移動と作戦会議②
「植物油を売り捌く為の戦略を立てる為には、揚げ物についての情報が必要なんだよ。」
『ごめん。言ってる意味が分からん。
もう少し、掘り下げて話してくれない?』
嫁の苦笑いする声が携帯から聞こえてくる。
「もし、唐揚げや、フライド ポテト。ポテト チップス等といった、油をたっぷりと使って作る美味しい料理が、大森林地帯でメジャーな食べ物であれば、
大森林地帯でも、植物油と言う、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)では新しい油の需要は確実にある。と言う事になる。
そんでもって、もし、唐揚げや、フライド ポテト。ポテト チップス等といった、油をたっぷりと使って作る美味しい料理が無いのであれば……
植物油。と言うよりも……油の需要を高める為に、
油をたっぷりと使って作る美味しい料理も、一緒に広める必要がある。って言う事になる。
だから、植物油を売り捌く為の戦略を立てる為には、揚げ物の情報が必要なんだよ。」
『サルクル殿の意図を理解したでございまする。
直ぐに、調査を始めるでございまするぞ。』
レイヒト君の真剣な声が、携帯から聞こえてくる。
■■■
『アスファルトの道を走るのと比べたら、格段に走り難くいとはいえ……
人が定住してない場所は、基本、未舗装だと言う、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の中では、
道幅を気にしなくても良い、だだっ広い、草原の移動は、かなり楽な移動になるのだろうね。』
『せやね。
せやけど……背の高い草の近くは、肉食の野性のモンスターが潜んではるらしいで。
せやから、そう言う場所には、極力、近づかん方が良えみたいやわ。』
嫁の言葉にプグナコちゃんが、返答を返す。
『了解。
てか……かなり気温が上がってきてるけど……暑く無い?』
『湿気も少ないし、スピードが出てるさかい、長袖の制服だけやと肌寒いぐらいやわ。
同好会で使うてた、ウインドブレーカーを鞄にしまうべきやなかったかも?って、思ってるぐらいや。』
嫁の質問に、プグナコちゃんが答える。
時刻は14時。
外の気温は、30度近くまで上がっているらしいのだが、問題は無いようだ。
アスファルトの道路と違い、車内は、それなりに揺れる。
大森林地帯は、未舗装の林道だけでなく、場合によっては、獣道のような道も走るらしいから、きっと、もっと揺れるのだろうな。
てか……ディンエさんが、オフロードも走れるキャンピングカーを用意しておいてくれれて助かった。
僕と嫁のミニバンで、そんな道を走ったら……直ぐに壊れてしまいそうだもんね。
■■■
『プグナコちゃんの先導が無いから、ゆっくりと走るぞ。』
嫁の声が携帯から聞こえてくる。
時刻は21時。
満天の星空の下とは言うものの、辺りは漆黒の闇に包まれている。
既に外気温が、0度以下まで下がっている為、
プグナコちゃんの健康を考慮して、キャンピングカーのリアキャビンに座っての移動にして貰った。
別に急ぐ旅でも無いのだが……
走りやすい草原で、夜間の移動の練習をする事になったのだ。
半球睡眠が出来ない僕の為に、リアキャビンの半分をフラットな状態に変更して貰った。
ドマとコルは、フェエスタオルを入れた、取っ手付きのプラスチック ケースの中で既に寝息を立てている。
そんな2匹を見ながら、こんな状況で、良く眠れるなぁ……なんて思ってたが……
横になった瞬間、物凄い睡魔が襲ってきた。
■■■
「パパ。朝ごはんの時間だよ。」
嫁の声が聞こえてくる。
「おはよ。
昨晩は、問題無かった?」
「一晩中、キャンピングカーの周りを、幽霊が彷徨く以外はね。」
「怖。」
「慣れたわ。」
嫁からの恐ろしい話を聞きながら、
眠っていて良かった。と言う気持ちと、大変な時に何もしなくて申し訳なかった。と言う2つの気持ちが沸き上がってきた。
「そうそう。
今日の昼には、ジハリマの町に着く予定よ。
それと、レイヒト君が調べてくれた結果、
ジハリマの町の周りの村で、それなりの量の植物油が作られ始めているらしいわ。
だから、ジハリマの町でも、それなりの量の植物油が買えるみたいよ。
