【サイドストーリー】捕獲作戦③(レヤ視点)
「寒い。寒い。寒い。
直ぐに、荷台の上にテント張ったままにしている、トラックを小瓶から取り出すわね。」
「そうしてくれると助かる。
正直……手足の感覚が、殆んど無いんだよ。」
「そうでしょうね……
夜の運転と、アタシの風除け。ご苦労様。
テントの中に入ったら、暖かいスープを作るわ。」
「有り難う。助かるよ。」
イノカワ君が、そう言ながら、寒さでガタガタと震えている。
交代で仮眠を取りつつ、ほぼ、24時間、トライクを走らせながら、移動していたが……そろそろ、限界かもしれない。
唯一の救いは、マナの量が元に戻ってくれた。という事だが……
それでも半球睡眠が出来ないイノカワ君の消耗は……そろそろ、危険水域に入って来た気がする。
高位の冒険者でもあるアタシ達の通信機器が、何故だか、使えない。
その為、【空の目】を使った索敵や移動ルートの確認が出来ない事に対するストレスが……ボディーブローのように蓄積されているのも、アタシ達の消耗が、予定していたよりも遥かに激しい要因になっている。
■■■
【キュ・キュ・キュ・キュ・キュ・キュー】
アタシはトライクを止める。
「どうしたんだい?」
アタシが起こす前にイノカワ君が起きてきた。
時刻は、もうすぐ11時。
どう見ても……アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)トラックのように見える乗り物が、こっちに向かって来ている。
遮蔽物の無い礫砂漠のお陰で……早期発見が出来た事は有り難いが……
遮蔽物の無い礫砂漠に居るせいで……困った事に、身を隠す事が出来ない。
「明らかにこっちに向かって来てる感じだね……
たまたまなのかもしれないが……用心した方が良さそうだね。」
イノカワ君が、低い声で囁くように話す。
アタシの見ている方向を見て……
アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)トラックのように見える乗り物が、こっちに向かって来ている事に気がついてくれたらしい。
■■■
「やはり、君も……この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に来ていたか。
随分と……雰囲気が変わったね。
君は……僕達を始末しに来たのかな?
その実力も権利も……君にある事を認めよう。
だが、もし、君に慈悲の心があるのならば……
レヤ。この人だけは、どうか、苦しまないように殺してやって欲しい。」
イノカワ君は、そう言うと……
アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)トラックのように見える乗り物から降りてきた、
レイヒトと言う字を得た、かつてのクラスメートの拙者君と、彼の仲間達に土下座をした。
彼達の放つ殺気の強さから……イノカワ君やアタシごときでは、どうにもならない相手だと言う事は分かる。
本物のアサグは、一騎当千と言う言葉がチンケな物に聞こえるような……人外の化物。
カリーナ帝国の第1皇女であり、カリーナ帝国軍の総大将でもあるムシェンサン様や、
ギルドのカリーナ帝国支部の支部長のウルチヨさん仰ってた意味を……
アタシは、心と頭の両方で、ようやく理解する事が出来た気がした。
◇◇◇
「それは……自分は、どんな拷問を受けはっても仕方ない。って言わはってるんか?」
アタシ達と同じ年頃ぐらいの可愛らしい小柄な女の子が、氷のような冷たい目をしながら、イノカワ君に質問をする。
「待って下さい。
彼は……確かに、拙者君に酷い事をしました。
ですが……彼は……この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に来て変わったのです。
ですから、その……殺すにしても……ひぃぃぃ!」
アタシは……最後まで言いたい事が言えなかった。
アタシ達と同じ年頃ぐらいの可愛らしい小柄な女の子の恐ろしい殺気を受けて……上手く喋られなくなったのだ。
◇◇◇
「あのさぁ……
そいつ(イノカワ)の性根が変わりはったんと、
こいつ(レイヒト)を苛めてはった過去と……
なんの因果関係があるんや?
て言うか、苛め。ちゃうんはな。傍観も含めて苛めや。
せやから、自分達(イノカワ & レヤ)……主犯も傍観者もあらへん。
どっちも主犯や。
とは言え……苛めはイケん事や。なんて言う正論をかますつもりはあらへん。
何故なら、他人へ行った言動と……自分自身の言動に違いがある程、しょうもない事はあらへんからな。
言いたい事……分かるやんな?
