野犬の孤独
プロジェクトとはすでに確立していて、何年も前に宮崎由紀子という女生徒がつくったという。
―――――東京オカルトプロジェクト。
1
「悪いが、俺は乗らねぇ」
単に面倒くさいだけじゃない、束縛されるのが嫌だった。俺の場合、飼われるって言うべきなんだろうな。
「表向きは人助けとして、本質は邪魔なものを排除する駒というところか」
続けて、雨宮が抵抗を諦めたように席に座る。
彼女はニャっと口元を歪ませ、俺にサブマシンガンを向けた。
「キミは少し喋り過ぎだよっ」
クールだ、と自称される彼女の姿はそこにはなかった。
俺に向けていた銃が振るえ、図星を突かれたのが気にくわなかったのだろう。
「犬は感が鋭くて、用心深い。ムキになったら、足元すくわれるぞ」
雨宮は"虎の威をかる狐"のように、忠告した。
『冗談じゃねぇ!!俺は飼われねぇよ』
ぷつん、と俺の中で何かがキレた。
俺は岩崎を突き飛ばして、部屋を出た。階段を一回まで降りて、クラブ等をでて、とにかく走った。
いや、逃げた。
「よっ」
途中で声をかかられようとも、今は逃げることに夢中で、視界に入ってくることはなかった。
はぁ……はぁ、はぁ。
息切れして、廊下に倒れこんだ。ずいぶん走った気がする。
2
「あーあ。腕の骨イっちゃってるね」
右腕が垂れ下がって、動かなくなっていた。生身の人間なら、泣き喚いてるだろうに、至って平然とする岩崎はもう片方の腕を軸に立ち上がった。
「大丈夫、彼はきっと必要とするはずだから。狗ゆえに自由を求める。でも、馬鹿だから野犬の末路を知らない」