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常闇の森に行く途中 後編

作者: 涼雅

危険生物(仮)と出会ったラル。


さて、彼はどうするのでしょうか?

 僕は、目の前にいる危険生物(仮)と目が合った。さっきまで、あの怪しいバスケットの中にいたはずで、何で?!というか、ドラゴン?!しかも、色が…白っぽい?


「ふぅ…(ようや)く出られたぜ。ホント、窮屈だった」


 危険生物(仮)(おそらくドラゴン)が、ブツブツ呟きながらストレッチ運動をし始めた。ちっちゃいのが、ちまちま動いていてなんだか可愛らしかった。驚きつつも、微笑ましい思いの方が強くなり、思わず笑みを浮かべた。


「やっぱり、ドラゴンだったのね」


 レティーシアがポツリと呟き、腕の中でもぞもぞと動き出した。


「何です、レティ?下りたいんですか?」


 目の前のドラゴンに釘付けなレティーシアに苦笑しながら、そっと地面に下ろす。すると、待ってましたとばかりに、ぽてぽてと小走りでドラゴンに近づいた。

 僕はドラゴンとレティーシアを交互に見つめ、目測でサイズを比べた。やはり、小さい。レティーシアとほぼ同じサイズか、ちょっと大きいくらいか。一般的なドラゴンの幼体と比べても3分の1もない。明らかにおかしい。しかも、人間の言葉を話してる。念話ではない。もの凄くおかしい。


「……やっぱり、変だ」


 ボソッと呟くと、ドラゴンとレティーシアは勢いよく同時に振り向いた。本当にぴったり合った動きだった。


「「変って何が?」」


 ちょこんと首を傾げて、ドラゴンとレティーシアが僕を見上げて答えを促す。君たちは、何故そんなに動きがシンクロするんでしょう?小さいものが大好きな僕にはたまりませんね!!…おっと、話が逸れてしまいましたね。

 そんな事を思いつつ、見つめ返した。


「サイズと色!それに喋ってる!」


 おかしな点を言葉にし、じっくりとドラゴンを見つめる。僕の言葉に反応したレティーシアも、勢いよく振り返って、隣にいるドラゴンを見つめた。


「……確かに。ちょっと興奮しすぎて、疑問に思ってたこと自体頭から抜け落ちてたわ」


 ぽふっと自分の両手を合わせてから、レティーシアは呟くと小さく唸りながら頭を抱え込んでその場に座り込んでしまった。どうやら、本人的にショックだったらしい。かなり珍しい光景だ。


「喧しい!サイズって言うな!俺様だって好き好んでこんな大きさでいるわけじゃない!」


 グルルゥ…と唸ると、ドラゴンは吠えるように一息で喋った。機嫌が悪いのか、胴体と同じ位の長さの尾をベシベシと地面に叩きつけている。それにやっぱり、喋った!しかも、ちっちゃいくせに俺様!というか、ちっちゃいから俺様なのか…


「えっと、好き好んでこの大きさでいるわけじゃないって事は、もとはその大きさではなかったという事?」


 はたと気づいたレティーシアが、勢いよく顔を上げて隣にいるドラゴンを見つめて問いかけた。

 僕もレティーシアの言葉に反応し、じいっとドラゴンを見つめながら、レティーシアを抱き上げてそっと肩に座らせた。


「当たり前だ!俺様はドラゴンだぞ?」


 ドラゴンは、小さな身体でふんっ!と胸を張り、偉そうに両手を腰に当てて僕とレティーシアを見上げた。


「でも、何で今はそんなサイズなんです?」


 しゃがみこんで、なるべくドラゴンの目線に近づき、もう一度問いかけた。何となく、これからの僕とレティーシアのなすべき事に深く関わっている気がしたからだ。


「俺様だって良く解らないが、いきなり小さくなったんだよ。俺様を育ててくれた長老達(ジイサマ方)が言うには、時が来たと。んで、何かいきなり拘束されてポイって感じに放置された!最後の一言が、『この封印を解いた者が御主の(あるじ)じゃ!』って言ってったな。そうなると、お前が(あるじ)ってことになるのか!」


