富士宮第一高等学校
富士宮第一高等学校。
花道の家元だった先代が建てたとかで、共学制度でありながら流儀やら伝統やら格式やらがうごめいている。姉妹校である『龍谷学院大附属高校』ではできなかった国際化にも力を入れており、留学生の受け入れや、カトリック教徒の取り入れなど、俺たち生徒側としてはかなり迷惑な話である。
龍谷と建築の創りは全く同じで、敷地面積がちょっと狭くなったようなものだろう。
「おわっ。汚ねぇー部屋」
ここはちょっと変った新聞部の部室。実を言うと、新聞部の活動はほとんど『民俗学研究』のほうに充てていて、よろず屋じみたことをやっている。
その部室に訪れた萩山正樹は何かの書類だろうか、紙切れの散らばった室内を見て吠えた。
「―――――始めまして」
「"ようこそ"って言うべきかな、萩山正樹くん」
岩崎依舞。まさしく彼女そのもので、理事長室にあるような黒革の椅子(ドイツ製)に何かを企んでいる微笑を浮かべた。
きっかけはちょうど三日前。俺がマイルームでテニスラケットの雑誌を見てくつろいでいるのを邪魔するかのように、携帯のバイブ音が鳴った。
『あなたはわたしのプロジェクトに大抜擢されました』
不可解かつ意味不明な文字のアンサンブル。
(なんだよ、迷惑メールじゃんか)
メールを消去しようとした時にふと、あて先に記されているアドレスに目がいった。
(――――え、あて先は………自分?!)
それはどう考えても、送信先は俺の携帯から送られたもので、内容も不気味だった。
『―追伸―
明日、放課後。クラブ棟三階『新聞部』まで来られたし………』
ドコだよ、新聞部って!!
そして、現在に至る。
「早速だけど、ここはただの新聞部じゃなくてな。"民俗学研究部"というそうだ。俺もあのメールを受けてここへ呼ばれた。お前もだろう、萩山」
柿色のカーディガンを着て、整髪料で立てた黒髪が特徴のクールな美形男児(小栗旬似)が俺に言う。
確か、こいつは二組の雨宮一也。
一九七センチもある長身は凄みがあった。最近、荒井教頭を空手で病院送りにしたばかりで、剣道も少しばかりできるらしい。
(俺でも、こいつとやり合う気はねぇな……)
「あれは、わたしが送ったもの。個人的な事情で細工させてもらったけれど。他に質問は……?」
上級生の岩崎依舞のことは少しばかり知っている。自信に満ち溢れる言動、この世の全てを下僕にさせる雰囲気、初対面にして彼女は魅力的だった。
「簡潔に言う。"プロジェクト"とは何のことだ」
あっさり言うね、雨宮くん。俺はキミみたいなタイプ、苦手なんだ。
「冗談じゃねぇ!!」
正樹は吠えた。
プロジェクトの本質が明らかに?!