私の恋の終わり
素人小説の第3弾…読みにくいかもしれませんが、よかったらよんでくだいませ。
「私、女性が好きなの・・・・」
さくらはこういって泣いた。そして、続けた。
「あなたとは、これ以上恋人関係ではいられない」。
こうして、さくらとの恋愛は、七ヶ月で終わった。
月の宮高校で尊敬していた黒岩先生の影響で、私もボランティア活動に参加していた。彼女も、先生の五年前の教え子である。
三年前の夏休み、私はさくらと出合った。彼女は、一六七センチの長身。細い体型で、黒髪は肩ぐらいの長さだ。目も少し大きめで、私の目には、美しく写った。
黒岩先生の話では、私が参加する以前まで彼女は、このボランティア活動に来ていた。
彼女は、中学校の国語の教師をしていたが、職場での人間関係をめぐって精神的においつめられ「鬱」になった。それ以降、このボランティア活動にも参加できなくなっていた。
このところ体調もよく、さくらはリハビリがてら黒岩先生と一緒にボランティアのイベントに参加していた。
一目惚れとでもいうのだろうか。さくらと会ったとき、私は心を奪われた。話をしているうちに、彼女と私が同じ年だと知った。
当時、自分に近い年齢の女性は、苦手意識が強く話しかけることができなかった。しかし、先生の知り合いという安心感もあって彼女には、普通の調子で話しかけていた。
この日のイベントでは、アクセサリー作りだった。私は講師の補助役として参加者に対応していた。
「私もいろいろなタイプのブレスレットやストラップを作っている」
とイベント終了後、彼女に携帯の画像を見せた。
「いいなぁ~」。
作品の画面を見ながら彼女は、つぶやいた。
「今見せた、ブレスレットとネックレスを先生に渡しとくので、黒岩先生に次会ったら受け取って」
言葉は弾んでいる。が、少し早口になっている私。
「雪月君の都合に合わせるので、今度会いましょう~」
さくらはうれしそうだった。
常日頃、黒岩先生が私の話題をしていたため、家が近いことをさくらは知っていたのだ。この日の帰り、彼女のEメールのアドレスを教えてもらった。そして次の日曜日、私の家の近くのファミレスで会う約束をした。
私は次会ったら何を話そうか考えたり、新しいブレスレットを作っていると、一週間があっという間に過ぎて行った。
約束の日曜日。私は早めに出かけた。が、先にファミレスに到着してたのは彼女だった。さくらも私と同じく人を待たすのが嫌いなのか、それとも私と会うのを楽しみにしていたのか分からない。が、彼女はたえず笑顔で会話も弾んだ。会話の中で彼女は、物を作ったり自分で創作するのが好きだという。
「今、マンションに引っ越す準備をしているのだけれど、その部屋があまりにも汚いから、自分で直せるとこは、手を加えているの~」
さくらは語った。
「私が休みの日なら、手伝うので言ってくださいね」
「実は、風呂とトイレのペンキを塗ろうかと思っているの…」。
私は、その話に飛びついた。
「じゃあ、塗りにいこうか?」。
冗談交じりにさくらに言った。
「いいの?お願いして??」。
彼女は、あっさり応じた。
次の日曜日、お手伝いに行くことになった。女性の家に行くのは初めてだ。うれしい半面すごく緊張していた。
引っ越し先の部屋は、想像した以上にきれいだった。私が来る二週間ほど前から母親と一緒に修復作業をしていたらしい。部屋の壁など、難しい箇所は業者に頼んで仕上がっていた。簡単に修理できる部分は、自分の手で仕上げたかったらしい。作業が残っていたのは、トイレやお風呂場の鉄部。それにパイプや木の枠の表面が、はげている箇所だった。
これくらいの量なら、一日あれば塗りかえることが出来る。彼女の車でホームセンターへ材料の買いだしに行った。そして彼女の部屋に午後一時に戻った。すぐ作業にとりかかり夜九ごろに作業は終わった。
一ヶ月の間、メール交換やファミレスなどで話した。さくらは、しっかりした考えの持ち主である。男っぽいさばさばした感じにも、心をひかれていった。
引っ越しをきっかけに、家具や電化製品を買い換えることをメールで知った。部屋に合いそうな家具を見つけに行った。
彼女の部屋におおかたの荷物を運び終わり、私たちはイスに座りくつろいでいた。
「なんで、いろいろ手伝ってくれるの?」とさくらは、質問してきた。
「黒岩先生の知り合いで、話していて楽しいからだよ」
笑顔で答えた。
「好きです」と告白したい気持ちが、突然わき起こった。が、言葉にならない。
今まで友達関係から好きになった女性はいた。けれど、告白の機会をのがして、ただの友達で終わることばかりだった。
今回は、今までのような失敗を繰り返したくない。他愛もない話から自分の気持ちを上げていった。
そして告白した・・・。
「付き合っている人はいません。けど、まだ鬱がしっかり完治していなくて、答えは少しまって・・・」
さくらは目を伏せた。
「分かった。ありがとう」
今すぐ答えがほしいわけではなかった。が、私の心に一筋の光がともっていた。
一週間返事はなかった。時間がたつにつれ、「断られるにしても、OKにしても早く答えがほしい」と想うようになる。
告白から二週間後、彼女からメールが来た。次の日曜日、近くの公園で、さくらと会うことになった。
日曜日。昼から彼女と会う予定だった。が、二時間前には公園に到着していた。
待っている間、心の中では「振られるのだろうな~」と「彼女は受け入れてくれる」。二つの気持ちが互いに交差して、胸がしめつけられるようだった。
