事前準備と一抹の不安
「この砂漠を越えたところにカリーナ帝国軍が居るでございまする。
彼達が、この砂漠に入って来なさそうですが……
鉢合わせしないようにしないとでございまするな。」
時刻は19時。
夕食を食べながらのミーティングで、レイヒト君が新たな情報をくれる。
「どれぐらいの数なの?」
「今は、まだ、殆んど残っておりまする。
ただ……今朝からバイクやトライクを捨てて徒歩で行動を始めたのでございまする。
多分……バイクやトライクが燃料切れを起こしたのでございまするな。
それと……ここ暫く、彼達を観察して気がついたのでございまするが、
彼達が水や食糧等を封印した小瓶の中から物を取り出す時に、小瓶を割っているのでございまする。
これは……封印解除魔法等が使えない為の苦肉の策のようでございまするな。
ここから推測すると……
彼達はマジック ボックスも使えないかと思いまするな。
それと……彼達は、最短ルートで大森林地帯を目指しておられるように見受けられるのでございまするが……大森林地帯まで900キロ以上あるでございまする。
徒歩だと……最低でも15日は歩かないといけないと思いまする。
ですから……ここからが地獄の行軍になるのかと思われまするな。」
レイヒト君が、そう言いながら苦笑いしている。
「助けてあげたい気もするけど……
助けると目立つだろうしなぁ……
まぁ……自業自得な部分も多いから……
可哀想だけど、レイヒト君の言う通り、彼達と鉢合わせしないようにしましょう。」
「せやな。
流石に、目の前で助けを求めてきはったら……無視するわけにもいかんもんな。」
嫁の言葉にプグナコちゃんが頷く。
「殆んどの地域で、拙者達のような超越点のアサグ以外が、通信機器や情報機器にアクセスが出来ないのは、
ギルドや各国の通信機器や情報機器に忍び込んで、情報収集をしている身としては痛いでございまするな。」
レイヒト君が、苦笑いしながらタブレットPCを見ている。
「まぁ……航空機や航空兵器。ミサイル等が、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に持ち込まれたら、マジでマズイ事になるだろうし……
ディンエさんの決断が正しかった。って言えるように、僕達は……
僕達のやるべき事をやって、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)を開いた世界にするしかないんじゃないかな。」
「だよね……」・「せやな。」・「ですな。」
皆が真剣な顔で頷いてくれる。
【空の目】に撃ち落とされないための特別な術式の変更を、このタイミングでするべきだったのかは……正直なところ分からない。
だけど……【空の目】に撃ち落とされないための特別な術式の変更は必要な措置だ。
そして……どのタイミングで、【空の目】に撃ち落とされないための特別な術式の変更しても、それなりの被害は出た筈だ。
本当に【虹を見たい者達】は……イラン事をしでかしてくれたものだ。
◇◇◇
「サクモちゃん。
右肩に【結界魔法の術式】を刻んだタトゥーを入れてい欲しい。」
「急にどうした?」
嫁が不思議そうな顔をしながら質問をしてきた。
「ヤスズミさんのところのギルドで登録をしなかったのも……
ノチロウさんに、ベシアセ連邦での仕事を紹介して貰えるように誘導したのも……
まだ、僕達の存在をギルドに知られたくないからだ。
とはいえ……何時かはギルドに登録しないと、僕達は、怪しい一向になり、悪目立ちしてしまう。
だけど……ギルドに登録すれば、
【虹を見たい者達】等、僕達の事を良く思わない勢力に、僕達の存在を知られる可能性が高くなる。
だから、その前に……準備をしときたいんだ。」
「もう少し……具体的に話してくれない?」
嫁は、そう言いながら、苦笑いしている。
◇◇◇
「まず、コルとドマが、メアちゃんとルオ君をマンツーマンで護衛する。
そんでもって、戦闘が苦手なレイヒト君は、自分の身を守りつつ、コルとドマのサポートをする。
ここまではオッケーだよね。」
「うん。」×2・「問題ないでございまする。」・「そのつもりよ。」・「オッケーだぞ。」
嫁・プグナコちゃん・レイヒト君・コル・ドマが、僕の確認に頷いてくれる。
「でっ。 戦闘と言う意味では、プグナコちゃんが近接戦闘と中距離戦闘をメインで行う予定で、
サクモちゃんが、中距離戦闘と遠距離戦闘をメインで行う予定。
ここまではオッケーだよね。」
「うん。」×2・「問題ないでございまする。」・「えぇ。」・「オッケーだぞ。」
嫁・プグナコちゃん・レイヒト君・コル・ドマが、僕の確認に頷いてくれる。
「でっ。 僕は、左肩に入れている【温冷の術式】タトゥーを利用する事で、
戦闘と言う意味では、圧倒的に攻撃力が無い、僕の異能の弱点をカバーして、 近接戦闘・中距離戦闘・遠距離戦闘のオールラウンダーになり、
サクモちゃんとプグナコちゃんのサポートをする。
ここまではオッケーだよね。」
「うん。」×2・「問題ないでございまする。」・「えぇ。」・「オッケーだぞ。」
嫁・プグナコちゃん・レイヒト君・コル・ドマが、僕の確認に頷いてくれる。
「でっ。 右肩に【結界魔法の術式】を刻んだタトゥーを入れて貰うのは……その補強。
結界魔法は、敵の攻撃を防ぐ盾や壁。敵を捕まえる為の檻のように使えるだけでなく……
サイズや形を調整する事で剣や足場にもなる便利な魔術なんでしょ?
