家族の為に、俺は
俺にとって、軍団『龍の顎門』は言わば家族。両親の名も分からない、この世界における絶対的な心の拠り所。
だから、やるしかないと思った。
「……なあ、リッツ。本気で言ってるのか? 相手はかの有名な『朱雀』なんだぞ?」
軍団内でも特に信頼がおける人物。団長のケニーが声をかけてくる。
朱雀、それは大陸一の精鋭軍団。同時に我々龍の顎門の宿敵。朱雀との抗争は長らく続いており、いわゆる縄張り争いが原因だ。お互いの利益の為、絶対に譲れない。
「ああ、俺がやる。暗殺なら誰にも負けない自信がある。朱雀のリーダー、ブルムの首は必ず獲るさ」
「……お前が一度言い出したら止まらないヤツだってことは分かってる。今更説得は考えていない。だから――」
そう言って、ケニーは一本の短剣を取り出した。見覚えがある。軍団に伝わる伝説の短剣、デスブリンガーだ。名高い鍛冶屋が鍛え上げた逸品。
「これを託す。必ず戻って来い」
「……良いのか? もし俺が失敗したら、この剣は」
「言うな。俺はお前を信じている。だから持っていけ」
「……分かった。必ず無事に戻ってみせる」
「それでこそリッツだ。――行ってこい」
返事もせずに、ケニーへ背中を向けて歩き出す。勝率は五分以下であることは間違いない。それでも龍の顎門の未来の為に、俺は旅立つ。
「ここが奴らの拠点……行くぞ!」
覚悟を決め突入、そして朱雀リーダー、ブルムとの死闘を繰り広げた。
そして。
<リッツが死亡しました>
<リッツが右腕装備、デスブリンガー+5 をドロップしました>
<ブルムがデスブリンガー+5 を取得しました>
「うわあああああああ!!」
俺は奇声を発しながら、ディスプレイ前の椅子から転げ落ちた。