捕獲作戦①
「寒。」
時刻は5時。
今日も……昨日と同じ時間に目が覚めてしまった。
『サルクル殿。おはようございまする。
スティオ達は、氷の大地を移動しながら、この礫砂漠の北西を目指しているように見えるのでございまする。
今のところ、東側を目指しておる拙者達と、ニアミスをしそうには無いでございまする。
そうそう。
ヤスズミ殿達と連絡が取れたのでございまする。
スティオ達の事については、ハン族・チヤ族とも情報を共有したとの事でございまする。
そして、彼達が何か、仕掛けて来た場合……
3部族が合同で対処する事が決定したとの事でございまする。』
レイヒト君が、僕が寝ている間に起こった出来事を共有してくれる。
「了解。
つまり……部族としてでなく、マワタカ国として対応してくれる。って事だね。」
『その通りでございまする。』
レイヒト君の返答を聞く限り、僕の認識に間違いはないようだ。
◇◇◇
『それと……
イノカワと言う字を持ったアサグと、レヤと言う字を持った妖人が、既に、この礫砂漠の中央部から侵入し、
北側の1/3付近から、こちらの方角に向かって、1台のトライクに乗って移動しているのを見つけたのでございまする。
拙者の鑑定の結果、イノカワは…… 専良学園で、積極的に拙者を苛めていたグループのNo.1だった方のようなのでございまする。
レヤは、拙者の記憶にはない方なのでございまするが……
どうやら、彼女も、専良学園の元クラスメートだったようなのでございまする。
イノカワ・レヤと、スティオ達が同じような場所に居るのには……何か訳があるような気がするでございまする。
そんでもって、何故、イノカワとレヤが、スティオ達と敢えて別行動をなされておられるのかも、気になる点でございまするな。
勿論、この情報も、ディンエ殿や、ヤスズミ殿達と共有しておるでございまするぞ。』
レイヒト君の淡々と話す声が携帯から聞こえてくる。
◇◇◇
「スティオ達に捕まらずに、イノカワとレヤを捕まえる事は出来そう?」
『拙者達の戦力であれば、イノカワとレヤを捕まえるのは容易いかと思われまする。
ただ、スティオ達とニアミスしないように。となれば……
念の為、鍋パーティーは、暫く、封印した方が良さそうでございまするな。』
レイヒト君が申し訳なさそうな声で、僕の返答に答えてくれる。
『殆んどの人達が、通信機器が使えない以上、本人を捕まえて聞くしかないのよね……
鍋パーティーを延期して……イノカワとレヤを捕まえるしかなさそうね。 』
レイヒト君の話を聞いた嫁が苦渋の決断をする。
「個食鍋とレンチンご飯や袋麺で、それっぽい事が出来るんちゃう?
思ってはったんとは違うかもやけど……
暫くは、それで我慢するしかないやろな。」
『プグナコちゃん。
ナイス 妥協案。』
プグナコちゃんの話を聞いた嫁の嬉しそうな声が携帯から聞こえてくる。
■■■
「お鍋パーティーの延期は残念だけど……
社長やバンオさんの安全には変えられない。」
「だな。」
朝食を取りながらの朝のミーティングで、メアちゃんとルオ君に状況を話したところ、2人は、鍋パーティーの延期を快く了承してくれた。
「でっ。捕まえた後……どんなルートを取りはるつもりなんや?」
「危険かもだけど……
今のところ、イノカワをレヤを拉致したら、そのまま、ベシアセ連邦に向かうのがベターな選択のような気がする。
だけど、状況次第では……
一旦、ナヤクラース連邦に入って、1~2週間だけでも商売をした後、
再び、この礫砂漠に入って、ベシアセ連邦を目指した方が良いかもしれないと思う。」
「取り敢えず、現時点では、パパの中でベストな選択は無い。って事ね。」
プグナコちゃんへの返答を聞いた嫁が、ジッと僕を見つめてくる。
「うん。
十中八九、ナヤクラース連邦と【虹を見たい者達】の間に何らかしらの関係がある筈だ。
だから、一番、良いのは、ナヤクラース連邦に立ち入らない事なんだけど……
スティオ達と殺り合うよりかは、
ほとぼりが冷めるまで、ナヤクラース連邦に潜伏した方が、まっしな気がする。」
「成る程。
灯台もと暗し。って奴でございまするな。」
レイヒト君が、真剣な顔で頷いている。
「そう言う事。
でっ。確か……
マワタカ国のハン族の隊商の主要な取引先にナヤクラ連邦があったよね?
