【サイドストーリー】新たな火種(ライコ視点)
「ムルオ!
カドルナ王国の最南端に進攻を始めるが黙認して欲しい。と事前に通告していた筈だ!
これは……どういう事だ!」
首から下を、マナを吸いとる吸マナ石と言う魔石で出来た拘束具を着せられて、正座をさせられている、ニワルレは……
鬼の形相でムルオさんに食って掛かる。
「ハハ。
今の、お前さんの立場で……通告したから了承を得た。と言う理屈は通らない。
何時までも……管理人のつもりでいるんじゃねぇよ。」
ムルオさんが、ニワルレを見下ろしながら、大笑いしている。
「言えてる。
お前達は……管理人でも神仏の代理人でもない。
その権限を剥奪され、反逆者に認定されている……ただの犯罪者だ。」
「ユゲミズ……お前……他人の事を言えるのか?
その手に刻まれた反逆者の印……
管理人ではなく、神仏の代理人のお前さんは知らないだろうが……最上級の反逆者に刻まれる物に変化してるぞ?」
ニワルレは、ユゲミズさんを小馬鹿にするような顔をしながら話す。
『残念ながら……嘘はついて無いようだ。
ディンエと俺達(【虹を見たい者達】)の架け橋になれそうになくなったね。
でっ。どっちに付くつもりだい?』
通信機器の向こうから、リクルルさんの冷静な声が聞こえてくる。
「ふざんな。ディンエ様……いや。ディンエ。
俺は……この世界(アン ナブ キ シェア ラ)を開いた世界にすると言う大義の為に汚れた事もやった。
だけど……それでも……大義の為に奮闘していた、俺を……最上級の反逆者に認定するのはやりすぎだ。
その愚かな行いを……命をもって償わせてやる。」
リクルルさんの話を聞いたユゲミズさんが、憤怒の表情を浮かべている。
『落ち着け。ユゲミズ。
アレを使えば、こうなる可能性がある事を事前に伝えただろ。
ディンエは……良くも悪くもお役所気質の中間管理職の器の奴だ。
俺の読み通り……清濁併せ持つような器では無かった。ってだけだよ。』
「知ってるよ。
それでも……最上級の反逆者に認定するのはやりすぎだ。
命をもって償わせないといけない案件だ。」
リクルルさんの話を聞いても……ユゲミズさんの怒りは収まらない。
『だから……落ち着け。って言ってるだろユゲミズ。
僕も……ディンエを殺るのは賛成だ。
それに……君が最上級の反逆者に認定されたと言う事は……君と行動を共にしている僕達も……最上級の犯罪者に認定されていると見るべきだ。
決して、他人事で言っている訳ではない。
幸い、【貨幣の騎士】は……元の世界(ムシュ イム アン キ)に戻る事に拘っていない。
そして……それ以外のメンバーは……ディンエを他世界との次元の境界線上にある、次元転移装置を管理する施設に幽閉すると言う反逆に加担した者達や、その関係者。
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)が閉じた世界であり続ける事を願う者ばかりだ。
とはいえ……ここは……サクッとニワルレを殺って、ディンエが無能だから動かざる得なかった。と言う既成事実を作ろうか。
長い人生、何が起こるか分からない。
最悪の場合……恩赦を頂ける準備をする事も必要だからね。』
リクルルの冷静な声が通信機器から聞こえてくる。
「なぁ……リクルル……
皆が、お前さんのようにドライな人間ではない。
とはいえ……ユゲミズ。
ディンエは、まぁ……色々と間の抜けたところがある。
だが……奴に付いてるサスケイは切れ者だ。
冷静さを欠けば、返り討ちに会うぞ。」
「あぁ。そうだな。済まなかった。」
ユゲミズさんは、ムルオさんに諭されて落ち着き始めてくれた。
『リンゴトマド。
勝手に話を進めさせて貰っているが……問題有るかい?』
『問題無いよ。
取り敢えず、ニワルレ達をサッサと殺ってくれ。』
リクルルさんの質問に、
【貨幣の騎士】のリーダーで、リクルルさんと同じ、超越点のアサグ(【星の記憶へのアクセス】)のリンゴトマドさんが淡々とした口調で答える。
「おい。
お前達……元とはいえ……管理人の俺を殺せば後悔する事になるぞ。
何故なら、お前達は、管理人しか知らない情報を持たずに、ディンエと殺り合う事になるのだからな。」
ニワルレが青い顔をしつつも、生き残る為の交渉を始めた。
