物語はここから始まった
序章です。
斎雲寺。月子の生まれ育った大きなお寺。
月子はいつも裏の屋敷から少し奥のはなれに一人ぼっちだった。お祖父さまからの"言い付け"は絶対服従で、七歳の頃から『屋敷の方にはくるな』とお父さんから言われた。
食事は家政婦が同じ時間になると毎日運んでくる。
「月子様。お食事、こちらに置いておきますね」
五十過ぎの家政婦は御膳を木製の机に置くと、丁寧に一礼して屋敷の方へ戻っていった。
月子はなに不自由なく過ごしていたが、いつもここに訪れるモノはつくり笑顔を浮かべて、まるで化物をみるような視線をくれた。
先日、やっとその意味を理解した。
「あの子は悪魔の申し子だよ。見ただろ、あの子の目。先代の由紀子様と同じ冷酷で勝ち誇る目じゃ。いつ取り殺されるか………」
他の家政婦との会話が脳裏を過ぎる。
由紀子様と言うのは月子のひいお祖母さまで、ローマの文化に大変興味を持っていた。異宗教のためか、魔女とか悪魔とか一族から非難され、幽閉をよぎなくされたらしい。
当時、月子が六歳の頃。中学生だった姉は学校でイジメを受けていて、受験を控えノイローゼ気味の同級生に殺された。
「きゃああああぁぁぁぁ」
姉の最後は無残だった。
全身カミソリや小型ナイフでズタズタに切り裂かれていて、顔はヤバかった。
そこには容姿なんて解らないくらいボコボコに殴られた後があり、刃物の傷が何箇所もついていた。警察もとても見ていられるモノじゃないと断言したくらいだ。死因は出血多量。
お母さんは御通夜を済ませて、一人ぼっちで泣いていた。なんで泣いてるのって聞くと、振り向いて、狂ったように叫んだ。
「アンタが死ねばよかったのよ。お姉ちゃんが死んだのに、何で泣かないのっ!!泣きなさい。泣きなさいよ、ほらっ」
苦しかった。首を勢いよく閉められて、息が出来なくて、意識がもうろうとする。
お母さんが狂ったのはその時からだった。
こんにちは。有栖川です。
友人にこの小説を見せたところ、
「飛行少女めっ」
と言われました。私は非行って漢字くらい知ってたけど…
「飛ぶんですか?!」
と問うた。
「海にダイブしてみるかい?」
「いいねー」
なんかこのノリって疲れまふ。