高濃度の瘴気の中の移動②
『思ってたより、雪……積もってへんかったな。』
携帯から、プグナコちゃんの弾んだ声が聞こえてくる。
時刻は12時。
僕達は、広場でチェーンを巻き、早目の昼食を済ませた。
いよいよ、雨が雪に変わっている場所に突入したのだが……生い茂っている木々が屋根のような役割を果たしてくれているのか、思ってた程、地面に雪が積もっていなかった。
『もし、スタックした場合……
乗り物乗り物と地面の間に結界魔法を張って板の代わりにすれば、簡単に抜け出せます。
ですから、スタックしても慌てないで下さいね。』
バンオさんが、通信機器を使って、有益な情報を共有してくれる。
◇◇◇
『それよりも……寒さがエグいわね。
あの広場で、厚着をしておいて正解だったわ。』
アルコさんの苦笑いしながら話す声が携帯から聞こえてくる。
「コル。ドマ。
冬眠モードになってないよね?」
「寝床(取っ手付きのプラスチック ケース)の中に入れてくれている、フェイス タオルにカイロを包んで貰ったから、ヌクヌクだぞ。」
「バンク ベッドの暖房も、ちゃんと稼働してるわ。
メアとルオは、どう? 寒くない?」
コルが、気を聞かせて、メアちゃんとルオ君にも質問をしてくれる。
「毛布にくるまっとけば、問題無いぞ。」
「同じく。
もっと寒くなったら……窓のカーテンを閉める。
だけど、今は、この幻想的な雪景色を楽しみたいな。」
ルオ君とメアちゃんが、自分達の状況を報告してくれる。
今のところ、コル達は問題無い。との事なので、一安心だ。
「それは、良かった。
ヤバい時は、直ぐに言うんだよ。」
「了解。」×4
嫁の指示に、二人と二匹が、元気良く答える。
■■■
「まるで……時が止まった世界にでも、紛れ込んでしまったみたいだね。」
「時々、出てくる、季節感が、おかしい格好をした幽霊だと思われる奴達が……その幻想的な景色を台無しにしてくれているけどな。」
うっとりとした声で話すメアちゃんに、ルオ君がツッコミを入れる。
「もう。ルオ……それを言わないの。」
「わりぃ。わりぃ。」
メアちゃんに抗議されたルオ君が、笑いながら謝っている。
時刻は16時。
雪の中の行軍は、怖いぐらい順調だ。
『この先も、雪が降り続けておりまするぞ。
可能であれば……サクモ殿、ベアゾウ殿、バンオ殿には、夜を徹して走って貰いたいところでございまするな。』
『バンオは、熟睡している。
日が暮れる頃には、体力も回復している筈だよ。』
『ベアゾウも、ちゃんと寝てるから大丈夫そうよ。』
「わたしも、ちゃんと半球睡眠しながら休息を取ってるから、夜のドライブは問題無いよ。」
申し訳なさそうに話す、レイヒト君の提案に、嫁達が笑いながら返答を返す。
◇◇◇
『確実に夜は幽霊やゾンビが出るにゃね。
車を走らせてくれる方が、有り難いにゃ。』
『じゃな。
儂は、足止めされて囲まれないように、進路を確保する事を最優先に考えないといけないのう。』
『前は、頼むにゃよ。
まぁ……サクモさん達からの反撃を恐れて、今までと同じように攻撃をしてこにゃいとは思うにゃが……
妾も、何時も以上に気合いを入れて、左右から来るであろう敵に睨みを利かせておくにゃ。』
『じゃな。
何時もより気合いを入れて、儂達のやるべき仕事をこなしていこう。』
『だにゃ。』
アーテルとアルブスの気合いの入り方が変わった。
雪さえ降ってなければ、外は、時が止まった世界だと錯覚するぐらい静かだ。
この静けさが、せめて……ヤススミ族と合流するまでの間だけでも続いて欲しいものだな。
■■■
『そろそろ、出るぞ。
準備が出来次第、報告をくれ。』
時刻は18時。
夕食を終え、アルコさんから、先導役を引き継いだ、ベアゾウさんの指示が携帯から聞こえてくる。
「疲れた。少し寝させて貰うわ。」
