異常気象と陰謀の尻尾①
『グマリハの村が犯罪組織の巣窟じゃねぇ。となると……次の行き先が困るな。
ウルチヨに動向を環視されている。となると……
奴隷の売買を禁止しているカバパ連邦に行く手前、奴隷商人の村には寄れねぇ。
勿論、盗賊団のアジトになってる村なんてもっての他だ。
かと言って……国外追放の刑に処された者達が、流れ着いた安住の地には行きたくねぇ。
そう言う村には、冤罪を受けた者や政争で負けた者も多いから、巻き込みたくねぇ。って言う理由もあるが……
その前に、そう村は、自分達の食い扶持ですらままならず、宿屋なんてねぇ。つう噂だからな。』
ベアゾウさんの声が携帯から聞こえてくる。
『だよね……
そろそろ、村の中で、ゆっくりと寝たい。
だけど……次が思いつかない。』
『本当そう。』
ベアゾウさんの言葉に、アルコさんとヴェルさんが頷く。
『ガパパ連邦とは逆方向になりますが……
マワタカ国を目指すのはどうでしょうか。
複数の部族の長の合議制。と言う以外はガパパ連邦と似たような政治形態ですし……
国民の殆んどが、行商人か遊牧民の国の為、町や村は存在しません。』
バンオさんの淡々と話す声が、携帯から聞こえてくる。
『ごめん。
町も村も無いのに……どうやって暮らしてはるんや?』
『遊牧を生業にする、部族の本隊は、
村長一家の乗る指揮車を中心に、護衛のバイク部隊に守られながら、
大型のトラックに、二階建てのトレーラーを牽きながら、部族単位で移動生活をしているんらしいです。
因みに、一階の殆んどは家畜小屋で、二階は住居や倉庫になっているらしいです。
後……少数ですが、ヴェルの店のような工房型のトレーラーを牽いているトラックもあるらしいです。
それと……周辺の町や村。他部族と交易品や肉や卵。乳製品等を売り、穀物や野菜等の食料品や刃物や服等の生活必需品を購入する行商班と、
遊牧のルートを大きく外れて、大国に買い付けに行く隊商班が居ます。
この2つの班員は、本隊から選抜された、大人だけで構成された部隊です。』
プグナコちゃんの質問にバンオさんが丁寧に答えてくれる。
「成る程ね。
じゃあ……わたし達が、かける迷惑も最小限に抑えられそうね。」
『サクモ殿。それだけじゃないでございまする。
マワタカ国は、ギルドが認めた、れっきとした国でございまする。
拙者達を追って来る者が、建前上、個人的な理由で。と言うのならば、追跡を続行なされるのでございましょうが……カリーナ帝国やギルドと言う組織としては拙者達を追う事を断念せざる負えない筈でございまするぞ。』
レイヒト君の嬉しそうに話す声が携帯から聞こえくる。
◇◇◇
「多分だけど……グマリハの村の人達は、麻酔薬を麻薬として使っている事を知ってると思ってる。
そんでもって、彼達側の目線に立てば、そう言った使い方をする人の自己責任だと思う。
だけど……痛覚や眠気を消して、ハイテンションにしてくれる薬だと騙されて売られ、知らず知らずの内に麻薬中毒者になってしまった人や、その家族からすれば、彼達も悪人の一味。
グマリハの村の麻酔薬で助かる人が沢山、増えると思う。
だけど……グマリハの村の麻薬のせいで人生を狂わせる人も沢山、出る。
つまり、グマリハの村とは……善。と言うよりかは、必要悪。
だから、速やかに立ち去る事には賛成だけど、訪れた事に罪悪感を感じる必要も無いと思う。」
『サルクルさんは、ドライだねぇ。
言いたい事は分かる。だけど……その理屈だと……
世の中の、かなりの数の争い事が、
正義と悪の戦いではなく……異なる正義と正義のぶつかり合い。って事になってしまわないかい?』
アルコさんが、苦笑いしながら質問をしてくる。
「そうなるね。
とは言うものの……相手の都合まで考える余裕が無い時の方が多い。
だから……自分達の都合で他者から不利益を被ったり、他者に不利益を与えてしまう。
まぁ……広い目で見れば、回り回って、お互い様。
悲しいけど、これが現実。
勿論、その理屈にかまけて、何でもかんでも逆ギレするつもりはない。
だけど……他者に与えた不利益に対して、何の補填も出来ないのであれば……その罪を背負って生きていく他ない。
そんでもって、それは……特別な事じゃない。
人間以外の生き物を含めて、皆、その運命から逃れられない。
偏った考えかもしれないし、
将来、違う意見になるかもしれない。
だけど……現時点で、僕は、そう思ってる。」
『ハハ。
面白い考え方だね。
大局的に見れば、そうなのかもしれないけど……
