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エルナの真意と、交錯する道

 王都からの書状には、「クロウ=イシュトリア、および“進化スキル保持者”との対話を希望する」と記されていた。

 依頼主の名は──エルナ・フィリス。俺の幼馴染であり、俺を“追放”した人物のひとり。


「行くの?」


 ティナの問いに、俺は静かに頷いた。


「ああ。ただし、会うだけだ。何か企んでる可能性もある」


 バルトラムから王都までは、馬車で三日。だがその途中、森の小さな宿場町で、俺たちは彼女と“再会”した。


「……本当に、生きてたのね、クロウ」


 宿の個室。ローブのフードを下ろしたエルナは、かつてと変わらぬ整った顔立ちと──冷静な瞳を持っていた。


「あなたが“地下の封印”に触れたと聞いて、いてもたってもいられなかった」


「それで、俺に何の用だ。追放した相手に、今さら何を話す?」


「誤解しないで。私は……“あの時の判断”が正しかったと思ってる」


 ティナが身構える。だが、俺は手で制した。


「話せ。あの封印に、何がある」


 エルナは一枚の魔導紙を差し出した。そこには──地下にあった黒い結晶と酷似した“封印陣”の構造式が描かれていた。


「封印は、王都魔導院が三十年前に行った禁術の名残。『影神シャドウロード』と呼ばれた存在の断片よ」


「……神の断片、だと?」


「影神は、人の“可能性”に憑く存在。“進化”に寄生し、力を与える代わりに魂を削っていく」


 俺は息をのむ。まさか──ティナのスキル暴走も……?


「進化スキル保持者の周囲に、“影の兆候”が増える。それが証拠」


 ティナが不安そうに俺を見上げた。


「……じゃあ、私、危ないの?」


「……いや、守る。絶対に」


 エルナが小さくため息をついた。


「だから私は、あなたに“協力”を申し出る。再び魔導院に戻ってきて。今なら、研究室の席を用意できる」


「それが、あんたの“真意”か」


 俺は静かに立ち上がる。


「残念だが──俺はもう、あんたたちの檻に戻るつもりはない」


 ギルド《リビルド》。それは、“過去を塗り替える”ためじゃない。

 “これから”を創る場所だ。


「俺たちは進む。“進化”の意味を、自分たちで確かめるために」


 エルナは一瞬だけ目を伏せた。


「……ならせめて、これだけは持っていって」


 そう言って渡されたのは、銀色の魔導端末と、王都の“特級依頼書”。


 内容にはこう記されていた──


《封印の片鱗が、王都南部の旧塔で再活性の兆候を見せた。調査を求む》

優先度:最上位

対象:クロウ・イシュトリア/《進化系スキル保持者》限定


「……向こうから仕掛けてきた、ってわけか」


 俺は依頼書を胸ポケットにしまった。


「行こう、ティナ。今度は、“こちらの意志”で踏み込む番だ」

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