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薄暗い地下道で

掲載日:2026/07/02

 夜、私は仕事仲間の川島と帰宅のため駅へ向かっていた。

 会社から駅に向かうには地下道を通るのが近道だ。


 もう時間も遅いせいか、地下道の人通りは少なかった。



「ぎゃははは!」


 通路に(ひび)く大声。この通路を縄張りとしている若い男たちが(さわ)いでいるのだ。


「あいつら、いつもうるさいんだよ。少しは人の迷惑を考えろ」


 川島は舌打ちをしている。

 気づかいの上手(じょうず)な彼にとって、不良(ふりょう)の集団は気にさわるのだろう。



「普通の人間は怖がるってのは分からないんだろ」


 私はとりあえず話を合わせた。

 どうせ駅について電車で帰宅(きたく)すれば忘れてしまう、ささいな話だ。


 

 それでも川島のいら立ちは消えない。


「あいつら、いっぺん(こわ)い目に合わせてやろうか」


 川島はスマホを取り出した。


「あ、角田(かくた)? ちょっと協力して欲しいんだけどさ‥」


 彼は知人である角田を()び出す。

 私も彼のことは知っていた。妙に芝居(しばい)()がある(やつ)だ。



「あいつら気に入らないからさ、(おれ)がお前に殺されるドッキリしかけようぜ。どうせ全員()っぱらっているから警察(けいさつ)通報(つうほう)しても本気にされないだろ?」


面白(おもしろ)そうだな」


 角田はすぐ同調して私たちと合流した。



 川島は角田の持って来た血のりを頭にぬる。


「お前は頭をなぐるふりをしろよ」



 川島のリアルな流血(りゅうけつ)具合(ぐあい)に私は気分が悪くなってきた。

 2人から少し距離(きょり)を取り出す。



「怖がらせるんだったらさ、こっちもいいと思うんだけど」


 角田が何か薬剤を出す。


「このジェルを()れば、火であぶってもやけどしないんだぜ」


 川島もそくざにのった。


「いいな、俺が倒れた後でさ、お前これ塗って火を点けろよ。身元(みもと)(かく)すために顔を焼こうとしているって思うぜ、あいつら」



 さすがに私もやりすぎだと思い(はじ)めた。



 失敗したら川島は重傷を負う。

 成功しても警察沙汰(ざた)になる。



「や、やめとけよ」


 声をかけながらも私はじりじり後方に下がった。

 


 川島と角田は不良グループから見える位置につき、口論(こうろん)を始める。


「昔からぶっ殺してやるって思ってたんだよ!」

「おー? じゃあやってみろよこの野郎!」


 ちょっと大げさすぎるが、2人の怒声(どせい)にさすがの不良たちも気がついた。



 そしてバールを振りかざす角田。


 倒れる川島。不良の方に血のりがついた面をしっかり見せて。



 そんな川島の顔にジェルを塗り火を点ける角田。


 

 さすがの不良たちも「何やってんだよ、おっさんたち!」と(さわ)ぎ出す。



 私はふと気がついた。


 これはどこで終わりにするのだろう?

 周りには私たちと不良の他誰もいないが、もし警察が来てしまったらマズい。



「もういいだろう」



 (はな)れた場所から声をかける。


 それに応じて角田が川島を()さぶった。


 しかし‥川島は動かない。



 角田の(ひたい)(あせ)がにじみ出す。



(な、まさか?)


 私の脳裏(のうり)に最悪の想像が()かんだ。



 角田が私に向かって口を動かす。



「どうしよう‥死んでる」



 大分(だいぶ)離れているので声はかすれているが、彼が何を言っているかは理解できてしまう。



 恐怖(きょうふ)で私はパニックにおちいった。




(このままでは角田が殺人犯になってしまう?)



 不良たちが通報すればすぐ警察が来る。

 そして角田の財布(さいふ)には川島の話を了承(りょうしょう)した時に受け取った3万円が。

 そこには指紋(しもん)がばっちりついている。


 強盗(ごうとう)殺人になったら重罪(じゅうざい)だ。




 そして(はじ)めから一緒(いっしょ)にいた私も(つみ)()われるんじゃないか?



(いや、不良たちからは私は見えない位置(いち)にいた。今()げれば逃げ切れるはず)



 冷静に考えれば(おろ)かな判断だろう。

 しかしその時の私はまったく冷静ではない。


 角田も川島も置き去りにして、私はその場から走り()った。




 私は足早(あしばや)に駅へ入る。

 いつもはすぐ来る山手線が夜(おそ)いせいか全然(ぜんぜん)来ない。



 やっとホームに(あらわ)われた列車(れっしゃ)()び乗り、恐怖から離れられたことにホッとする私だったが‥



 スマホから着信音が。



 あわてるあまり(だれ)からなのかも確認(かくにん)しないまま出た私の耳に聞こえたのは‥



「テッテレー!」



 川島のやたら良い声だった。


 私は脱力(だつりょく)してその場にへたりこむ‥




 ***




 ってな夢を見たんですよ。物語にするため多少は()りましたが、だいたいこんな。

 ああ、超こわかった~


 変な姿勢(しせい)()ちゃダメですね☆


 オチがや団さんのネタみたいですが、夢の中なのでお目こぼしを‥





 夢なのでキャスティングが豪華です。川島は麒麟の川島さんで、角田が東京03の角田さんです。

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― 新着の感想 ―
夜の薄暗い地下道、不良たちの声、そして友人の軽い思いつきという導入から、取り返しのつかない恐怖へ近づいていく空気に引き込まれました。悪ふざけを止めなかったという小さな選択が、語り手の後悔として重く残る…
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