【サイドストーリー】奪還者達の明暗(フメグル視点)
「日が暮れたら、大金を稼ぎに行くぞ。
そうそう。今日の飯は、俺が作ってやる。
だから、お前達は、仕事の時間が来るまでの間、ゆっくりしといてくれ。」
時刻は11時。
ギャクコンは、そう言いながら、ニヤリと笑った。
俺達が居るのは、
ロンコン山脈と呼ばれる山脈を構成する、2つの山の山裾にある、広大な広さを持つ森の中だ。
ここから近くの町や村には、
最短ルートで、トラックやピックアップ トラック。バイクを24時間、走らせ続けたとしても……1週間以上はかかるらしい。
勿論、1週間以上も、睡眠を取らず、飲まず食わずでトラックやピックアップ トラックやバイクを走らせ続ける事など不可能だ。
なので、どう頑張っても……人里まで行くのには、
トラックやピックアップ トラック。バイクを走らせても、2週間以上はかかるだろうな。
◇◇◇
「珍しい事もあるもんだ。
それだけ、今回のニチワミの手柄は、大きかった。って事ね。」
「言えてる。
アタシ達の他に、この作戦に参加している、約100名の冒険者達の誰もが……気がつけなかったんだもんね。」
「ダラミ姉さんの錬金術がなかったら……
アタシの作戦は机上の空論に終わってたわ。
一番の大手柄は、ダラミ姉さんよ。」
「嬉しい事、言ってくれるじゃん。」
「可愛い奴め。」
「もう。胸は……揉まないで。」
ダラミ姉さん。コビヨ姉さん。ニチワミが、緊張感の欠片もなく、ワチャワチャしている。
まぁ……はしゃぐのも仕方の話だ。
川の向こうにある【虹を見たい者達】と言う謎の組織に占拠されたギルド本部が管理していたという施設の柵の内側に、6個ほど設置されている、強力な結界を張る魔道具のせいで……
総勢100名程の俺達の一団は、あの施設を奪還するどころか……柵の内側に入る事すら出来なかったのだ。
そんな中、ニチワミが、
俺達の目の前を流れる川の水を、あの施設の中に引き込んでいる事に気がついてくれた。
更に、あの施設の中に引き込んでいる水と一緒に入り込む為に、
ダラミ姉さんと協力しながら、有り合わせの材料で、着用者が作業している場所とは別の場所の呼吸に適する空気を、ホースを通して着用者に供給する方式の呼吸用保護具。送気マスクを作りあげたのだ。
でっ。今晩、俺達は、送気マスクを使い、
闇夜に紛れて、あの施設の柵の内側に潜り込み、強力な結界を張る魔道具を、片っ端から、ぶち壊していく。
それが終われば、俺達の仕事はお仕舞いだ。
その後の奪還等の仕事は、他のメンバー達が命をかけてやってくれる事になっている。
因みに、ギャクコンは、
ニチワミとダラミ姉さんのお陰で、割りの良い仕事になったと大喜びしている。
俺も……その意見に大賛成だ。
◇◇◇
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
【ブゥゥゥゥンー】・【ブゥゥゥゥンー】
「何?何? 蜂?」
イツマンヨが、真っ青な顔をしながら、森の中を見つめる。
「変だなぁ……索敵魔法には、何も……」
ジョウオ兄さんが、小首を傾げながら森の中を見ている。
「全員、送気マスクを着けろ!
今すぐ、あの施設の内側に行くが、絶対に結界を張る魔道具を壊すな!」
ギャクコンは、そう言うと……
物凄い勢いで、自分とイツマンヨの口に送気マスクを装置すると、川の中に飛び込んだ!
「何?何?何?」×3
女性陣が、困惑した顔で、その様子を見ている。
「ヤバ。そう言う事か!
お前達も、直ぐ、来いよ!」
ジョウオ兄さんが、そう言うと、送気マスクを装置し、川の中に飛び込んだ。
「兎に角……行くぞ!」
ヤカンサ兄さんが、そう言うと、送気マスクを装置して、川の中に飛び込む。
「訳が分からん。」
「そんなの後で、聞けば良いじゃん。
ほら、行くぞ!」
ダラミ姉さんが、そう言うと、送気マスクを装置して、川の中に飛び込む。
「うげ! ヤバ!