自分達(イノカワ & レヤ)が、過去、こいつ(レイヒト)にしはった事と同じか、それ以上の事を……自分達(イノカワ & レヤ)にしても良え。ちゅう訳や。
因みに、それ以上の事をしても良え根拠は利息や。
身内以外に金を借りた場合……
借りた金額以上の金額を返さんといけんやろ?
自分達(イノカワ & レヤ)は……どういう理由があれ、こいつ(レイヒト)に無駄な時間を与えはった。
それを補填するんは金か……同じ仕打ちを受けるちゅう。現物で返すしかあらへんやろ?
そんでもって、苛めてくる奴達が身内としてカウントするアホはおらん。
せやから……こいつ(レイヒト)の苛めに対する、利息を取るんは……当然の権利や。」
アタシ達と同じ年頃ぐらいの可愛らしい小柄な女の子が、氷のような冷たい目をしながら……アタシ達を嬲り殺しにする正当性を説いてくる。
「まぁまぁ。
もし、わたしと……
契約魔法を使って、わたし達に不利益になるような言動を取らない。って言う誓いを立ててくれれば、
取り敢えず、二人とも殺すにしても……サクッと殺して差し上げるわよ。」
背の高い綺麗系のお姉さんが、笑みを浮かべながら、話に入ってくる。
「契約をさせて頂きます。
レヤ。君も……土下座をしながら頼んでくれ。」
「お願いします。」
アタシは、イノカワ君に言われるまま、背の高い綺麗系のお姉さんに土下座をする。
何か……裏があるような気がしないでもないが…… そもそも、アタシ達に選択権等ない。
この人達に嬲り殺しにされない為には……背の高い綺麗系のお姉さんからの提案に縋るしかないのだ。
◇◇◇
「そう。
『でわ。契約の義を執り行う。
汝達は、如何なる時も、我々に対して不利益となる言動を、未来永劫、永遠に取らない事を誓え。
そして、この誓いを破ろうとした場合……行動を起こす前に自害する。
汝達は、この契約を受け入る事を宣言しろ。』」
「僕は、如何なる時も、皆様に対して不利益となる言動を来永劫、永遠に取らない事を誓います。
また、この誓いを破ろうとした場合……行動を起こす前に自害する事を約束します。」
【パァァァァーン】
イノカワ君が、そう言うと、彼の左手の甲に、背の高い綺麗系のお姉さんとの契約が完了した印が浮き出てきた。
「貴女は……契約する気がないのかな?」
背の高い綺麗系のお姉さんが、氷のような冷たい目をしながら、アタシに質問をしてくる。
◇◇◇
「アタシは、如何なる時も、皆様に対して不利益となる言動を来永劫、永遠に取らない事を誓います。
また、この誓いを破ろうとした場合……行動を起こす前に自害する事を約束します。」
【パァァァァーン】
アタシの左手の甲にも、イノカワ君の左手の甲と同様、背の高い綺麗系のお姉さんとの契約が完了した印が浮き出てきた。
「パパ。終わったぞ。」
背の高い綺麗系のお姉さんが、チンチクリンのオッサンに、契約が完了した事を報告している。
「有り難う。
じゃあ……イノカワ君。レヤさん。
貴女達のトライクやトラック等を小瓶に封印して……僕達のキャンピングカーに乗って貰えないかな?
そんでもって、キャンピングカーの中で、僕の質問に、誠実に答えて欲しい。
勿論、無理強いはしない。
だけど……拒否したり、騙そうとした場合……
僕が飽きるまで、苛めて……苛めて……苛めて……苛めて……苛め抜く。
そのつもりで。」
チンチクリンのオッサンが、満面の笑みを浮かべながら、アタシとイノカワ君を見ている。
「もう。パパは……面白がって意地悪しないの。
でっ。イノカワ君。レヤさん。
わたし達は急いでる。
今すぐ、パパの言いつけを守ってくれなければ……わたし達に対して、不利益な行動を取ろうとしている。って見なさざる得ないだけど……
どうする?」
背の高い綺麗系のお姉さんが、氷のような冷たい目をしながら、アタシ達に質問をする。
「至急で対応します。」×2
アタシとイノカワ君が同時に返答を返す。
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