【サイドストーリー】カリーナ城に召還された者達(ニジコ視点)
「やっぱ、お前、マジ、スゲーわ!
一生、お前に、ついてくわ!」
「ねぇ……付き合わない?
いっぱい、気持ち良い事をしてあげるよ。」
「抜け駆けとか、ズル~い。
アタシは……お嫁さんにして欲しいかな。」
「いきなり、ハーレムかよ。
たく……何処に行っても、主人公様だな。」
皆が、イノカワと言う字を貰った、クラスメートの一人に向かって、口々に媚を売っている。
アタシ達は、アン ナブ キ シェア ラとか言う名前の異世界にある、カリーナ帝国と言う国に召還されたらしい。
そして、アタシ達を召還した人達は、カリーナ帝国軍の一員となり、アン ナブ キ シェア ラの統一を手伝って欲しい。と言った。
まるで……アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)で流行っている、異世界転移ものの、ラノベや漫画のような展開だな。
ありふれた展開と違うのは……カリーナ帝国軍への入隊を拒否し、一般人として生活する事を選択する権利を与えられた事と、
アタシ達のクラス(専良学園の2ー5組)を召還らしいのだが……かなりの人数の人達が、その召還に巻き込れてしまっている。って事ぐらいだ。
「申し訳ないのですが……私は一般人として生活させて貰います。」
1人のおっさんが、カリーナ帝国の人達に申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
「おい。おっさん。シケた事を言うな。
空気読めよ。空気をよ。」
「イノカワの言う通りだぞ。
俺達は、世界征服の為に召還されたんだぜ。」
「逃げるとか最低……」
空気を読まない、おっさんに……イノカワの言葉を皮切りに、クラスメート達が口々に悪態づく。
「そう虐めんでくれよ。
こちとら、君達と違って、30手前のおっさん。
しかも……妹や姪っ子も一緒なんだ。
保護者としては、家族を……兵士なんて言う危険な仕事につかせられないんだよ。」
空気の読まない、おっさんは苦笑いしながら、クラスメート達に頭を下げる。
◇◇◇
アタシは、この空気を読まない、おっさんを鑑定してみた。
その結果、オオカイと言う字を得たおっさんは、
【ジョブ マスター】なんて言う糞みたいな異能を選び、チートになり損ねたイノカワや、
異能すら貰えず、効果も威力も影響力も、異能よりも遥かに劣る、ジョブ補正を受けている奴達と違って、
【術式眼】と言う異能を得た特殊点のアサグと言う、ガチでチートな存在になっていた。
それなのに、この空気を読まない、おっさんは……
何故、イノカワ達なんかにヘコヘコしてるのだろうか……
それに比べて、カリーナ帝国の人達は賢い。
オオカイや、オオカイの姪っ子に偽装している猫魈と呼ばれる幻獣の一種である、ポチコの動向に怯えながら、イノカワ達とのやり取り見守っている。
「その家族。ってのに……俺も入れて貰えないっすか?」
「個人的には、チャラチャラした奴は好かんのだがな……
妹の番に認定されてしまってるみたいだし……仕方がない。家族に迎え入れてやろう。」
オオカイがタメ息をつきがら、サトテンと言う字を貰った、クラスメートの質問に答える。
「それは良かったっす。」
オオカイの返答を聞いたサトテンが、ホッとした顔をしている。
◇◇◇
「おいおい。てめぇ。何、オッサンと一緒にバックレようとしてんだよ。」
「この国の皇帝(カリーナ皇帝)は、戦わない選択を認めてくれてる。
だから、貴方達から文句を言われる筋合いはない。」
クール ビューティーの異名を持つ、
シオコと言う字を貰った、オオカイの妹でもある、クラスメートの1人が、淡々とした口調で話ながら、イノカワとサトテンの間に移動する。
「てめぇ……何様のつもりだ?
