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JK、失恋する

 その日の放課後、ひなたは気持ちが沈んでいる友達、川端 美希ミキを見かけた。いつもの元気な笑顔を見せていないその顔に、ひなたはすぐに何かあったのだと気づいた。


「ミキ、どうしたの? なんか元気ないじゃん」


「……別に」


 ミキは軽く肩をすくめたが、その目には涙が滲んでいる。ひなたはすぐにピンときた。


「まさか、告白した相手に振られたとか?」


 ミキは少し驚いたような顔をしてから、うなずいた。


「うん、そんな感じ……」


「えっ!? それ、いつ?」


「今日の昼休みに」


 ひなたは心の中で「やっぱり」と思い、少し戸惑いながらもミキの隣に座った。


「それで、どんな感じだったの?」


「いや、突然だったんだよ。なんか、あっさり振られて、もうビックリして……でも、冷静になったら、なんか、すっごく切なくなっちゃって」


「そっか……」


 ひなたはミキの手を取って、そっと握った。


「でも、失恋ってつらいよね。あたし、全然経験ないけど、わかる気がする」


「うーん……やっぱり、つらいよ。でも、なんか不思議なことに、少しスッキリしてる気もする」


「スッキリ?」


「うん。だって、気持ちがちゃんと向こうに届いたわけだし。でも、でも、やっぱり……」


「……好きだったんだね?」


「うん、すっごく」


 ミキは涙を浮かべながら、うつむいた。その姿にひなたは何も言えなくなった。心の中で、ふと佐藤の言葉を思い出す。


「恋愛って、気持ちを伝えることが大事だ」


 ひなたは、少しでもミキの気持ちを楽にできるように思いながら、ふっと口を開いた。


「ミキ、泣いてもいいんだよ。そんな時、泣いていいんだよ。泣いたら、少しは楽になるから」


「ひなた、ありがとう……」


 ミキはそっと顔を上げ、ひなたに微笑んだ。その顔にはまだ涙が滲んでいるけれど、少しだけ安心したような表情が浮かんでいた。


 その時、ひなたの携帯が震えた。画面を見てみると、「佐藤さん」からのメッセージだった。


「お、佐藤さんからだ」


 ひなたはすぐに返信をしようとしたが、ミキが興味津々に覗き込んできた。


「おお、佐藤さんから?」


「う、うん。ちょっと、相談があるみたい」


「まさか、恋愛相談?」


「多分、そう」


 ひなたは返信を打ちながら、ふと思い出した。


「佐藤さんも、実は昔、誰かを好きだったんだろうな」


 佐藤が昔どんな恋愛をしていたのか、ひなたは気になっていた。そして、佐藤が言っていたことを思い出す。


「恋愛は、気持ちを伝えることが大事」


 ひなたはメッセージを送った後、ふと考えた。


「失恋って、やっぱり辛いよね。でも、辛い分だけ、成長できるのかな」


「そうだね、ひなた。でも、あたしはやっぱり、もっと自分の気持ちに正直になりたいと思った」


「うん、きっとそうだよ。泣いてもいいけど、また元気を取り戻したら、前に進んでいけばいいんだよ」


 ミキは少し笑顔を見せ、ひなたもその笑顔に安堵した。その後、二人でしばらく黙って外の景色を眺めていた。




 次の日、学校が終わると、ひなたは佐藤からの返信を確認して、すぐに携帯を手に取った。


「佐藤さん、どんな相談かな?」


 そのメッセージにはこう書かれていた。


『ひなた、今度、少しだけ話したいことがあるんだ。君の意見を聞きたい』


「うーん、気になるな……」


 ひなたはしばらくそのメッセージを眺め、何となく胸騒ぎを感じていた。




 放課後、ひなたは佐藤と会うためにいつものカフェに向かった。少しドキドキしながら待っていると、佐藤がやってきた。いつも通りのスーツ姿で、少し緊張した様子を見せている。


「こんにちは、佐藤さん」


「や、やあ、ひなた。今日はありがとう、呼び出しちゃって」


「全然、気にしないで」


 佐藤は座ると、少し照れくさそうに言った。


「実は、僕……ミキちゃんのこと、心配でね」


「え?」


「昨日、振られたって聞いて、僕もどうしていいのか分からなくて」


 ひなたは驚いた。佐藤がミキの失恋を気にしているなんて、思いもしなかったからだ。


「佐藤さん、そんな……でも、どうしてそんなに心配してくれるの?」


「それは……君に頼まれたからじゃないよ」


 佐藤は少し照れながら言った。


「ミキちゃんが元気を出すために、何かできることを考えて、相談したくてね。あ、いや、ひなたがそう言ったからじゃなくて……」


「わかってるよ、佐藤さん」


 ひなたは微笑みながら、ふと思い出した。


「恋愛って、結局は気持ちを伝えることが大事だ」


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