分隊、結成
会議の翌日、俺は誰にも宣言しなかった。
宣言は、味方が揃ってからするものだ。
まずは人選だ。
プロジェクトではない。
部門でもない。
“分隊”だ。
大きくすると潰される。
小さく、速く、密かに。
俺が最初に声をかけたのは、営業三年目の西田だった。
若いが、数字を落としたことがない。
だが彼は社内では浮いている。
理由は単純だ。
「上の顔色を見ない。」
昼休み、屋上で缶コーヒーを渡す。
「昨日の話、どう思った。」
彼は少し笑った。
「やっと言ってくれた、って思いました。」
即答だった。
「みんな分かってます。今のままじゃ勝てないって。でも言えない。」
「なぜ?」
「怖いからです。評価も、配置も。」
俺はうなずく。
恐怖は組織を静かに腐らせる。
「三ヶ月で一億。やるか。」
彼は少しだけ黙った。
迷いではない。覚悟の時間だ。
「やります。」
即答ではないところが、信頼できる。
次は開発だ。
古参の設計責任者ではない。
二年目のエンジニア、相川。
展示会帰りに、彼だけがCloudivaのデモを最後まで見ていた。
会議室で資料を広げる。
「既存製品の改修ではない。完全に別でやる。」
「どこまで自由ですか。」
「顧客に刺さるなら、何を作ってもいい。」
彼の目が変わる。
会社の若手は、能力がないのではない。
自由がないのだ。
「サーバーは?」
「クラウド前提。」
「保守部門が嫌がりますよ。」
「俺が受ける。」
沈黙。
「本当にやるんですね。」
「ああ。」
三人になった。
小さい。
だが十分だ。
次は運用。
既存顧客を誰よりも知っているのは、サポート部門の中堅、佐伯だ。
彼は慎重だ。
保守的だ。
だからこそ必要だ。
会議室の隅で、俺は言う。
「Cloudivaを否定しない。共存する。」
彼は眉を上げる。
「社内が許しますか。」
「許可は取らない。」
「潰されますよ。」
「数字を出せば潰されない。」
彼は長く息を吐く。
「顧客は、もう移行しています。」
「知ってる。」
「でも不満も多い。」
「そこだ。」
彼の目が揺れる。
“顧客を守りたい”
その感情が、最後の一押しになる。
「…条件があります。」
「言え。」
「現場の声を最優先にすること。」
俺は即答する。
「約束する。」
四人。
分隊だ。
予算はない。
公式な権限もない。
部門コードもない。
あるのは、
三ヶ月。
一億。
そして、敵を前提にする思想。
夜、オフィスに四人が残る。
ホワイトボードに書く。
・既存製品との競合禁止
・Cloudiva導入企業限定
・月額モデル
・初月で効果実証
西田が言う。
「これ、社内にバレたら止められますよ。」
俺は笑う。
「成果が出るまで、バレなければいい。」
戦争は、静かに始まっている。
これは反乱ではない。
会社を壊すためではない。
会社を戦える集団に戻すためだ。
俺は宣言する。
「俺たちは、敵を前提に動く。」
その瞬間、俺はもう“部長”ではなかった。
分隊長だった。




