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大人って、ずるい

 学校の帰り道、ひなたは考え込んでいた。佐藤が言ったことは、本当に正しいのだろうか? 「距離を取ったほうがいい」という言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。彼が何を意図しているのか、どうしてそんなことを言ったのか、ひなたには理解できないことが多すぎる。


 だが、ふと、思い出したことがあった。佐藤が言っていた「俺みたいな、おっさんが近づくのは迷惑」という言葉。それが、ひなたの心に引っかかっていた。


 恋愛において、年齢や経験は大きな壁になる。ひなたには、まだその壁を乗り越える方法がわからない。それでも、佐藤は確かに何かを教えてくれようとしている。その教えが何かを知りたくて、ひなたは足を速めた。 


 それにしても、大人って、ずるいなと思った。佐藤は、恋愛についていろいろ経験しているからこそ、言えることがある。でも、ひなたはまだその「大人の恋愛」がどういうものか、よくわからない。



 学校が終わると、ひなたはふらっと立ち寄ったカフェで、ノートにメモを取りながら考えを整理していた。何度も何度も考えた末、ひなたは自分の中でひとつの決心をした。




 翌日の昼休み、ひなたは佐藤に連絡を取った。ちょっとした相談事があると言いながら、いつものように一緒にランチをしようと誘った。


 佐藤はいつものように少し躊躇しながらも、結局はひなたの誘いを受け入れてくれた。二人はいつも通り、カフェで座りながら話し始める。


「佐藤さん、最近なんか、少し距離を感じるんですけど」


 ひなたがその言葉を口にすると、佐藤は少し驚いたように顔を上げた。


「え? そんなつもりはないけど……」


「でも、何か気にしてることがあるんじゃないですか?」


 ひなたは佐藤の目をじっと見つめた。自分が感じたことを、言葉にしてみたくてたまらなかった。


 佐藤は少し考え込むようにしてから、ゆっくりと口を開いた。


「ひなた、お前は……もう少し大人になった方がいいんじゃないか?」


 その言葉を聞いたひなたは驚いた。まさか、佐藤からそんな言葉が出るとは思わなかったからだ。


「大人になんて、まだなりたくないですよ! でも、佐藤さんだって、わかってるでしょ? すぐに答えを出すのは難しいけど、少しずつでも考えていこうと思ってます。だから、無理に距離を置かないで欲しいです」


 その言葉を聞いた佐藤はしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。


「……わかった。無理に距離を取るつもりはないけど、お前には少しだけ時間が必要だな。俺も、少しずつ考えていこう」




 その日の帰り道、ひなたは心の中で少しだけ安堵の息をついた。少なくとも、佐藤が答えを出さないことには、何も始まらないのだと、改めて感じた。


大人って、やっぱりずるい。


 でも、それを少しずつ理解していけるのは、きっと悪いことではない。ひなたは、これからの時間を大切にしようと心に誓った。


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