僕達は、ナヤクラース連邦の領土に入り、途中でUターンして、この礫砂漠に戻り、そこからベシアセ連邦を目指す。
そのルートで植物油を買ってくれそうな商会を紹介して貰って欲しいかな?
そんでもって、出来れば……
カリーナ帝国のジハリマの町みたいな壁外区がある町の壁外区に店を構えてる商会が良い。とも伝えて欲しいかな。
ただ……状況が状況だ。
紹介して貰った商会を、必ず訪れるとは言えない。って事も伝えていて欲しい。」
「了解でございまする。
つまり、サルクル殿は、ナヤクラース連邦領に入った形跡を、可能な限り残したくない。
ですが……
ナヤクラース連邦領で、不審者じゃないかと怪しまれた時に備えて、商売をする為に動いていた。という形跡も残しておきたい。
そう言う事でございまするな。」
「その通り。
話が早くて助かるよ。」
「では、その事を書いたメールを、ヤスズミ殿だけでなく……バンオ殿にも連名で送っておくでございまする。
バンオ殿ならば、拙者がウダウダ説明書きをしなくても、サルクル殿の意図を察して頂ける筈でございまする。」
「そうしてくれたら有り難い。」
「了解したでございまする。」
レイヒト君が嬉しそうな顔をしながら頷いてくれる。
「ほな。
ウチとサクモさんは、一秒でも早よう、イノカワとレヤの居はる場所に着けるよう、飛ばしまくらんといけんな。」
「だね。
一秒でも早く、イノカワとレヤ捕獲すれば、
それだけ、スティオ達から逃げる時間を稼げる。って事だもんね。」
プグナコちゃんの言葉に、嫁が静かに頷いていた。
■■■
「水炊きは……個食鍋。ってのになっても旨いな。
卵が無いのは寂しいけれど……レンチンご飯で雑炊風にしたアレンジも良い感じだぜ。」
「カップのおうどんと、鯖ほぐしご飯のセットも……凄く美味しいよ。」
ルオ君とメアちゃんが、美味しそうに夕飯を食べてくれている。
「寒い日は……鍋も良えけど、カレーもありやな。
レンチンご飯に、レトルトのルー。
手軽に作れるんもポイント高いわ。」
「ホットコーヒーに、熱々のハンバーガーとポテト。
身体が温めまるでございまするな。」
「スープ パスタも最高よ。
スープとパスタを一緒に食べられるから……食べるのが遅い、わたしも……皆のペースについていける。」
嫁達も、各々の食べたい物を堪能しているようだ。
因みに、僕は……
今日は、カップラーメンとコンビニの焼き飯のセットにした。
時刻は18時。
皆で、リア キャビンのダイネットに集まって夕食を取る。
「でっ。イノカワとレヤは、どんな感じや?」
「先程、トラックやテントやらを小瓶に封印され、トライクで移動を始めたでございまする。
それと……出発する前に、トライクに魔法燃料液を継ぎ足しておられるのも確認する事が出来たのでございまする。
何れぐらいの量の魔法燃料液を持たれておるのかは不明でございまするが……
夜を徹して移動されるようでございまするな。」
「さよか。
近づいて来てくれはるんは有り難い。
2倍のスピードで走るようなもんやからな。
てか……この寒い中、日が暮れてからも、トライクで移動しはるなんて……根性だけは認めてやらんといけんな。」
レイヒト君の返答を聞いたプグナコちゃんが、驚いた顔をしている。
「ですな。」
レイヒト君が、そう言いながら、タブレットPCをジッと見ていた。
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