それに……敵を捕まえた結界の中の温度を【温冷の術式】で変化させて、熱中症にさせたり、凍死させたりするという攻撃も可能。
安心・安全。そんでもって、敵を一方的に叩きのめす。
これが、出来たら……滅茶苦茶、楽だからね。
つまり僕自身。そんでもって、チームとしての武力を上げる為にも、
僕の右肩に【結界魔法の術式】を刻んだタトゥーを入れてい欲しいんだよ。」
「了解。
怖がりのパパの気が変わらないよう、今すぐ始めようか。」
嫁が、そう言いながら、にこやかな笑みを浮かべている。
「せやね。
てか……楽しはる為に、 敵を捕まえた結界の中の温度を【温冷の術式】で変化させて、熱中症にしはったり、凍死させはったりしようとか……
ホンマ……サルクルさんは、考えはる事が鬼やね。」
「まぁ……それがパパよ。
パパの友達は……愛と勇気ではなく……
卑怯と自堕落だからね。」
嫁は、苦笑いしなが、プグナコちゃんを見ていた。
■■■
「パパ。 朝ごはんの時間よ。起きて。」
嫁が、僕の体を揺さぶる。
時刻は7時。
嫁に、右肩に【結界魔法の術式】を刻んだタトゥーを入れて貰った後……寝入ってしまったようだ。
「取り敢えず、右肩にも刻んだ【結界魔法の術式】は上手く定着してくれたようね。
左肩に刻んだ【温冷の術式】と同様……
何をしたいかをイメージしながら、マナを込めたら発動するわ。」
「有り難う。助かるよ。」
僕は、そう言いながら、嫁に頭を下げた。
◇◇◇
「でっ。状況は?」
「カリーナ帝国軍や神聖法王国が帰国する為に通る道沿いにある、大森林地帯の部族が治めている町や村や、ナヤクラース連邦の町や村で、柵や壁をチェックし始めたり、 武器の練習を始めたりしておられる様子が見ていとれるのでございまする。
それと……山や森。街道に居られる、狩人や石工。木こりや冒険者。運び屋や行商人達が……続々と町や村に戻って行く様子も見てとれるのでございまする。
ここからは、あくまでも、拙者の個人的な主観になるのでございまするが……
撤退してくるであろう、カリーナ帝国軍や神聖法王国軍の略奪に備えて、自衛を始めたのだと思われまするな。」
レイヒト君が、そう言いながら苦い顔をしている。
「カリーナ帝国軍や神聖法王国軍の人達の体内のマナは戻ったの?
それと……ジョブ補正は切れたままなの?」
「拙者の鑑定に誤りがなければ……
体内のマナは、まだ、空のままでございまするな。
それと……ジョブ補正の再接続は、
他者のジョブ補正の接続を紐付けたり、外したりする事が出来る、拙者のような超越点のアサグや、
ジョブ補正を接続する権限を与えられた【賢者】や【祈祷師きとうし】等のジョブ補正を受けた者の介在が必要でございまする。
ですから、たとえ体内のマナが元に戻ったとしても……
ジョブ補正を接続する権限を持った、誰かに、ジョブ補正を再接続して貰わない限り、
残念ながら、ジョブ補正は、切れたままでございまするな。」
レイヒト君が、そう言いながらタメ息をついている。
「成る程ね……
最悪の場合、大森林地帯の町や村の人達が、カリーナ帝国軍や神聖法王国軍の大軍を見て、パニックを起こして……
カリーナ帝国軍や神聖法王国軍の人達を虐殺する可能性もありそうだね。」
「ですな。」
レイヒト君は、そう言いながら、タブレットPCをジッと眺めていた。
評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。
頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。
宜しくお願いします。