プグナコちゃんは、そう言うと、ベッド モードになっているリア キャビンの座椅子に横になった。
『この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に来て、初めての雪道ね。
何時もより、気合いを入れて運転しないといけないわね。』
嫁の呟きが携帯から聞こえてくる。
「雪が車やトラックのライトに照らされて綺麗だね。」
「あぁ。この光景は……一生、忘れられないだろうな。」
メアちゃんと、ルオ君が興奮しながら話してる。
『パパ。
わたし達が、この前、買った。PCとプリンター。って……わたし達の車に積んで帰ったよね?』
「うん。
車の封印を解いたら、何時でも出せるよ。」
『そう。
じゃあ……携帯で写真を撮っとこ。
写真が出来たら、メアちゃんとルオ君にもあげるよ。』
「やった。」×2
嫁の話を聞いた、メアちゃんとルオ君が、大喜びしていた。
■■■
『ナヤクラース連邦が放棄した土地を移動中のカリーナ帝国の大軍と、神聖法王国の大軍なのでございまするが……
今の行軍ペースと進路を維持されると過程した場合……今週中には対峙する事になりそうでございまするぞ。』
時刻は18時半。
レイヒト君は、僕達の行軍がスムーズに流れ始めたのを見計らって、【空の目】から得た情報を共有してくれる。
『いよいよですかぁ……
両国とも全軍を出しているとは思えませんが……
レイヒトさんからの情報を聞く限り、両国とも、かなりの大軍を、この戦に投入なされているようですな。
となると……この戦の勝敗は、
今後のウグの大陸(北の大陸)のパワーバランスに大きな影響をもたらす事になりそうですな。』
『まるで、政治屋にでもなったみたいな発言だな。』
バンオさんの感想を聞いたベアゾウさんが大笑いしている。
『まさか。
商売人としての感想ですよ。
イランツ カバー帝国の動き次第では……この戦で勝った方が、ウグの大陸(北の大陸)の盟主となるべく、大森林地帯の国々に対して、侵略戦争を始めるでしょうな。
それに対して、負けた方の国は……イランツ カバー帝国の動きを見ながら、勝った方の国が、ウグの大陸(北の大陸)の盟主となるのを阻止する為に、
同じ目的を持つであろう、大森林地帯の国々と、軍事同盟関係を結ぼうとすると思われるます。
もし、私の勘が当たったとしたら……
ヤススミ族は商売相手を代えたり、仲介する商品の品目を代えたりしないといけなくなる可能性があるのです。
私のしがない頭脳では、具体的に、どのような変化が出るかまで予測する事は出来ません。
ですが、大金を動かすような商売をする場合……
常に、政治屋のような目線で世界情勢を見ながら適切な行動を撮り続けないと、どこかで大損を出してしまう。と言う事は、経験則として知っています。』
『へぇ~。
商人や行商人。ってのは……俺が思ってた以上に頭を使わないといけない仕事なんだな。
恥ずかしい話……今の今まで、全く知らなかったわ。
そりゃ……ヴェルが……冒険者を引退して、いきなり店を出しても……上手くいかなかった訳だ。』
バンオさんの話を聞いた、ベアゾウさんの笑いながら話す声が携帯から聞こえてくる。
『バンオの言ってるような事を考えている商売人は、
シリソク商会のような、領主様さえ一目を置くような大商会の経営者や幹部。
それに……国を跨いだ商売で大金を動かす隊商の経営者や幹部や、
隊商と遜色のないような金額を動かすような商売もする遊牧民の部族長や側近ぐらいだよ。
それ以下の規模の商人や行商人で、
バンオの言っているような事を考えながら商売をしている者なんて……基本、居ないと思うわよ。』
ヴェルさんの苦笑いしながら話す声が携帯から聞こえてくる。
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