【サイドストーリー】マナが失くなった日(レヤ視点) /後日談(レヤ視点)
【グワン】・【グワン】・【グワン】
【グワン】・【グワン】・【グワン】
【グワン】・【グワン】・【グワン】
不意に、視界が歪んだ。
『貴方の体内のマナの量が規定値を下回りましたので、魔法や魔術や呪術の使える頻度が落ちます。
ご理解、下さいませ。』
この謎の声を聞くのも3回目だ。
一度目は、初めて、この世界(アン ナブ キ シェラ)に召還された時に、受けるジョブ補正を選ばされた時。
そして、2回目は……
何度か、イノカワ君と身体を重ねた後、妖人と言う存在に進化?した時だ。
だけど……今回は、前回までとは違う。
今回は、ステップ アップ的な話ではなく……その逆なのだから。
【キュ・キュ・キュ・キュ・キュー】
イノカワ君の操るトラックが、急カーブをしながら、隊列から大きく外れて行く。
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
先刻まで、アタシ達の居たであろう場所から、何度も爆発音が聞こえてくる。
「何があったの?」
「何れぐらいの場所なのかまでは分からないが……マナが失くなった。
そのせいで……乗り物の部品なんかも含めて、全ての魔道具が使えなくなったのと、
受けているジョブ補正の接続が切れたのが重なって……
事故を起こしたのだろうな。」
【キュ・キュ・キュ・キュ・キュー】
イノカワ君は、そう言いながら、華麗なハンドル捌きを見せながら、トラックを反転させていく。
目の前に映る光景は……イノカワ君が言った通り、大事故が起きていた。
それだけじゃない。
アタシ達の進んでいる方向の遥か先からも……遥か、後ろからも……沢山の黒煙が上がっている。
「イノカワ君は……よく、回避する事が出来たわね。」
「僕も……一応、アサグの端くれだったようだ。
とはいえ……
謎の声が言うには、肉体が触れていない場所へ放った、魔法や魔術や呪術は発動しないらしい。
事実、索敵魔法が全く使えない。だから……謎の声の言う声を信じる事にした。
でっ、君の方は、どうだい?
たとえ……魔法や魔術。呪術が全く使えなくなり、
ジョブ補正も受けられず、寿命も普通の人と同じようになっていたとしても……
それでも、君が天寿を全うするまで、僕が君を守り続ける事を誓う。
だから……安心して、真実を話して欲しい。」
イノカワ君は、そう言いながら、アタシをジッと見つめる。
「アタシは……
『貴方の体内のマナの量が規定値を下回りましたので、魔法や魔術や呪術の使える頻度が落ちます。 ご理解、下さいませ。』
って、謎の声に言われた。
『回路修復』
取り敢えず、これで、トラックは直った筈よ。」
【ドルン】
「フフン。流石は妖人。
君を守るどころか……君は僕の命の恩人になっちゃったね。」
イノカワ君は、トラックのエンジンを再始動させながら苦笑いしている。
◇◇◇
「取り敢えず……逃げちゃう?」
「そうしよう。
僕達が待ち望んだ、逃げ出す機会ってのは……今なんだろうからね。」
「じゃあ……方位磁石を見ながら、ひたすら南東を目指して、礫砂漠に入りましょう。
でっ。取り敢えず……マワタカ国と言う国を目指しましょう。」
「敢えて、ナヤクラース連邦領には入らないと。」
「その通り。
勿論、今後の事を考えたら……超大国である、ナヤクラース連邦で生活の基盤を作りたいわ。
だけど……この氷の大地から、いきなり、ナヤクラース連邦領に入れば……カリーナ帝国。もしくは……神聖法王国の脱走兵じゃないか?って疑われるわ。」
「そうだね。
って……実際、仕事を放棄した運び屋なんだけどね。
じゃあ……元の世界(ムシュ イム アン キ)から持ってきた物を除いて、足がつきそうな物も、全て捨てないといけないね。」
「えぇ。
元の世界(ムシュ イム アン キ)との繋がりだけは、持っておきたいもんね。
それと……
トレーラーに有る物の中で、足が付かなさそうな物は、小瓶にでも封印して持ち出して、路銀の足しにしましょう。」
「そうだね。
先立つ物がなければ……何も出来ないもんね。」
「その通り。
確認もすんだ事だし……そろそろ、行かない?」
「そうだね。」
イノカワ君は、アタシの言葉に頷くと、トラックを走らせ始めた。
◇◇◇
「スティオは……大丈夫だろうか……」
「さぁ……だけど……ここに居る、全員を救えない。
だから……トラックに乗って探し回れば……余計ないざこざに巻き込まれるわよ。」
「分かってるよ。
ただ……あいつとは、今は微妙な関係だけど……
それでも、元の世界(ムシュ イム アン キ)からの友人なんだ。」
「気持ちは分かるわ。
だけど、今、ここで逃げ出せる機会を失えば……」
「皆まで言わなくても分かってる。
僕達の安全が最優先。
そんでもって、出来る事と出来ない事の区別ぐらいついている。
ただ、それでも……あいつが、無事にカリーナ帝国に戻れるように祈ってやりたいんだ。
