共有された情報と雑談
「ディンエ殿から、【空の目】と言う、人工衛星的な魔道具への接続方法や、
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の国々に関する情報が届きましたぞ。」
レイヒト君が、そう言いながら、タブレットPCを動かし始めた。
時刻は20時。
空には、満天の星空が広がっていて、とても幻想的な光景だ。
とは言え……街灯の無い平原を照らすのには明るさが足らない。
僕達は、漆黒の闇に包まれている平原を移動するのは危険だと判断し、キャンピングカーで一夜を明かす事にしたのだ。
「この世界(アン ナブ キ シェア ラ)のネット環境的なの物を利用する事が出来るのは、皇族や王族。上級貴族や、一部のギルドの職員等の限られた人のみ。
そして、通信環境は……平成初期。って感じ。
後、乗り物に関しては、飛行機等の空を飛ぶ乗り物はない。
そんでもって、それ以外の乗り物は、第二次世界大戦直後ぐらいの技術水準で作られている。
でっ。それ以外の文明水準の殆んどは……産業革命前後。って、感じだったよね?」
「拙者の主観にはなりますが……そんな感じでございまするな。」
僕の確認に、レイヒト君が頷く。
「そこから考えると……【空の目】って言う魔道具は、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の感覚では、殆んど、場違いな遺物だね。
てか、【空の目】を利用して……カーナビ的な使い方や、◯oogle◯ース的な使い方をするのは……無理そうだね。」
「【空の目】を、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の宇宙空間に打ち上げたのは、ディンエ殿の前任の方々。つまり……神仏の代理人の方々です。
ディンエ殿が言うには、神仏の代理人の科学力は、拙者達の世界(ムシュ イム アン キ)の科学力をも凌駕するとの事でございまする。
ですから、携帯やPCと接続させたら、カーナビのような事や、Go●gle●ースのような使い方も出来るとの事でございまするよ。
それと……【空の目】は、
タテ・ヨコ・高さの合計が2メートルを越える人工物が、高度3000メートルを越える高さで飛行しているのを感知するやいなや、その人工物が飛行している周辺をレザー光線で攻撃する。という、恐ろしい人工物でもあるらしですぞ。
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に、空を飛ぶ乗り物が無いのは……これが原因のようでございまするな。」
レイヒト君が、ディンエさんから仕入れた、豆知識を披露してくれた。
◇◇◇
「てか……この世界(アン ナブ キ シェア ラ)も、ウチ達の世界(ムシュ イム アン キ)と同じ、地球なんやろ?
何で、北半球と南半球に大きな大陸が2つと……南極。っぽい大陸が1つなんやろか?
しかも……南極。ぽい大陸も……凍ってはらへん場所があるし……変やないか?」
プグナコちゃんが、小首を傾げながら、レイヒト君の立ち上げたタブレットPCを眺めている。
「時間軸が違うんじゃない?
大昔と今とでは、陸地の場所が違うらしいし……遠い未来も違うらしいよ。」
「その話、ドラ◯もんの映画の中でもあったね。
恐竜が居た時代、日本は海の底だったとか……
原始人の時代は……中国とかと陸続きだったとか……
そう言う話をしてるんだよね?」
「成る程。
過去と言うならば……陸地の面積が多すぎる気がするでございまするな。
てか……未来としても……やはり、陸地の面積が多すぎると思いまするな。」
嫁の言葉を聞いた、レイヒト君が眉間にシワを寄せながら、タブレットPCを眺めている。
「この世界(アン ナブ キ シェア ラ)は、モンスターとかも居るんだよね?