 黄金色の瞳に、じいっと見つめられ何故か嫌そうに鼻筋にシワを寄せ、グルルッと唸られた。


「何か問題でも?何で僕はそんな表情をされなければならないんです?」


 納得のいかない僕は、思わずドラゴンを睨み両脇の下に手を入れて抱き上げた。


「コラッ、何しやがる!お前、そんな顔してるが(オス)だろう?俺様の(あるじ)が同性なんて最悪だ!」


 ドラゴンは腕をばたつかせて抵抗するが、サイズの違いで大した抵抗にはならない。それに聞き捨てならない事を言われ、僕の手に更に力が入った。

 すると、耳元でレティーシアがクスクスと笑い出した。


「貴方、面白いドラゴンね。色も今まで見たことのない色だし、お話が出来るのはもっと面白いわ」


 レティーシアの言葉と笑い声に怒りが削がれてしまい、ドラゴンに込めていた力が少し弱まる。するとドラゴンは、するりと手から離れて地面に降り立った。


「俺様のこの体色は生まれつきだ。他にこの色を持ったドラゴンは今のところいない。昔はいたようだがな。そして、この色を持ったドラゴンだけ、念話以外に話せるらしいぞ?」


 レティーシアに誉められて満更でもないのか、ドラゴンは嬉しそうに尾を揺らめかせて得意気に話した。


「白…ですか?」


 じいっとドラゴンの鱗を見つめながら、ぽつりと呟くと一気にドラゴンの表情が険しくなり、僕の脛を尾でバシッと攻撃した。


「白じゃない!俺様は白金(プラチナ)だ!全然違うんだからな!」


 鼻息も荒く言い放ち、腹立たしいと言わんばかりに尾を地面に叩きつけて睨みつけてきた。そんな姿に申し訳なくなり、素直に謝るとドラゴンは尾を叩きつけるのをやめて、仕方ないと言わんばかりの視線を向けてきた。


「本当にすみません…。もう白って言いません。それに白金(プラチナ)なら、私の髪と同じ色ですし。ある意味仲間ですね」


 僕は、かぶっていたフードを下ろし、みつあみに纏めていた髪をマントの中から引っ張り出し、ゆっくりと髪を解いた。すると、あんぐりと口を開けたままドラゴンはピシリと固まってしまった。

 肩に座っていたレティーシアの視線は、心配そうに僕とドラゴンの間を行ったり来たりしていた。


「……深蒼色(しんせいしょく)の瞳…そういう事かよ。あんのクサレ長老(ジジイ)共!仕方ない!お前、本当に俺様の(あるじ)って事だ」


 ドラゴンは、ダンッ!と右足で地面を踏み付けると、ギャンギャン文句を言うと肩を竦めながら僕を見上げた。なんというか、本当に人間くさいドラゴンの仕草と表情に思わず笑みを浮かべた。


「そうですか…すると、ドラゴンの間でも僕たちの住んでいた地域にあった伝承というかおとぎ話みたいなものがあるという事ですね。そういう事でしたら、あなたは僕達の仲間と言う事ですね!僕はラルファードです。どうぞラルと呼んで下さい!肩に座っているのがレティーシアです」


 同じ色を(まと)う仲間が出来た事が純粋に嬉しくて、思わずドラゴンを抱き上げて、ギュウッと抱きしめながら、自己紹介をした。すると、肩にいるレティーシアがツンツンと髪を引っ張ってきた。


「ラル!ドラゴンさん苦しそうだから、早く放してあげて!」


 僕はぐったりしているドラゴンを見て、慌てて抱きしめるのをやめた。やめるのと同時に、強烈な尾の一撃が胸に決まった。


「し、死ぬかと思ったぞっ!本当に!」


 ゼーゼーと肩で息をしながら、キッと睨みつけられた。嬉しすぎて、どうやら力加減を誤ってしまったようだ。……若干、涙目の様な気もする。罪悪感が一気に襲いかかってきた。


「本当にすみません!嬉しすぎて、理性が飛んでしまいました。同じ色って、見た事無くて…」


 更に睨まれて、言い訳の言葉すらだんだん小さくなり、黄金色の瞳に宿る怒りを目の当たりにして、最後は何も言えなくなって俯いた。何だか、地面が歪んで見えてきた気がする。