さくらの答えは、「OK」だった。声には、ださなかった。が、「飛び跳ねながら、つきあえるぞー」と叫びたい気分だった。顔も満面の笑顔だったに違いない。
しかし・・・続きがあった。
「私は、まだ病気が治ってないことは分かっていてね。それと、私は、男女に関係なく、一度お付き合いしてみないとわからないの・・・」。
うれしい半面、「この男女に関係なく一度付き合ってみないとわからない」という言葉に少し違和感が残った。
生まれて初めての女性との親密な付き合いだった。メールを毎日送り、暇さえあれば彼女に会いにいった。また、病気のことを自分なりに調べた。私にできることがないかを必死に考えた。彼女の家に行くと肌でさくらを感じたくて、キスを求め、ひたすら抱くことがあった。
付き合い始めて三ヶ月。その日も彼女の家に向かった。いつものように触れようとすると、嫌そうなそぶりを見せる。少し落ち込んでいるようにも見える。気にはなったが、さくらの言葉を私は待った。
「また、病気が悪くなってきているかも・・・」。
さくらは小さくささやいた。
毎日のように会いに来ていたので、さくらに辛い思いをさせているのではないかと感じた。この日以降、会っても話を聞くことが多くなった。話の内容には、過去付き合った彼氏のことも出てくる。
彼女の話では元彼達は、私のようにひんぱんに会いたがることもなかった。また、いろんなことを、深く聞いてくれることもなかった。そして、現在も、その男性たちと、連絡も取り合っていて、友達として会っていると・・・。
私が不安に感じ始めたのは、さくらの次の言葉だった。
「次に付き合う人には、このことは知ってもらいたかったの。雪月君には話すね。私は、性の対象として女性も男性も愛せるの。でも、今までこのことは、家族にも話していない。一部の仲のいい女性にしか話したことがなかったの」
小さな声でつぶやいた。
驚いた私は、何の言葉も出なかった。誰かに彼女のことを聞いてもらいたかった。家族には話せない。こんなことを話せるほど、信頼できる友達もいない。黒岩先生なら信用できたが、「この内容を話していない」とさくらから聞いていたので相談できない。
月の宮高校で、黒岩先生の次に頼れる女性教員がいた。生徒会で出会った真木先生だ。この教師は、なんでも話してくれた。現在、女性と同棲中と自分を隠さない、男っぽい、さばさばした人であった。真木先生になら彼女のことも話しやすいと考えた。
「今、付き合っている人がいるんだけど、その女性は真木先生と同じみたいな性の感覚をもっているようなんだ。最近になってわかったんだよ・・・」私は、これまでのいきさつを伝えた。
「現在好きになったのは、女性だ。たまたま同姓を愛しているだけで、みさかいなく男も女も好きになるわけではない。本当に彼女は、雪月が好きなのか?女性が好きだとか、過去の恋人の話など、鬱のことも、こじつけたいだけのように聞こえる」
真木先生の意見を聞けた。先生のことは知っていたが、「レズ、ホモ、バイセクシャル」などに私は、偏見を持っていたのだろう。この日以降、時間を見つけては、先生に彼女のことを話しにいった。
さくらとの関係は、どんどん悪くなる。会いにいっても笑顔はない。いつも考えているように見え、会話も続かない。彼女と出会って七ヶ月目たった翌年の三月、一通のメールが来た。
「会って話したいことがある・・・」と。
午後六時、彼女の家に着いた。部屋の中は真っ暗だった。月明かりで見るさくらの顔は、泣いたように見える。椅子に座り、向かい合っていた。長い沈黙が続く中、さくらが話し出すのを待っていた。
数十分経ったころだろうか。
「雪月君のことは、今でも好き。でも体の関係をもつと違和感を持ってしまう。男性とは付き合えないことが分かったの。やっぱり女性が好きだと・・・・」。
うつむき加減で話し続けた。
「でも雪月君には、何でも話せるの。これからも友達として付き合っていきたい」
訴えかけるような目を向けた。この日は言葉を発することも出来ず、さくらの家を去った。
何日もの間、一人で考えた。いくら考えをめぐらしても答えがまとまらない。以前から相談していた真木先生に今の気持ちを話した。
何かアドバイスが欲しいわけではない。誰かに喋って、自分の考えをまとめたかったのだ。
「この前話した彼女に、振られました。しかし、友達でいたいといわれている。俺は、まだ気持ちが残っているから友達として、さくらを見ることができない」
「やっぱりね」
真木先生は、少し微笑みながら、話を続けた。
「雪月はどうしたいんだい?」
私の表情をみながらささやいた。
この後、私は何を言ったか覚えていない。ただ、さくらを責める内容や、八つ当たりのような言葉を先生に投げかけていた。途中、涙が出たり体が熱くなったことは覚えている。心にたまっていたモノを、すべてぶちまけることで頭の中が整理された感覚になった。
自分を納得させるはっきりした答えは見つかっていない。いくら答えを引き伸ばしても、さくらは戻ってこない。彼女の中で男として見られない以上、友達として付き合っていくことはできない。私自身が辛くなるだけだ。
数日後、自分の気持ちを伝えに行った。決心したにもかかわらず、彼女と向き合うと言葉が出ない。数分後、覚悟を決めた。
「私は、今でもあなたと恋人でいたい。けれど、あなたの中では、僕の存在は友達になっているんだよね。私は先のことまで考えてしまう。もし、友達として付き合ったとしても、あなたにはいずれ恋人ができるだろう。そのとき、私はつらい。だから、今からあなたのことは忘れます」
さくらは泣いていた。けれど私は後ろを振り返ることもなく、彼女の家を去った。