこの中だと唯一の黒髪で、短髪。
それをこれまたツンツンと立たせている。
眠っているため目は瞑っているが、眉間には離れていても見える、くっきりとした皺。
眠っているのにどこか近づき難い雰囲気なのは、こういうところからも感じられる。
でもそれでいて、やはり顔立ちが整っているのがここまでくると何とも滑稽だとさえ思えてきてしまう。
彼は盾のタイプに近いが、それよりも更に絞って、"不良イケメン"という感じだ。
「何だかなあ…。」
流石に落胆したくもなる。
天は人に二物を与えず、とは言いながら既に自分が可哀想になってきた。
「口数は多くないんやけど、いい奴なんよ。」
「そうなんですか。」
先程から驚くことが多くて情報処理が追いついていないのか、周りへの相槌が似たり寄ったりなのは、目を瞑ってもらいたいものだ。
決して興味がないのだとか、退屈なのだとか思われたくない…。
顔には出ていないかもしれないが、星の中ではなかなかに関心を持って聞いている。
伝わっているかは別問題として…。
「そういやあ、星は何でサボってるんだ?見た目は俺らみたいなタイプじゃねえよなあ?」
そういえばそうだね、と双子も言う。
「ああ、特に理由はないですよ?私が元々授業に出ないっていうだけなので。」
「真面目そうに見えるのに、実は悪い子なんか?」
「うーん、確かに悪い子だと言われればその部類かもしれませんけど…。成績に関しては一応今まで学年一位キープしてるので、先生方も何も言いませんよ?」
私のさらりと言った一言に周りは一瞬固まる。
「「星って凄いんだねえ。」」
「凄えけど、言い方は天然なのかそれとも腹黒か…。」
双子は揃って私を褒めるが、盾は何だか苦い顔をしている。
「私何か変なこと言いました?」
ぽけーっとした顔でそう聞いてしまい、
「ただの天然やと思うわ。」
と尊に言われるが、ますますわからなくなる私。
まあ、それはもうおいておくとしよう。
「この学園は、私立だからか分かりませんが、他の学校とは多少違ったり、特別なルールがあるんです。皆さんもすでに知っているかもしれませんが、ここ私立千里学園は元々全寮制をとる勉学の活発な学園でした。現在は全寮制を廃止してはいますが、その名残からか今現在も、学問を追求する真面目な生徒が多いです。また、昔から会社社長の御曹司や御令嬢が多く通う事でも知られているらしいです。特殊制度は主にこの手の人のためのものだと思います。」
「そんな説明受けたっけか?」
「「知らなーい。」」
「記憶にないなあ。」
それぞれの相槌に、知らないのだということに断定し、話を続けた。
「まず大きな特徴としては、さっき私も言いましたが、『授業に出なくても、試験の結果さえ良ければいい』と言うことでしょうか。何分お金持ちの方は、随分とご多忙らしいので、授業に出なくても単位が取れるようにという考えなのだと思います。」
そういうと、成る程という声が返ってくる。
私の場合は多忙でもありませんが、単純に面倒臭いので、と続けると笑われた。
「成る程な。せやから星はここにおるんやね。」
「そう言うことです。でも…。」
「何だよ?」
「何故いきなり合併なんてことに?私はクラスにも行かないので全く分からないのですが…?そもそも合併したって事も知りませんでしたし。」
「「僕らも知らないよお。」」
「かなり急だったもんな。おかげで色々問題が起こりそうで…面倒臭え。」
「盾、あんま突っ込んだことはなしやで…。」
「…分かってるよ。」
盾の言葉に何故か尊が釘を刺した。
まあ、出会ったばかりの私に言うべきでないことがあったところで、当たり前だといえば当たり前だ。
自分としても、悪いことに巻き込まれるのは避けたい。
詮索は勿論しないでおく。
「そう言えば、星ちゃんは何で屋上に?」
授業に出らんなら、わざわざ来んでもんやん?と尊が上手く話題を変える。
「…何故でしょうね。何だかこれが私の中の『当たり前』になっているので…。特にここに来たからといって何かするわけでもありませんし、ここに来ないからしたいことがあるわけでもないです。」
「そうなんや…。」
尊は私の話を聞きながら、ずっと私の事を見ているのが分かった。
私も自然とやってしまうからか、すぐに気がついたが…。
きっと彼は私のことを"監察"しているのだろう。
言葉だけでは読み取れない"私"を見ようとしている。
「ここに来ていつも私は、空を見ているんです。」
「空…??」
「空って広くて大きいですよね?そんな空を見てると、自分って小さいなあって思わされるんです。何か悩みを抱えていたりしても、それさえ他愛もないことだと思えます。」
「へえー、お前ってやっぱ変わってるな。」
盾がふーんと唸っている。
「「じゃあ僕らはお邪魔だったねえ。」」
双子がシュンとした表情で私を見る。
「いえ、どうせたいしたことしてないですし。…あっ、それじゃあ私はそろそろ行きますね。皆さんの邪魔してしまってすいませんでした。」
「だから、俺らは別にーーー」
「怒ってないんですよね?聞きました。皆さんがいい人達で良かったです。」
そう言って屋上の入り口の方へと歩く。
ドアに手を伸ばそうとして、もう一度彼らに向き合った。
「あっ、この学園は広いですし、慣れない事も多いと思いますけど…いいところです…よ?多分…。私が言うのもあれですけど、皆さんこの学園へようこそ。」
そう言うと、彼らの目が一瞬見開かれたが、私がニコリと微笑むと笑顔を返し、手を降ってくれた。
ドアが閉まる音と共に、なんやほんまに面白い子やったなあ、と言う尊の声が聞こえた気がした。
やれやれ。やっと第二話?書き上がりました。
自分のモチベーションが上がらないので、かなり細かく切りながら投稿していきます(^ー^)ノ
キリのいいところで切るにも、最初の説明ってなかなか長くかかります…(⌒-⌒; )
まあ、書き慣れていないので長々と書きすぎると、くどいんじゃないかと不安になったりします。
…逆に説明不足になってしまったりもしますが( ;´Д`)
何はともあれ、目標は完結させることですから!?
まだまだ先は長いです…が根気強く頑張りたいと思います!!
ここまで読んでいただきありがとうございましたo(^▽^)o