グマリハの村
『石の城壁で出来たジハリマの町の城壁と違うて、グマリハの村の城壁は木の柵やん。
山から、そんなに距離も離れてへんし……モンスターとか襲って来はったら……ヤバいんちゃうんか?』
プグナコちゃんの声が携帯から聞こえてくる。
僕達の乗る車は、険しい山道から平原に変わってから、30分も走っていない。
未舗装の平原の道を時速20キロで移動していると仮定した場合……山から10キロ程度しか離れていない事になる。
『石で出来た城壁は……木の柵で出来た城壁よりも安全性は高いが、メンテナンスに金も人手もかかる。
だから……村と呼ばれる場所は、大体が、こんな感じだよ。』
プグナコちゃんの言葉を聞いたベアゾウさんの苦笑いしながら話す声が携帯から聞こえてくる。
■■■
「思ってたのと違う。
めっさ、平和やん。」
プグナコちゃんが目を丸くしながら辺りを見回している。
僕達は、グマリハの村の中に居る。
グマリハの村も、ジハリマの町と同様、城壁の中では基本、徒歩移動になる。
それと、グマリハの村にも、ジハリマの町と同様、城壁の外に広い駐車場が完備されていたのだが……
ジハリマの町の中に入った時と同様、車を盗まれるリスクを考えて、
敢えて駐車場を利用せず、自分達の乗り物を小瓶に封印する事にした。
「そりゃ……モサクさんか、アタシ達の乗り物を含めて、ササッと小瓶に封印してしまったからだよ。
特にアタシの乗り物なんて……【賢者】のジョブ補正を受けているアルコですら、出来るか否か、ギリギリのところだからね。
サクモさんは、それを、3回もしたのに、ケロッとした顔をしてるんだ。
ヤバい奴が来たな。って……ビビる気持ちも分からんでもないさね。」
ヴェルさんが、そう言いながら大笑いしている。
「マジか……悪目立ちしてる?」
「良いんじゃない。
無駄に絡まれるよりかは、はるかにマッシさね。
それよりも……サッサと服屋を見つけて、レイヒト君の服を買っちゃおうか。」
アルコさんが、そう言いながら大笑いしている。
因みに、レイヒト君の身体の原状を子供の頃に戻している。
子供の姿に戻ったレイヒト君は、ルオ君の服を借りている。
「念の為に、女の子用の子供服も買っとこう。」
「そうね。備えあれば憂い無し。って言うものね。」
僕の言葉に嫁が頷く。
◇◇◇
【カラン・コロン】
「いらっしゃいませ。」
店の扉を開けると、若い女の人が笑顔を振り撒きならが出迎えてくれた。
「この子達の普段着と寝間着を数着づつ、見繕って欲しいのだけど……」
「畏まりました。
ですが……田舎の村ですので、在庫は、そんなにありません。
とはいえ、布は、それなりにあります。
数日、頂ければ、仕立てさせて貰います。
ですから、その時は、お気軽にご相談くださいませ。」
若い女の人は、そう言うと、店の奥に引っ込んでいった。
「見繕ってくれるんじゃないんかい。」
プグナコちゃんが、驚いた顔をしながら、すかさず、ツッコミを入れる。
「失礼。
バックヤードにある、在庫も全て持ってまいりました。
店にあるものは、これで全部です。
では、早速、見繕って差し上げますね。」
若い女の人が、そう言いながら、満面の笑みを浮かべていた。
◇◇◇
「沢山の、お買い上げ、有り難うございました!