そんなドライに割り切れないわ。』
アルコさんの大笑いする声が携帯から聞こえてくる。
「パパは、基本、そんな奴よ。
人の心で接するのは……わたしと家族。そして……パパか、わたしが友人と認めた人だけなのよ。」
嫁が僕を得意気な顔で見ながら話している。
■■■
『今日は、ここで夜営する。
ただし、瘴気が出てきたり、モンスターの気配があれば、直ぐに移動を始めたい。
レイヒト君。ドマ。コル。アルブス。アーテル。すまんが、そのつもりで見張りを頼む。』
『了解。』×5
ベアゾウさんの指示に、レイヒト君。ドマ。コル。アルブス。アーテルが、短い返答を返す。
時刻は18時。
急遽、マワタカ国を目指す事になった僕達は、メンバーの疲労を考えて、林道に作られた休憩場で夜営をする事にしたのだ。
「拙者が運転する事が出来れば、サルクル殿も横になって眠れたでございまするな。
申し訳なく思っているでございまする。」
レイヒト君が、そう言いながら、頭を下げてくる。
「気にしなくても良いよ。」
「痛みいるでございまする。」
僕の返答を聞いたレイヒト君がホッとした顔をしている。
因みに、嫁とプグナコちゃんは、早目の夕食を終えて、ベッド モードにしたリア キャビンで、既に爆睡中だ。
既に森の中は、漆黒の闇に包まれている。
室内灯を灯していなければ、何も見えなくなるのだろうな。
◇◇◇
「たった今、ギルド本部の上層部から、ウルチヨを含む、超大国を管轄されておられるギルドの支部長達に緊急連絡が入ったでございまする。
その内容は……ディンエ殿から聞いていた龍脈に異常を起させている一部の施設を【虹を見たい者達】と言う武装勢力が占拠したとの事でございまする。
因みに、【虹を見たい者達】とは、
30年程前に拙者達の世界(ムシュ イム アン キ)から召還された、一部の方々が中心となって立ち上げられた組織のようでございまする。
でっ。彼達が仲違いした理由は……龍脈に異常を起こさせる強度の問題のようでございまする。
ギルド本部の上層部は、ウグの大陸(北半球の大陸)の、あちこちで龍脈に異常を起こさせる事で異常気象が頻繁する可能性を考え、
その対策として、龍脈に異常を起こさせる強度を下げるべきだとお考えだったようなのでございまするが……
【虹を見たい者達】は、その強度を更に上げるべきだと言う考えのようなのでございまする。
そして、虹を見たい者達】と言う武装勢力が占拠した、ディンエ殿から聞いていた龍脈に異常を起させている一部の施設では、龍脈に異常を起こさせる強度が上がっているらしいのでございまする。
そんでもって、その事が原因で……
ウグの大陸(北半球の大陸)の、あちこちで異常気象が起こり始めたようなのでございまする。」
レイヒト君がヒソヒソ声で情報を共有してくれる。
「その情報、ディンエさんやサスサイに報告した?」
「今、報告書を作っている最中でございまする。
本当に……取れたてホヤホヤの情報なのでございまする。」
レイヒト君が、そう言いながら、タブレットPCを慌ただしく操作している。
「それが終わったら、【虹を見たい者達】の詳細な情報をギルド本部から引っこ抜けない?」
「平行してやってはいるのでございまするが……
ギルド本部もウルチヨも、情報機器に彼達の字の情報すら残していないようでございまする。
ですから、ウルチヨ以外のギルド本部から連絡を受けた方々の情報機器の中で、盗み見する事が出来なかった、ナヤクラース連邦・チャア帝国・メアマ帝国のギルドの情報機器を除く、全ての情報を確認してみたのでございまするが……
今のところ、有益な情報を見つけられていないのでございまする。」
レイヒト君が悔しそうな顔をしながら、僕の質問に答えてくれる。
「成る程ね……
多分……ディンエさんが僕達を雇った理由は、そこにあるのかもしれないね。」
「どういう意味でございまするか?」
レイヒト君が興味津々な顔で質問をしてくる。
「最重要機密を情報機器に残さずに、関係者の頭の中で管理して、引き継ぎは口頭のみでしている。って事だよ。
そうすれば……離れたところから、情報を盗み見されるような事は起こらないからね。」
「成る程。
敢えて、便利な道具を利用しない事で、情報の流出を防いでおられる。
サルクル殿は、そう考えておられるのでございまするのですな。」
「その通り。」
僕は、レイヒト君の言葉に頷いた。
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