【サイドストーリー】密偵部隊の結成(モクタ視点)
「う~ん。どうするかなぁ……」
「即断即決が信条で、平民の狗(キルシポの信奉者)の、お嬢でも……迷う事があるんだな。」
頭を抱えているキュルコ様を見ながら、ヒラロウさんが大笑いしている。
「うっさいわね……
いくら、私がキルシポ様を崇拝させて頂いてる身とはいえ……
問答無用で、実家を国家(カリーナ帝国)に仇を成そうとしている反逆者の一味として売るのには……流石に抵抗があるの。
それに……まだ計画の段階。
だから……バカな計画に加担するな。って言う説得も出来るわ。
それに……正直に言うと……なんか……キルシポ様が……変なのよね……
てか……ぶっちゃけると、変。っ言うよりか……違う人になったみたいな……なんて言うか……気味が悪いのよね……
あぁ……通信機器が使えなくなったのがもどかしい。
もっと……キルシポ様と、お話して……
私の感じてる違和感の正体を見つけるヒントだけでも探りたい。
実家のバカ達を諌めたい。
だけど……どちらも無理ね。
本当に……何故、このタイミングで壊れるかなぁ……
けど、まぁ……起こった事は仕方がない。
私は……私情を挟まず、グマリハの村やトミシシゲの村の長として、勝った方に全力で媚びを売り、2つの村の安寧を守り抜く以外に出来る事は無いわね。」
キュルコ様が、そう言いながら、
いきなり使えなくなった通信機器や情報機器を恨めしそうな顔をしながら、睨みつけられていた。
◇◇◇
現在、俺達は、キュルコ様の下で、ムルル自治区のグマリハの村やトミシシゲの村を管理している。
そして……不思議な事に、ある日、突然、俺達が治めている、グマリハの村やトミシシゲの村の全ての通信機器と情報機器が、何の前触れもなく、いきなり使えなくなったのだ。
風の噂で、聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団だけでなく……神聖法王国の兵団も、激突の直前に、魔法や魔術。呪術や全ての魔道具が使えなくなり、ジョブ補正が切れたらと聞いている。
だから、俺達は……通信機器や情報機器が使えなくなったのは、その前触れじゃないか?って焦ったのだが……
今のところ、通信機器や情報機器が使えなくなった事以外に大きな変化はない。
因みに、この現象は、
俺達が知る限りでは、我が国(カリーナ帝国)の北部や、ベシアセ連邦の領内でも起きているらしい。
でっ。キュルコ様が頭を抱えられているのは、
キュルコ様のご実家が……
この混乱に乗じて、ベシアセ連邦の最大部族のカンガ族や、彼達の元に亡命していたサンアン辺境伯。そして……彼女を信奉する、我が国(カリーナ帝国)の北方の反政府派の貴族達と共に、北都を急襲して落とし、
北都をベシアセ連邦 カリーナ族都と言う名に改めるとともに、ベシアセ連邦の傘下に降るという、滅苦茶な計画に参加されておられるだけでなく……
グマリハの村やトミシシゲの村を治めておられる、キュルコ様に対して、
グマリハの村とトミシシゲの村も、ベシアセ連邦の傘下に加われ。と言う、滅茶苦茶な通達を出されて来たからだ。
◇◇◇
しかも、キュルコ様が頭を悩ませているの、それだけではない。
表向きは、どの国にも属していない、ムルル自治区には、様々な国や部族の後ろ暗い組織の連中も出入りするのだが……
聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団が、魔法や魔術。呪術や全ての魔道具が使えなくなり、ジョブ補正が切れたと言う噂が流れた直後から、
ナヤクラース連邦の後ろ暗い組織や、我々と取り引きがある大森林地帯の部族達から、
撤退中の聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団が、略奪をしながら帰国しようとしている。って言う噂が流れている事を教わったのだ。
これ達の情報が、正しいのか否かは分からない。分からないのだが……
こんな噂が流れてしまったら……凍てつくような氷の大地を徒歩で移動する。と言う過酷な旅で疲弊している、聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団は……略奪に怯えた彼達の攻撃を受けて、壊滅的な被害が出るだろう。