 地面にぽたりと雫が落ち、地面の色が変わった。それを見て、僕は自分が泣いている事に気が付いた。肩に座っていたレティーシアは、僕が泣いている事に気付いたのか、慰めるようにポンポンと頭を撫でてくれた。


「なっ、なんで泣く?!もしかして、さっきの一撃で肋骨でも折れたのか?」


 足もとでドラゴンがオロオロと右往左往し、先程まで怒りを宿していた黄金色の瞳は様子を変え、不安そうな色を宿して僕を見上げてきた。そんな姿を見て、僕の涙は更に溢れ、地面の色を変えた。


「ぎゃぁー!何で更に泣く!痛いのか?やっぱり、人間って脆いのか?」


 ドラゴンは頭を抱え更にオロオロし、不安そうに尾を揺らめかせる。僕は、痛みで泣いているわけじゃないと言いたいが、泣くのがあまりにも久しぶりすぎて、涙の止め方が分からずに声すら出ない。

 オロオロするドラゴンを見つめ、慌てて首を横に振って否定する。


「ラル、ほら泣かないの!早く涙を拭いて?ラルは大丈夫だから、ドラゴンさんも落ち着いて?」


 レティーシアは僕のマントの中に潜り込み、胸ポケットからハンカチを取り出すと、優しく目元を拭ってくれる。ゆっくりと震える手でハンカチを握ると、ホント仕方ないわね…と呟いて、苦笑しながら震えている僕の手をギュッと握り締めた。


「ほ、本当に大丈夫なのか?折れたりしてないのか?」


 ウルウルとした黄金色の瞳で見つめられ、僕は慌てて頷いた。その様子を見てドラゴンはホッとしたのか、ぺたりとその場に座り込み、はぁーっと、大きなため息をついた。


「だっ、大丈夫…だから!心配、かけて…ごめん、なさい」


 僕は必死に言葉を紡ぎ、何とか謝るとレティーシアの握らせてくれたハンカチで、ごしごしと涙を拭うと、なんとか笑みを浮かべてドラゴンに微笑んだ。


「大丈夫なら、いいや。ホント、あんな力では抱きしめるんじゃねぇぞ?今の大きさだと、死んじまうからな」


 下から覗き込むように睨まれ、念を押された。触ることを拒否されなかった上に、抱きしめる事も拒否されなかった事が嬉しくて、コクコクと必死に頷いた。

 そんな僕の姿を見て、レティーシアはクスッと笑うと、宥める様にポンポンと頭を撫でてくれた。


「さっきの話なんだが、俺様の主って言っても、この状態だと仮契約みたいなものらしい。本体に戻ったら本契約って感じだな。色んな意味で力の大きさが違うからな」


 ドラゴンは、ゆっくり立ち上がるとキリッとした表情で僕とレティーシアを見つめると、真面目に話しだした。

 僕も思考回路を慌てて切り替え、ドラゴンの話を真面目に聞く。『契約』というフレーズに、僕の住んでいた地域に伝わる、おとぎ話を思い出した。


「…もしかして、名付け…ですか?」


 僕の言葉を聞くと、キリッとした表情のドラゴンがニヤリと笑った。獰猛な牙と、鋭利な歯のせいで迫力満点だが、ニヤリで間違いないと思う。


「…正解!その通りだ」


 良くできましたと言わんばかりに、レティーシアに頭を撫でられ、ドラゴンはご機嫌な感じで尾を振った。


「そうね、そんな話の絵本があったわね。まぁ、名付ける相手は精霊さんだったけど」


 レティーシアは、昔読んだ絵本を思い出したのか、確かに状況が似てるわねと呟きながら、ドラゴンを見つめた。


「そういえば、そんな話もありましたね。昔、読み聞かせされましたね。その話だと、精霊に確か…『プチ』と名付けましたよねぇ」


 記憶の糸を手繰り寄せ、その絵本を思い出すと、するりと名前が出てきた。すると、再び眩い光に辺りが包まれ、ドラゴンが一瞬見えなくなった。

 あれ?っと思い、目を擦りながら足元を見回すと、脛に強烈な一撃が入り、痛みのあまり両手を地面についてしまった。


「バッカ野郎!今ので仮契約されちまったじゃねぇか!俺様の名前がプチだなんて、信じられねぇ…。ラルの馬鹿!」


 脛への強烈な一撃は、どうやらドラゴンの尻尾アタックだったようだ。しかし、何故こんなにも怒られるのだろう?キョトンとしたまま、ドラゴンを見つめ、怒られる意味が分からず、更に首を傾げた。