2人とも、ボーとしない!行くわよ!」
ニチワミが、青い顔をしながら、送気マスクを装置して、川の中に飛び込む。
「取り敢えず、行きましょうか。」
「ですね。」
俺は、苦笑いしながら話す、コビヨ姉さんの言葉に頷くと……
コビヨ姉さんと一緒に、送気マスクを着けて、川に飛び込んだ。
◇◇◇
「送気マスクのホースを川の中に沈めろ。
そんでもって、直ぐに、あの薮の中に移動しろ!」
川から上がると、ギャクコンのドスの聞いた声が、耳元で聞こえてくる。
「了解。」×2
俺とコビヨ姉さんは、荒ぶるギャクコンの勢いに圧倒され、
理由も聞けないまま、送気マスクのホースを川の中に沈め、ギャクコンが指差す薮の中に移動した。
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
【バチ・バチ・バチ・バチ・バチ】
帯びただしい数の30センチ位の茶色いバッタの群れが、結界にぶつかっては潰れていくのが見える。
「ひぃ。」
ニチワミが、川を見ながら、悲鳴をあげる。
「やっぱり、送気マスクのホースを辿って来くる奴が居たか。
あいつ達は、水の中が苦手なんだ。
念の為、送気マスクのホースを川の中に沈めてた甲斐があったな。」
ギャクコンが、ホッとした顔をしながら、幅は無いが、水深の深い、川の中を見ていた。
◇◇◇
「あれを……知ってるの?」
「雑食道造り飛蝗だよ。
あいつ達は、モンスターではなく、ただの虫なんだが……兎に角、数が多い。
しかも……肉も草も糞も木も、食える物を手当たり次第、食いながら移動する質の悪い虫なんだ。
普通は、数十年に一度、春先に、この辺りで群れを作り、この大陸(ウグの大陸(北半球の大陸))の、あちこちで、破壊の限りを尽くすんだが……
今年は……この辺りの気温が異様に暖かかった。
だから……春と間違えて孵化しちまったんだろうな。」
ギャクコンが、淡々とした口調で、イツマンヨの質問に答える。
「でっ。これから……どうする?
このまま、ここに居ても……」
イツマンヨが、不安げな顔をしながら、あの施設を見つめている。
「大丈夫だ。
この結界……外から入るのは難しいけど……中からは、簡単に出られる。
ただ、出た時に……気がつかれる恐れはあるけどね……」
ジョウオ兄さんが、そう言いながら、あの施設を見つめている。
「雑食道造り飛蝗の群れは、日が昇っている内は、常に移動している。
そんでもって……夜は固まって寝る。
だから、敵に見つからないように息を潜めろ。
そんでもって、隙が出来たら……
予備として買ったトライクを封印している小瓶から出して、二人一組で乗り込んで、
24時間体制で動きながら、ムルル自治区のクワキンの町を目指す。
そんでもって、そこで体制を整えて、トミシシゲの村
に向かう。」
ジョウオ兄さんの話を聞いた、ギャクコンが、
俺達に、次にやるべき事について、指示を出してくれる。
「クワキン町?
何で、ここから、一番近いナカカネの村や……ムハカルの町じゃないの?」
「この状況じゃ……俺達以外の仲間は全滅だ。
そんな中……俺達が、この施設の結界の内側に潜り込んで生き残った。って事を知ったら?
俺だったら……口封じの為に殺すだろな。」
ニチワミの質問に、ギャクコンが、あの施設を見つめながら、淡々とした口調で答える。
「成る程。
でっ。この施設の北東の方角で一番近い、クワキンの町を目指す事にしたんだな。」
「そうだ。
ナカカネの村や……ムハカルの町がある南西の方角には、絶対に近づかない方が良い。
本当は……西側に行きたいんだが……
雑食道造り飛蝗の移動ルート。って事を度外視しても、息を潜めて暮らすのに不可欠なツテがねぇからな。」
ジョウオ兄さんの話を聞いたギャクコンが、あの施設を見つめながら、淡々とした口調で答える。
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