しかも、彼達は城塞都市や砦と化した村を攻める攻城兵器などもっていない。と言うか……水や食糧すら足りていない筈だ。
準備に準備を重ねても、城塞都市や砦と化した村を攻め落とすには、3倍の兵力が必要と言われている。
聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団が、まともに戦える状態ならば、
彼達が帰国する為に通る、ナヤクラース連邦や大森林地帯の町や村の抵抗など、一笑に付すところなのだろうが、下手したら……
我が国(カリーナ帝国)の北部まで辿り着ける者は僅かしか居ないかもしれない。
そんなに中……もしも、キュルコ様のご実家の方々の計画が成功でもしようものなら……
聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団は壊滅し、我が国(カリーナ帝国)は……ベシアセ連邦 カリーナ族都へ派兵する兵団を捻出する事が出来ず……その存在を認めざる得なくなるかもしれない。
勿論、これは……1つの可能性。
ベシアセ連邦の最大部族のカンガ族や、彼達の元に亡命していたサンアン辺境伯。そして……彼女を信奉する、我が国(カリーナ帝国)の北方の反政府派の貴族達が、北都を落とせなかった場合……
キュルコ様も……反逆者の一族郎党の、お1人になられてしまわれる。
とはいえ……キュルコ様は、対外的には、お失くなりになられた、お方。
それに……ご実家のご意向よりも、キルシポ様のご意向を優先される平民の狗(キルシポの信奉者)としても、抜群の実績を持たれておられる。
加えて、このタイミングで、通信機器や情報機器が使えなくなっている。
だから、キュルコ様が、私情を挟まれずに、勝った方に付かれるのならば……その陣営からの粛正は無いだろう。
勿論、負けた方の陣営からの逆恨みから……暗殺者を差し向けられる可能性は高いだろうがな……
◇◇◇
「お嬢。
俺は……面の割れてねぇ、【狩人】のジョブ補正をうけている異世界(ムシュ イム アン キ)人のノイキとコリ。
それと……魔鷹を使った手紙のやり取りのノウハウを持っている、【調教師】のジョブ補正を受けている、タリアンのババア。
後……グハリマの村の美男・美女の【遊牧民】のジョブ補正を受けてる運び屋の若い夫婦のロジスとティクス。
こいつ達を連れて、聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団の様子や……北部の様子を探り、お嬢に生の情報を届けさせて貰うわ。」
「貴方が私の護衛として抜けるのは心細いけど……
そうしてくれると助かるわ。」
キュルコ様が、不安そうな顔をされながらも、ヒラロウさんの提案を受け入れられた。
■■■
「はぁ……退役まで、のらりくらりと過ごしたかったんだけどね……
他でもない、お嬢のピンチだ。
老体に鞭を打って、任務を全うさせて貰うよ。」
時刻は21時。
ヒラロウさんが提案した密偵の任務を聞かされたタリアンさんが苦笑いされながら、密偵の任務を承諾してくれた。
「将来を考えると……何時かは、薬(麻薬)の運び屋から足を洗わないといけないと思ってましたの。
ですから……今回は、良い機会を与えて頂いたと感謝しておりますわ。 」
人懐っこい笑顔で話すロジスの言葉に、ティクスが深く頷いている。
「良い給金を貰えるだけでなく……
任務中の衣食住は、そちら持ち。
断る理由が見当たらないです。」
「しかも、カリーナ帝国の北部に居る、アタシ達のクラスメート達の状況次第では、ここに呼んでも良い。なんて言われたら……行くしかないでしょ。
それに……アタシ達のクラスメートで聖戦に参加した、我が国(カリーナ帝国)の兵団に参加した奴達は、生け簀かない奴達ばかり。
たとえ、あいつ達が苦しんでるのを見たとしても……手を差し伸べずに、淡々と観察し続ける自信があるわ。」
ノイキとコリも、密偵の任務を快諾してくれた。
「皆さん。有り難うございます。
任務を行う上で最優先事項は、現地の情報を私に送る事です。
ですから、可能な限り危険を冒さずに……
身の安全を最優先に考えて行動してくださいね。」
「了解です。」×6
ヒラロウさん達が、キュルコ様の指示に短い返答を返した。