「ラル、お前がたった今、俺様に『プチ』って名付けちまったんだよ!」


 怒り心頭なドラゴンにギャンギャン吠えられながら、怒っている理由を聞き、更にキョトンとなった。ぴったりだと思うんだけど、ダメだった様だ。


「何か拙かったですか?ぴったりだと思うんですけど?」


 その一言を聞くと、ドラゴン…いやプチは、更に怒ってしまった。凄まじい形相で睨まれ、信じられないくらい強い力で、尾を地面に叩きつけていた。


「プチ、貴方ラルにネーミングセンスは殆どないわよ?恐らく、絵本の精霊の名前っていうのもあるけど、白金(プラチナ)色の小さなドラゴンって意味が込められてると思うのだけれど…」


 レティーシアは、気の毒そうにプチを見つめつつも、僕の思考回路を良く理解してくれているようで、思っていた通りのことを言ってくれた。


「レティ、正解!良くわかったね」


 その一言は、プチの怒りを更に大きくしてしまったらしい。プチは、凄まじい咆哮をあげたかと思うと、プチの目の前にあった一本の大木が、一瞬のうちに燃え尽きた。灰すら残っていなかった。まるで蒸発してしまったようだ。

 僕とレティーシアは、その凄まじい威力を目の当たりして、ただただ呆然とその場に座り込んでいた。というより、動けなくなっていた。


「……プチ、物凄く怒ってるわね」


 レティーシアがボソッと呟いた。僕は未だに声すら出なくて、コクコクと頷いてその言葉に同意を示した。ゆっくりと立ち上がり、その場から後退しようとすると、プチが獰猛な笑みを浮かべながら、勢いよく振り返った。


「ラル、逃げるなよ?本契約を果たすまで、絶対(・・)に逃がさねぇぞ?」


 僕は獰猛な笑みを浮かべるプチと視線が合うと、その場に凍り付いてしまったかのように動けなくなってしまった。しかし、プチの言葉に同意を示さないと、更に怒り狂うであろうドラゴンを目の前に、必死に頷いてみせた。


「よし、そうと決まればさっさと先に進もうぜ!」


 必死に頷く僕をしばらく見つめると、プチは先程までの怒りをするりと納め、ご機嫌な様子で尾を横に揺らしながら、くるりと向きを変え羽ばたいた。


「……ラル、よかったわね。もう、怒ってないみたいで」


 レティーシアは、ホッとしたように息をひとつ吐くと、慰めるようにポフポフと肩を叩いてくれた。僕は、へたりとその場に座り込み、大きなため息をついた。


「今のところ怒りは収まったみたいだけど、これから先が思いやられるんだけど…」


 僕は小さな声でボソッと呟き、頭を抱えて更に大きなため息をついた。


「そんなに考え込んだって、起こってしまった事は無かった事に出来ないんですからね!ほら、早くお立ちなさいな!」


 レティーシアは、僕の髪を一房掴むと、えいっと引っ張って、僕の思考を中断させた。地味な痛みに涙目になりながら、レティーシアをそっと撫でた。


「そうですね。起こってしまった事をいつまでもクヨクヨしていても、はじまりませんね。レティ、ありがとうございます。では、常闇の森に向かいますか!」


 ゆっくりと立ち上がり、体に付いた土埃を払い、プチの後を追いかける。肩に座ったレティーシアは、ご機嫌に鼻唄を歌い始めた。



 きっと、これから色々な事があると思うけど、このメンバーだったらなんとかなるよね!そんな事を思いつつ、晴れ渡る空の下、一人と一体と一匹の旅は始まった。

大変遅くなりましたが、後編です!

前編より更に長くなりました…orz


楽しんで頂ければ幸いです。

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