蝗害と陰謀論
「パパ。起きて。
皆、お昼ご飯も食べちゃたよ。」
「嘘。もう、そんな時間。」
「嘘をついても仕方がないでしょ。」
嫁が、そう言いながら笑っている。
時刻は13時。
僕は昨晩の打ち合わせの後、仮眠を取らせて貰ったのだが……そのまま眠りこけていたらしい。
「状況は?」
「ここから600キロ離れた場所と、
900キロ離れた場所と、1200キロ離れた場所で、雑食道造り飛蝗の群れを確認する事が出来たわ。
因みに、この情報はギルドは、わたし達が【空の目】で見つけた情報ではなく、マワタカ国のギルドの支店から、ノチロウさん達に下りて来た情報を共有して貰って知った情報よ。
それと……【空の目】の映像を見る限りでは……
600キロ離れた場所で発生した雑食道造り飛蝗の群れは、こっちの方向へ、
900キロ離れた場所で発生した雑食道造り飛蝗の群れは、カリーナ帝国の方向へ、
1200キロ離れた場所で発生した雑食道造り飛蝗の群れは、イランツ カバー帝国の方向へ向けて移動し始めたわ。」
嫁が僕の質問に答えてくれる。
「そう。
カリーナ帝国軍と神聖法王国軍の動きは?」
「まだ、戦闘は行われてない。
レイヒト君が言うには……明日以降がXデーだろう。って。」
「成る程ね。
カリーナ帝国軍は、本国がヤバい。と言う理由で退却はしてないんだ。」
「みたいね。
レイヒト君が引っこ抜いた情報だと……
カリーナ帝国の上層部も、ギルドのカリーナ帝国支部の支部の職員達も、雑食道造り飛蝗が襲来しそうな事を知っているみたい。
それでも、神聖法王国との戦争を選んだ。
バカとしか言いようがない。」
嫁が不機嫌そうな顔をしながら、僕の疑問に答えてくれる。
「そうそう。
バンオさんとレイヒト君から聞いたんだけど、
プランターで作物を育てる提案。ノチロウさん達から大好評だったらしいわよ。
一階に家畜を乗せ、二階に居住空間と倉庫が有るトレーラーの二階部分なんだけど……
二階部分の倉庫のスペースに何も乗せていないトレーラーが、何台か、あるらしいの。
でっ。その空いているスペースで、プランターを使った作物を育ててみる。って言ってたらしいわよ。」
「そう。上手くいくと良いね。」
「だよね。」
嫁が笑顔で頷いていた。
◇◇◇
「そうそう。
レイヒト君が、ディンエさんに、定期報告で雑食道造り飛蝗の群れの事を伝えたところ、
ディンエさんから、1200キロ離れた場所には、【虹を見たい者達】が占拠した龍脈に異常を起させている施設の1つがある。って言う報告が来たらしいわよ。
って……そんな顔をしないの。
心配しなくても、メアちゃんとルオ君は寝かしつけているし、ヴェルさん達との通信も切ってるよ。」
嫁が、そう言いながら苦笑いしている。
「そう。
レイヒト君。聞こえてる?」
『聞こえているでございまするよ。』
「じゃあ……ディンエさんに、
【虹を見たい者達】が占拠した龍脈に異常を起させている、全ての施設の周辺の気温を調べるように言って。
僕の勘が正しければ……全ての場所で、蝗害等、何らかの災害が起こりやすい気温になっていると思うから……」
『ディンエ殿に連絡するにあたって、
サルクル殿が、その考えに至った理由を教えて欲しいでございまする。』
「多分……
【虹を見たい者達】が占拠した龍脈に異常を起させている、全ての施設は、蝗害を含む、様々な自然災害への対策が施されていると思う。
でっ。それが正しいと過程した場合……
ギルドからの依頼で奪回しに来た冒険者達を返り討ちにする為に、様々な自然災害を起こしてる。と言う可能性が考えられる。」
『了解でございまする。』
レイヒト君が、真剣な声で、短い返答を返してくれる。
「パパ。
ディンエさん達に、他に伝えて貰いたい事はある?」
「ないよ。」
「そう。
ヴェルさん達に聞かせられないネタは、これ以上ない。って事ね。
じゃあ……取り敢えず、通信グループを元に戻して、メアちゃんとルオ君を起こすわ。
それとレイヒト君。
ディンエさんからの返信があったら、取り敢えず、そのメールを転送して。
そんでもって、通話での打ち合わせが必要か否かについては……
ディンエさんからの返信の内容を見て決めましょう。」
「了解。」・『了解。』×2
嫁の指示に皆が、静かに頷いた。
■■■
『このペースで行けば、夕暮れまでに、マワタカ高原に入れそうよ。』
アルコさんの嬉しそうに話す声が携帯から聞こえてくる。
『マワタカ高原に入れば……4時間ぐらい(120キロ程)で、ノチロウさん達と合流する事が出来る。
雑食道造り飛蝗の群れが、マワタカ高原に到着しはるんは、早くても5日後。
カリーナ帝国軍と神聖法王国軍が戦闘に入りはるんも……早くても、明日の夜明け以降の予定なんやろ?