まぁ……自分に言い訳をする為の、ただの偽善なのかもしれないけど……
それでも……祈ってやりたいんだ。」
「それで、貴方の気持ちが安定するのなら……
別に良いんじゃないかしら?」
「有り難う。
じゃあ……飛ばすよ。
この現象を引き起こしたのが、敵(神聖法王国軍)ならば……
魔法や魔術。呪術や魔道具を失った僕達(カリーナ帝国軍)を殲滅する作業に入るだろうからね。」
「そうね。
てか……どのぐらいの範囲まで魔法や魔術。呪術や魔道具が使えなくなっているのかな?」
「さぁ……見当もつかないよ。
何せ、僕は……肉体が触れていない場所へ放った、魔法や魔術や呪術は発動しないらしいからね。
だから、索敵魔法が使えない。
つまり……周りの状況を把握する術がないんだよ。」
イノカワ君が、そう言いながら、苦笑いしている。
「そう言えば……そんな事、言ってたわね。」
アタシは、そう言いながら、走行距離を表示するメーターをメモる。
「何してるんだい?」
「走行距離をメモったの。
多分だけど……周りのマナが元に戻ったら、アタシ達の体内のマナが、再び、規定値を越える筈。
そしたら……また、謎の声が聞こえる筈。
でっ、謎の声が、何れぐらい走った後に聞こえるかで、
少なくとも、南東の方角と言う意味では、何れぐらいの範囲まで、マナが失われていたのかが分かるわ。」
「確かに。」
アタシの話を聞いたイノカワ君が、静かに頷く。
ーーーーーーー
【少し先の未来の話】
あの氷の大地で、マナが失くなった事件から1ヶ月がたった。
アタシ達以外で生き残った者は、500名にも満たなかったらしい。
その中に、シレルメ君・サパヨ先生・ナンコン先生が含まれているのかは不明だ。
後日、ギルド本部が派遣した調査団の結果では、
あの時、半径 1200キロメートルで、マナが消えたらしい。
それが原因で、該当する場所では、モンスターを含めた、全ての魔法や魔術や呪術。通信機器や乗り物を含めた、全ての魔道具が使えなくなるり、ジョブ補正の接続も切れたらしい。
ただ……アサグや妖人。そして、霊獣等の特別な獣に関しては、
ある程度の制限があったものの、異能や魔法や魔術や呪術が使え、ジョブ補正の接続も切れなかった。
また、通信機器や乗り物を含めた、全ての使えなくなった魔道具を修理したら、普通に使えたと言う報告も書かれていた。
正直な話。ギルドの下端の登録者に下りてくる情報等、たかが知れている。と思っていた。
だけど……あの事件を経験したアタシとイノカワ君には分かる。
伏せられている情報は有るかもしれないけど……
公開された情報に、アタシやイノカワ君が分かる範囲。と言う枕詞は付くもの……嘘は書かれていなかった。
兵団の総司令官のオモサダホカ様は、あの混乱の中、直ぐに、小瓶等に封印された魔道具は使用可能と言う事実を突き止められたらしい。
そんでもって、カリーナ帝国は、ギルド本部に多額の金銭を支払い、 ナヤクラース連邦や、大森林地帯の周辺国から、取り残された兵団への支援を受ける方向で話を進めようとしていたらしい。
ただ、あの事件が発生した翌日から2週間程、世界中で大規模な通信障害が起きた。
そのせいで、その話を進められなかったらしい。
それが災いし、
カリーナ帝国への帰路の8割の距離を、徒歩で帰国する事になった彼達に対して、
ナヤクラース連邦や、彼達が帰国する為に通る道沿いにある、大森林地帯の部族が治めている町や村は、
食糧や宿の提供を求めようとした彼達を略奪者だと勘違いをして攻撃した事も、
生き残った者が少ない原因の1つだと言われている。
また、その件に関して、
サイアン辺境伯ほど露骨な態度を示していなかったが、戦争に反対の姿勢を示していた北部の有力貴族達は、
カリーナ帝国軍の交渉部隊が、彼達が帰国する為に通る道沿いにある、大森林地帯の町や村へ、直接、赴き、
該当する町や村の人達に、彼達を救う為に協力して貰えるように交渉をする手間を惜しんだ事が、多くの兵士や冒険者。傭兵を失った原因だ。と言って、一斉に非難し始めたらしい。
もし、このまま、北部の有力貴族達が、カリーナ帝国の皇族達の政策を非難し続ければ、
カリーナ帝国の皇族達は、北部の有力貴族達に、サイアン辺境伯と同様の措置を取るのではないか?と言われている。
でっ。もし、そうなれば……
アタシと一緒に、元の世界(ムシュ イム アン キ)から、一緒に召還された友人達は、カリーナ帝国のあちこちに散らばっている友人達が、殺し合うような事になってしまうだろう。
だから、アタシは、カリーナ帝国の安寧を……遠い異国の地より、祈り続ける事にした。
評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。
頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。
宜しくお願いします。