イノカワ……いや……イノカワさんは……この中の誰よりも強えぇんだぞ。
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)は、強えぇ奴が偉いらしいんじゃないか。
だ・か・ら。
黙ってイノカワさんの指示に従う。
これ以外の選択なんてねぇだろが。」
イノカワの腰巾着で、スティオと言う字を貰ったクラスメートが、シオコを一喝する。
「同じ量のマナを込めた場合……
ジョブ補正の魔法や魔術の影響力は、シングルの異能の1/20。ダブルの異能の1/10。
そして……イノカワさんとやらの魔法や魔術の影響力は……残念にゃがら、異能ではにゃく、ジョブ補正としてカウントされるみたいにゃよ。
これ以上は……言わにゃくても分かるよにゃ?」
ポチコが、そう言いながら、ニヤニヤした顔で、イノカワを見ている。
「スティオ。
この件については、この国の人達の判断に従うところだと思う。
そんでもって、調子に乗りすぎなのは……君の方だと思うけどね。」
スティオを止めるイノカワは、平静を装ってはいるものの……内心は、かなり焦ってるようだ。
そりゃあ……そうだろう。
イノカワは、ポチコに、最強の異能を得たのは勘違い。寧ろ……折角のチートになる機会を、ドブに捨ててしまってるぞ。って指摘されたのだからな。
「あの~。おじ様。
アタシも……御一緒させて貰えませんか?」
「はぁ……好きにしな。
他に着いてきたい奴は居るか?」
アタシの、一世一代の質問をオオカイは、アッサリと認めてくれただけでなく、
他の者にも、カリーナ帝国軍に入隊しない。と言う選択肢を与えると言う配慮まで見せる。
今のところ、オオカイさんについて行くという、アタシの判断は間違ってはいないように思える。
◇◇◇
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皆、オオカイさんの申し出を無視する。
彼達にとって、アタシ達を召還した、カリーナ皇帝を始めとしたカリーナ帝国の人々や、イノカワ達の顔色の方が重要なんだろうな。
「これ以上は時間の無駄だな。
じゃあ……俺達は、この城から出させて貰う。
俺達が1年間、暮らすのに必要な金を出してくれ。」
オオカイさんが、そう言いながら、カリーナ皇帝の側近らしき女に声をかける。
「畏まりました。
こちらに着いてきて下さい。」
カリーナ皇帝の側近らしき女は、淡々とした口調で、オオカイさんに返答を返す。
「じゃあな。ヘタレ。」
「空気の読めないバカは、野垂れ死ね!」
「ギャハハハ。
バカの考えは良く分からんわ。」
「頭が弱すぎて笑える。」
戦闘が得意なジョブ補正を受けられたクラスメート達を中心に、アタシ達に向かって罵声を浴びせかけてくる。
■■■
「いやぁ。
お金だけでなく……武器や装備一式。キャンピングカーや、トレーラー。先導用のバイクまで用意して頂き、誠に有り難うございます。」
オオカイさんは、人懐っこい笑顔とは裏腹に警戒しまくっている。
「ニジコ。主は超越点のアサグにゃろ?
主も鑑定して、妙な術式とか付与されていないか確認してくれにゃか?」
「もうしたけど……特になさそうよ。
ただ、用意してくれた、43Lサイズのキャリーケースぐらいの大きさの携帯用の通信機器とか言う魔道具は、次の目的地に着く前に、捨てた方が良い気がするわね。」
アタシは、ヒソヒソ声で話してかけてくる、ポチコに返答を返す。
「にゃる程。
貰った通信機器を使えば、妾達の動向を探れる。って言う事にゃか?」
「そう言う意図でくれたのかは分からない。
だけど……やろうと思えば出来る。って事よ。」
「にゃる程。
あやつ達は、どうも信用ならにゃい。
オオカイに後で話そうにゃ。」
アタシの意見にポチコが反応する。
悲しい事に、能天気で間抜けなクラスメート達よりも……ポチコとの方が話が合いそうだな。
◇◇◇
「だね。」
アタシは、ポチコの言葉に小さく頷く。
「妾が気ににゃるのは……
妾達よりも先に、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に召還されたと言う者達にゃね。
妾達の知る限り……
ここに居るメンバー以外で最強にゃのは、イノカワと言う、チートに成れる権利をドブに捨てた間抜けだけにゃけど……
妾達よりも先に召還された者達も……皆、イノカワ並みに頭が弱い。と考えるべきではにゃいにゃ。
オオカイが、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)で、どういった暮らしを望んでいるのかは分からにゃいが……
降りかかる可能性のある火の粉についての情報も掴んでおきたいところにゃ。」
「だよね……
取り敢えず、調べてみるよ。
ただ、アタシも……超越点のアサグとか言うチートな存在ではあるものの、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の事を何も知らない。
それなりに時間がかかるかもだけど……大目に見てね。」
「分かってるにゃ。
てか……それぐらい慎重に考えて貰わにゃいと、逆に心配になるにゃ。」
アタシの返答を聞いたポチコが、にこやかな笑みを浮かべている。
「それを聞いて安心したわ。」
「主とは、気が合いそうにゃね。」
「同じ事を考えていたわ。」
大笑いしながら話すポチコの言葉に、アタシは強く頷いた。
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