表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

戦う部署の設定

戦争を始めると決めた翌日、

俺はまず、部下を集めなかった。


改革は宣言から始めない。

構造から始める。


自席で三年分の数字を洗い直した。


売上。

利益率。

粗利構造。

固定費。

一人当たり生産性。

受注率。

失注理由。


表面上は横ばい。

だが実態は違う。


利益は“値引き”で作られていた。

受注は“偶然”で成立していた。

成果は“個人依存”だった。


再現性がない。

これでは戦えない。


戦う組織とは、

偶然で勝たない組織だ。


俺は紙に三つだけ書いた。


1、勝敗を明確にする

2、責任を固定する

3、成果を可視化する


これだけでいい。


午後、初めて全員を会議室に集めた。


8人。

若手3人、中堅2人、ベテラン3人。


誰も危機感は持っていない。

むしろ、現状維持で満足している顔だ。


俺は言った。


「今期からやり方を変える」


静かなざわめき。


「何を目ですか?」と中堅の一人が聞いた。


俺はホワイトボードに数字を書いた。


目標利益率。

受注率。

回転日数。


「これを全員分、公開する」


空気が止まる。


「個人別ですか?」


「そうだ」


「評価に直結しますか?」


「する」


若手の顔が強張る。

ベテランが腕を組む。


予想通りだ。


曖昧さは安心を与える。

明確さは恐怖を与える。


俺は続けた。


「失敗は責めない。だが言い訳は認めない」

「どう違うんですか?」


若手が小さく聞く。


「失敗は挑戦の結果だ。

 言い訳は挑戦しなかった結果だ。」


沈黙。


この瞬間が分岐点だ。


恐怖で押せば、反発が生まれる。

理想で語れば、軽く見られる。


だから俺は数字を出した。


「今のままでは三年後に利益は二割落ちる。

 これは感想じゃない、データだ。」


資料を回す。

グラフが沈黙を支配する。

誰も反論できない。

感情ではなく、証拠で殴る。


戦争の第一撃は、常に事実だ。


会議が終わった後、

ベテランの一人が近づいてきた。


「正直に言うと、やりすぎだと思う」

「どこがですか?」

「数字を公開すると、空気が悪くなる」


俺は答えた。


「今の空気は良いですか?」

彼は黙った。


良いわけがない。

ただ“静か”なだけだ。

俺は知っている。


今日から俺は警戒される。

裏で「やりすぎだ」と言われる。

上にも話が行くだろう。


それでいい。


戦争とは、

快適さを壊すことから始まる。


その夜、全員にメールを送った。


件名:新評価制度運用開始


本文は短い。


・全数値を共有フォルダに公開

・週次で進捗確認

・言い訳の禁止

・改善案は必ず数字で出す


逃げ道を塞ぐ。


翌週、最初の週次報告。

若手の一人が未達だった。


彼は言った。

「市場が悪くて…」


俺は遮らなかった。

最後まで聞いた。


そして聞いた。


「市場が悪い中で勝っている会社は?」

彼は答えられない。


「市場は条件だ。言い訳ではない」

会議室の空気が冷える。


だが俺は追い詰めなかった。


「どうすれば勝てるか、三案出せ。

 来週までに。」


逃げ場はある。

だが努力以外の逃げ場はない。

これが戦う部署の設計だ。


恐怖で縛らない。

理想で酔わない。

構造で動かす。


まだ成果は出ていない。

だが何かが変わった。

空気が重くなったのではない。

空気が“張り詰めた。


緩んだ組織は弱い。

張り詰めた組織は強くなる。


俺は静かに理解した。


もう後戻りはできない。

俺は部署を戦場に変えた。


だが本当の戦争は、

まだ始まったばかりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