ギリギリ セーフ。って感じやね。』
『だね。
ヤスズミ族は、約1100の大所帯。
老人や子供が混ざってはいるとはいえ……
大人数で行動する事が出来るのは、心強い話だよ。』
プグナコちゃんと、ヴェルさんの嬉しそうに話す声が携帯から聞こえてくる。
時刻は15時。
先刻まで尾根を走っていた僕達の車は、再び、狭い林道に入った。
『この先の道は、雨雲よりも標高が高い尾根を走る道と違って、土砂降りの大雨の中を移動する事になるでございまする。
急ぎたい気持ちも分からなくは無いでございまするが……最悪、明日の夜明け前までに、ノチロウ殿達と合流すれば、オッケーでございまする。
ですから……そろそろ、スピードを抑えて欲しいところでございまする。』
『了解。』×3
苦笑いしながら話す、レイヒト君の言葉に、
プグナコちゃん・アルコさん・ヴェルさんが、短い返答を返した。
◇◇◇
【ゴロ・ゴロ・ゴロ】・【ピカ・ピカ・ピカ】
【ドォォォーン】
【ゴロ・ゴロ・ゴロ】・【ピカ・ピカ・ピカ】
【ドォォォーン】
【ゴロ・ゴロ・ゴロ】・【ピカ・ピカ・ピカ】
【ドォォォーン】
雷の音が鳴り響く。
【ガサガサ】・【ガサガサ】・【ガサガサ】
【ガサガサ】・【ガサガサ】・【ガサガサ】
【ガサガサ】・【ガサガサ】・【ガサガサ】
【ガサガサ】・【ガサガサ】・【ガサガサ】
【ガサガサ】・【ガサガサ】・【ガサガサ】
【ガサガサ】・【ガサガサ】・【ガサガサ】
林道を覆い隠すかのように生えている草木が窓にぶつかる音が絶え間なく聞こえる。
「お外の景色が楽しめない。」
「だよな。」
メアちゃんの呟きにルオ君が頷く。
『頼むから……何も出てこやんでや。』
プグナコちゃんがボソッと呟く声が携帯から聞こえてくる。
『後、1時間も走れば、マワタカ高原に入れるでございまするぞ。』
『さよか。
もう一踏ん張りするわ。』
レイヒト君の励ましに、プグナコちゃんが短い返答を返す。
『ノチロウ殿達は、早目に夕食を取り、夜間から移動を開始したいと言ってきてるでございまする。
取り急ぎ、了承したでございまするが……問題無かったでございまするよな?』
『問題無い。
24時間体制での移動は……何時もの事だ。』
レイヒト君の質問に、アルコさんが短い返答を返す。
『言えてる。』
『せやな。』
ヴェルさんの返答を聞いた、プグナコちゃんが苦笑いしながら相槌を打っている。
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