それと……大森林地帯では、揚げ物は特別な日だけ食べる料理みたいらしいわ。
パパが気にしていた、植物油の需要はありそうな気がするけれど……どう思う?」
嫁が、矢継ぎ早に知りたかった情報をくれる。
「取り敢えず、僕達が大森林地帯に行商の旅に出る理由は作れたね。」
「やっぱ、そうよね。」
嫁が、僕の言葉に嬉しそうな顔で頷く。
◇◇◇
「その話なのですが……
トラブルの予感があるのでございまする。
具体的に言うと、カリーナ帝国・イランツ カバー帝国・神聖法王国の軍事行動が活発化してせいで、
大森林地帯に住んで居る人々の人属アレルギーが増しているようなのでございまする。
それは、訪れた町や村の住人達が、
見ず知らずの拙者達を迎え入れてくれるない可能性が高まっている事を意味するのでございまする。」
「そこは想定の範囲内だよ。
植物油は日持ちがする食品だ。
だから、売り捌く為に、あちこちを徘徊している。って言う風に見えても問題ない。
寧ろ、邪険にされる。と言う事は……深く関わりを持たなくても良い。って言う事だから……寧ろ、有り難い話だよ。
とは言え……
本格的に戦争が始まる前に、日持ちがする物質を先に確保しよう。と、皆が考えて、逆に売れ行きが上がる可能性もある。
なので、ジハリマの町や、その周辺の村で植物油を買い漁り、ある程度の量の在庫を確保しておいた方が良い気もするね。」
僕は、モジモジした感じ話す、レイヒト君に、
僕が、今、考えている、今後の予定を話す。
「それを聞いて安心したでございまする。」
僕の言葉を聞いた、レイヒト君が、ホッとした顔をしていた。
■■■
『自分達も見えてはる思うけど……
バカデカい城壁が見えてきはったわ。』
『ザ・異世界。ザ・ファンタジーの世界。って感じでございまするな。』
『せやな。』
プグナコちゃんと、レイヒト君の興奮しながら話す声が、携帯から聞こえてくる。
『トラックや、車。バイクが増えて来た。
落ち着いていきましょう。
てか……他の車やトラックは、大小は別として、トレーラーを引っ張ってるね。
ディンエさんは、
わたし達のキャンピングカーは、目立たない。って言ってたけど……結構、目立って無い?』
『ホンマやな。
ディンエさんの情報は、間違えてはるんやないんやないやろか?』
プグナコちゃんが、嫁の言葉に激しく同意している。
『この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の行商人や運び屋は、
キャブコン(トラック型のキャンピング カー)で、荷物が積まれたトレーラーを引っ張って運ぶのが主流らしいですぞ。
それと……車が引っ張っている、小さなトレーラーは、キッチン トレーラーですな。
因みに、キッチン トレーラーには、就寝スペースが無い物が主流らしいでございまするぞ。
後は……
バイクのフロント部分に取り付ける、【マジックウインド シールド】と言う商品が流行っているらしいのでございまする。
因みに、この商品をバイクのフロント部分に取り付けると、風や雨や日差し。虫や……頭上から降ってくる蛇等を防ぐ為の結界を張ってくれるらしいのでございまする。』
レイヒト君は仕入れた情報を次々と披露してくれる。
◇◇◇
『へ~。そうなんや。
せやった……最低でも、トレーラーだけでは買っとかんといけのちゃう。』
『それだけじゃ不十分でございまするぞ。
このキャンピングカーが、トレーラーを引っ張れるように、
職人さんに、簡単な改造を施して貰う必要もありまするぞ。』
プグナコちゃんの話を聞いたレイヒト君が、淡々とした口調で話す。
『マジかぁ……
トレーラーを販売している店だけじゃなくて、このキャンピングカーを改造してくれる職人さんも探さないといけない。って事ね。』
嫁がタメ息をついている。
『大丈夫でございまする。
ある程度ではございまするが、既に、リサーチ済みでございまするぞ。』
『おぉ。頼もしい限りやな。』
レイヒト君の話を聞いたプグナコちゃんの弾んだ声が携帯から聞こえてくる。
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