これからも、ご贔屓にしてくださいませ!」
若い女の人が店の外にまで出て、深々と頭を下げてくれた。
「メアやルオの服まで買って貰って、本当に有り難うございます。」
バンオさんが、そう言いながら頭を下げてきた。
「女の子用の子供服も欲しかったからね。
メアちゃんの試着代として受け取ってくれたら良いよ。」
嫁が、にこやかな笑みを浮かべながら、バンオさんに返答を返す。
「あの店員さん。
アタシ達が悪意の無い訪問者だと言う事を周囲に知らせてくれたみたいだね。
お陰で、アタシ達への他の村人からの警戒が一気に解かれたわ。」
アルコさんが、ホッとした顔をしてる。
「あの店員。ジハリマの町ならば、中ランクの冒険者と同程度の実力はあったな。
そんな人間が、良心的な服屋の店員をしてるとは……
流石は、弱肉強食の無法地帯。恐れ入ったわ。」
「おい。
その言い方だと、まるで、アタシが……良心的では無い経営をしてるみたいじゃないか。」
ベアゾウさんの言葉を聞いたヴェルさんが、不服そうな顔をしながら睨んでいる。
「悪りぃ。
そう言うつもりじゃなかったんだがな。」
「冗談だよ。」
頭を掻きながら謝るベアゾウさんを見ながら、ヴェルさんが大笑いしている。
「では、手を話して頂いても問題無いでございまするな。」
「アカン。
油断大敵。ウチ達の、おデートは続行や。」
プグナコちゃんに手を引かれて、恥ずかしそうな顔をしながら話す、レイヒト君の提案を、プグナコちゃんが一蹴する。
因みに、ルオ君にはアーテルとドマが、メアちゃんにはアルブスとコルが、護衛についてくれている。
「子供の姿に身をやつしたとはいえ……
拙者のようなヲタクには、プグナコ殿のようなリアルの女子との手繋ぎデートなど……刺激が強すぎるでございまするよ。」
「さよか。
ほな、まずは、その姿の時から、頑張って慣れり。」
「まずは……って、どう言う意味でございまするか?」
「大きゅうなっても、宜しくな。ちゅう意味や。」
「からかわないで下さいまするか。」
「めっさ、顔、真っ赤やで。
頬っぺたにチュウしたろか。」
「………」
「自分……可愛いすぎやろ。」
真っ赤な顔をしながら、俯いているレイヒト君を見ながら、プグナコちゃんが満足そうな顔をしている。
「皆さん。村の外に出るでございまする。
この村が平和的な理由が分かったでございまする。」
先刻まで真っ赤な顔をしていたレイヒト君が……
急に困った顔をしながら、皆を見ていた。
■■■
「ハッキングしている、ウルチヨの通信機器から得た情報なのでございまするが……
この村は、麻薬ではなく、麻酔薬を作っているみたいでございまするな。
ただ、麻酔薬や麻薬は、拙者達以前に召還された方々が、益にも害にもなるが、便利な薬として広めようとしたらしいのでございまするが……
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の多くの人達に、痛覚や眠気を消して、ハイテンションにしてくれる薬だと誤認されたらしいのでございまする。
それで、ギルド本部は、一般人が気楽に買えないようにする為に、ムルル自治区のような無法地帯に村を作り、その村の中に麻酔薬の工場を作り、
正しい知識を持った薬師以外の手に渡らないようにしようとしたらしいのでございまするが……
その判断が、裏社会の方々に付け入る隙を与えてしまい、更に収拾がつかない事になってしまっているようでございまする。
因みに、ウルチヨ達のような現場の責任者は、こうなる事を、ある程度、予測していたみたいでございまするな。
そんでもって、ギルド本部の決定に異を唱えなかったのは……
麻薬の中毒性に目をつけて、ギャクコン団のような素行不良だけど、実力の有る冒険者を自分の手駒にする為に利用しよう。と考えたからみたいでございまする。」
「成る程。
でっ。グマリハの村の人達は、何処まで知ってはるんや?」
レイヒト君の報告を聞いたプグナコちゃんが、ボソッと呟いた。
「ウルチヨの会話の中に……それに関する内容は無かったので不明でございまする。
ただ、カリーナ帝国以外の国々にも、拙者達の世界(ムシュ イム アン キ)から召還された方々が居らっしゃるらしく……
麻酔薬や外科手術等、拙者達の世界(ムシュ イム アン キ)の医療技術は、
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)では、魔法や魔術を使った医療には劣るものの、
マナを必要とせず、受けているジョブ補正の内容やランクに左右され無い稀有な技術として、
医療系の魔法や魔術のバック アップとして発展を遂げさせたい。
ギルド本部は、そのように考えておられるようでございまする。
特に、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)では、
辺境の小さな村などにモンスター氾濫を含めた自然災害時等が発生し、
医療系のジョブ補正を受けた者のマナが尽きるような状況に陥った場合……村ごと消滅するような事も珍しい事では無いらしいのでございまする。
そんでもって、拙者達の世界(ムシュ イム アン キ)の医療技術は……
そんな状況を劇的に改善してくれると、期待されている技術のようなのでございまする。
ですから、その……拙者達の逃亡劇に、これ以上、この村を関わらせたくないのでございまする。
勿論、皆様が疲れているのは十二分に承知してはおるのですが……
拙者としては、この村から速やかに立ち去りたいのでございまする。」
レイヒト君が真剣な顔をしながら話す。
「了解。
皆、速やかに移動を始めるよ。」
「了解。」×8
皆が嫁の指示に頷く。
「有り難うございまする。」
レイヒト君が嬉しそうな顔をしながら、皆に御辞儀をした。
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