プロローグ
五万文字あたりで終わる予定です
「カヤ、ここに藁をお願い」
(ええー、また? アリエスは僕を使い過ぎだよ。大体藁って作るの面倒なんだよ? 藁なんてなくても、寝られるよ)
私の名はアリエス。エルフ族の娘であり、日本人だった記憶を持ち、そしてただいま絶賛放浪中である。
自分を僕と呼んでいる、ひな人形のように小さく和服で黒髪の少女、この子が植物の精霊カヤノヒメ、私の相棒だ。愛称はカヤだ。
カヤは私が唯一契約している精霊である。
普通のエルフならば相性の良し悪しはあれど、精霊一体しか契約できない、ということはない。
でも私はぽんこつなのだ。
エルフのくせに森で道に迷う。
まともに弓を使えないし、撃ったとしてもノーコンすぎて的に当たらない。
運動神経も非常によろしくない。何でみんな猿のように木へ登って、軽々と隣の木へ飛び移れるのだろうか。
致命的なのが、他のエルフのように精霊が見えないことだ。見えたのは唯一、契約しているカヤだけである。
もうね、幼少のころから村八分でしたよ。
幼いころとは言ってもエルフ感覚なので五十歳くらいまでは両親と共に暮らしていたけどね。
しかしそこから百二十歳になるまで、村の端っこに用意された小さな家へと追いやられたのだ。
料理もできない、精霊もカヤ以外見えない、狩りもできない、裁縫もできない。
できるのは洗濯と植物を育てること。
あ、食べるのは得意です。
こんな娘を養っていく?
御冗談を、と言いたくなるのも分かる。
植物についても、別に私でなくとも他の人でも片手間でできるし。
ずっと放置されていました。
食事については果物を育てて食べてたし、衣類については定期的に村の優しい人から譲ってもらえたので、何とか生きていけた。
お風呂も近場に川があるので、水浴びできたし。
というより、わりと充実していた。話し相手だってカヤがいたからね。
……あれ? ニート生活?
そんな幸せ(?)な日々は永遠に続かなかった。百二十歳を迎えた日、私は村から追放された。
村長以下十人ほどの男たちに囲まれ、無言の圧で村の外を指さされましたよ。
ええもう、悲しみのどん底です。
そして追い出されてから百年、その間色々なことが起こった。
師匠にこき使われ、師匠に顎で使われ、師匠に無茶ぶりされて。
……ん? 師匠のことばかりだ。
(こんな感じでいいかな?)
「さすがカヤ! いよっ、日本一! 私にできないことをあっさりしてのける、そこに痺れる憧れる!」
(……意味が分からないよ)
カヤのおかげで、寝床もできた。
さて、早いけど今夜は寝るとしましょう。
追い出されてから今までの百年を思い返しながら。
ファンタジー的なものを書いてみようと思った習作です