『だとしても……あんたを匿った事で得られるリターンよりも……あんたを匿った事で発生するリスクの方が……遥かに高い。そんな気がするんだけど……』
『僕も……リンゴトマドと同じ見解だ。』
「俺もだ。」
リンゴトマドさんの意見に、リクルルさんとムルオさんが頷く。
「じゃあ……俺に殺らせてくれ。
頭では、お前達の話は理解してるんだが……ムシャクシャしてんだよ。」
「おう。任せたわ。」
ニワルレの殺害の実行役を買って出たユゲミズさんに、ムルオが、ユゲミズさんの肩に手を乗せながら、了承された。
◇◇◇
【スパァァァァーン】
ユゲミズさんが、腰に下げた片手剣を抜くと、ニワルレの首を刎ねた。
【ゴロゴロ】・【ゴロゴロ】・【ゴロゴロ】
刎ねられたニワルレの首が地面に転がる。
「じゃあ……後は任せた。
ナヤコフ。 行くぞ。兵と傭兵を集めろ。」
「はっ。」
ムルオさんの眷属の1人でナヤクラース連邦の特殊部隊の総隊長を務める、ナヤコフさんが、短い返答を返す。
「ご協力、感謝っす。」
【貨幣の騎士】の特異点のアサグ(【人外の契約者】)
のグアマが、笑顔でムルオさんに握手を求める。
「リンゴトマドとイデイにも、久しぶりに会いたかったな。」
「心にも無い事を言うのう。
お前達だって……リクルルやドクマド。 チクラクやブンガマを温存しておるじゃろ。
それと……同じじゃ。」
グアマの従魔で【磁化と磁場の操作】と言う異能を持つ、羽犬(幻獣)のツキアトが苦笑いしている。
「言えてる。」
ユゲミズさんの従魔で、【術式解析眼】と【魂眼】と言う異能を持つ、九尾の狐(瑞獣)のギョクソウが、大笑いしながら頷いていた。
■■■
「ムルオ様。全員、集め終わりました。」
「ご苦労様。
ライコ。帰るぞ。」
ムルオさんは、ナヤコフさんに短い労い言葉をかけると、アタシに指示を出す。
「はい。
ワームホールを繋げます。」
アタシは、ムルオさんの指示に頷くと、何も無い空間に、アタシ達のアジトがある場所から、500キロ程、離れた森の中に、トンネル状のワーム ホールを繋いだ。
これは、【貨幣の騎士】の一員として、この場に居る、【神遊観】・【距離を消す者】という異能を持つ変異点のアサグのプリミコに、アタシ達のアジトを突き止められないようにする為の策だ。
「有り難うございました。」
カドルナ王国軍の将軍が、そう言いながら、アタシ達に敬礼をすると、
カドルナ王国軍の兵士や、カドルナ王国の傭兵や冒険者が、一斉に敬礼をしてくる。
「気にするな。
今回は利害が一致しただけだよ。」
ムルオさんは、そう言うと、アタシが作ったワームホールに入って行かれた。
■■■
「さてと。帰るか。」
ムルオさんは、そう言うと、ユゲミズさんが、小瓶に封印していたピックアップ トラックに乗り込んだ。
後、数発の雷を落とせば……マナ切れを起こし、丸一日程度は、魔法や魔術。術式が使えなくなるだろうな。
まぁ……今回は、ムルオさんやユゲミズさん。ギョクソウさんに、ナヤコフさんの部隊も居る。
たとえ、モンスターや盗賊が襲って来たとしても……アタシが暫く、無能なっても……特に心配する必要もなさそうだ。
それよりも……ユゲミズさんが、ディンエにぶちギレている事が気がかりだ。
基本、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)を無茶苦茶にしたい、アタシ達(【虹を見たい者達】)のメンバーにあって、ユゲミズさんは……
アレの使用以外では、やり過ぎようとする、アタシ達(【虹を見たい者達】)のメンバーを抑えるストッパー的な役割を務めていた。
そんなユゲミズさんが、怒りに任せて、ストッパー的な役割を放棄したら……いよいよ、アタシ達(【虹を見たい者達】)は、歯止めが効かなくなり……
本格的に、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)を無茶苦茶にする為に動き出す筈だ。
アタシは……この組織(【虹を見たい者達】)の幹部ではあるもの……この組織(【虹を見たい者達】)の意思決定権は持っていない。
願わくば……この世界(アン ナブ キ シェア ラ)が閉じた世界であり続ける為に必要な戦い以外は……控えて欲しいところだ。
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