空を飛ぶ巨大な竜や、プテラノドンみたいな生き物も居るの?」
「居るみたいやで。
せやけど……それが、どないしたんや?」
プグナコちゃんが、小首を傾げながら質問をしてくる。
「プテラノドン等の翼竜が、空を飛べたのは……太古の地球の上空には、巨大な水蒸気層があったお陰で、地球の重力が軽かった。って言う説があるんだよ。
でっ。僕達の世界(ムシュ イム アン キ)の世界中にある、大洪水の神話は……その水蒸気層が壊れ、地球の上空にあった大量の水が降ってきた出来事を記録に残した物。って言う説があるんだよ。」
「出たよ。◯チャンネル話。
てか……たとえそうだとしても……調べようがないでしょ。」
僕の話を聞いた嫁が、タメ息をついている。
「調べられるかもよ。
地球上で虹が見られるようになったのは、地球の上空から水蒸気層が失くなってからだと言う説もあるんだ。
そんでもって、多くの神話に出てくる、神様が、これ以上、大洪水が起きない記しとして、人々に虹を与えた。って言う話の元ネタ。なんて言う人達も居るんだよ。」
「成る程。
でっ。サルクル殿は……
【空の目】が、飛行する人工物を許さないのは、地球の上空の水蒸気層を守る為。
そんでもって、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の大地の比率が異様に多いのは、地球の上空に水蒸気層がある為、地表の水の量が少ないから。
とか言う説でも唱えよう。と考えておられるのでございまするのかな?」
「うん。」
僕は、興味津々な顔で質問してくる、レイヒト君の言葉頷く。
「成る程ね。
それで……パパは、その水蒸気層の存在が、わたし達の今後と、どう関係してくると考えてるの?」
嫁が、興味津々な顔をしながら、質問をしてくる。
「とりあえず、豆知識が1つ増える。」
「はぁ……そっか。」
嫁は、僕を見ながら、タメ息をついていた。
◇◇◇
「なぁ……ウチ達が居る、北の大陸(ウグの大陸)と、凍ってはらへん方の南の大陸(クンの大陸)って……
なんや、テッペン禿げで、巨大な10円ハゲが右側?左側?兎に角……片方についてきました。って感じに見えへん?」
プグナコちゃんが、そう言いながら、ゲラゲラと笑い始めた。
「確かに、
外側の草原や凍ってる箇所が襟裾。
でっ。内側の山や森が髪の毛のあるところ。
そして……ど真ん中の砂漠地帯が……プププ。お禿げの部分。
そんでもって……西側が……巨大な十円ハゲ スポットだね。」
嫁が、プグナコちゃんの言葉に素早く反応する。
「北の大陸(ウグの大陸)の東西南の草原地帯にある、カリーナ帝国・イランツ カバー 帝国・神聖法王国。
どうやら、この3国が、世界征服を企む、ヤバい国らしいのでございまする。」
「マジメか。」
真剣な顔でタブレットPCを睨む、レイヒト君に、嫁が苦笑いしながら、ツッコミを入れる。
「それに……世界征服に興味が無かった、南の大陸(クンの大陸)の国々に【軍事・経済同盟】と言う概念を持ち込み、
南の大陸(クンの大陸)を裏から支配されておられると言う、拙者達の10年前に、カリーナ帝国に召還された方々の事も気になるでございまするな。」
「確かに。
だけど……わたしは、それ以上に、やりたい放題していた事で、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の人達に反感を持たれ、氷に閉ざされた大陸(シェグの大陸)に追いやられたと言う、ディンエさんの前任者達の事が気になるわね。
魔法や魔術。人によっては、わたし達みたいに異能が使える上に、わたし達の世界(ムシュ イム アン キ)以上の科学技術も持ってるんでしょ?
このまま、氷に閉ざされた大陸(シェグの大陸)で、大人しくしてるとは思えない。」
レイヒト君の話を聞いた嫁が、マジメ モードに切り替わった。
「でっ。パパは……どう考えてるの?」
嫁が、興味津々な顔で質問をしてくる。
◇◇◇
「この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の、あちこちを巡りながら、龍脈を正常化させる仕事を遂行するにあたって、訪れる国々の情勢を知る事は必要だとは思う。
だけど……
ディンエさん達から請け負った仕事を遂行する事を考えると……それ以上、踏み込むべきでは無いと思う。
分かりやすく言うならば、
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の龍脈が正常化した時に、ディンエさん達以外の人が、それに僕達が関わっていたのでは?と言う疑惑すら持たれないような、完璧な脇役生活を送りたいな。」
「とりあえず、サルクルさんが、滅茶苦茶、ドライな人や。ちゅう事だけは理解する事が出来たわ。」
僕の嫁への返答を聞いたプグナコちゃんが苦笑いしている。
「パパは、心を開いた人以外には、ミスター 薄情様なのよ。
わたしとしては、もう少し、人の心を持って貰いたい気もするけれど……人情に溢れた集団。ってのも、それは、それでマズイ気もする。
だから、理解しろ。とは言わないけれど……
パパの意見も、ちゃんと聞いてあげてね。」
嫁は、プグナコちゃんを見ながら、謎のフォローを入れてくれる。
「拙者は、サルクル殿のご意見に賛成でございまするな。
そして、欲を言えば、拙者を苛めた、元クラスメート達とは、永遠に関わりたくないでございまするな。」
レイヒト君が、そう言いながら、タブレットPCをジッと見つめていた。
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