休息と作戦の変更
『サルクル殿。
ハッキングしている、ウルチヨの通信機器から得た情報なのでございまするが……
蒸気機関車を使って、クパドゥ王国に繋がる街道に先回りする予定だった増援部隊の行動予定に変更が出たようでございまする。
どうやら、彼達は、クパドゥ王国の領土の5キロメートルぐらい手前にあるオワテン駅に着き次第、馬喰らい街道の南回りルートを北上するようでございまするぞ。』
時刻は11時。
仮眠中の他のメンバーの事を考えてか、レイヒト君がヒソヒソ声で話す声が携帯から聞こえてくる。
「成る程ね。
僕達がムルル自治区経由でガパパ連邦に向かう可能性に気がついたのだろうね。
でっ。僕達の通った道を追って来てる部隊の行軍スピードは上がった?」
『彼女達の行軍スピードは上がってないでございまする。
増援部隊についても……今の行軍スピードならば、彼達とカチ合わずにムルル自治区に行けそうでございまする。』
レイヒト君が、僕の質問にヒソヒソ声で答えてくれる。
「成る程ね。
そう言えば、増援部隊は、僕達の世界(ムシュ イム アン キ)から召還されたての人達と、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の冒険者のパーティーの混成部隊。って言ってたけど……
冒険者のパーティーの方の情報も掴めた?」
『ギャクコン団と言うAクラスの冒険者のパーティーのようでございまするな。
因みに、ギャクコン団は……素行不良で有名らしいですな。
ギルド本部からウルチヨに、登録者の資格の剥奪を検討すべし。と言う勧告が何回も出ているようでございまするな。』
レイヒト君が、ヒソヒソ声で、僕の質問に答えてくれる。
「成る程ね。
てっ。事は……増援部隊に関しては、ムルル自治区に入ってからも、追っかけて来る可能性も考慮しないといけなさそうだね。」
『その結論に至った理由を教えて頂きたいでございまする。』
レイヒト君の興味津々な声が携帯から聞こえてくる。
◇◇◇
「ギャクコン団は、素行不良なんでしょ?
だったら……ヴェルさん達を捕まえた時の懸賞金欲しさに、
ギルドのルールや、カリーナ帝国と他国との国際問題や、国家の領土や緩衝地帯のルールを無視して、地の果てまで追って来る可能性がある。って事だよ。
そんでもって、僕達の世界(ムシュ イム アン キ)から召還されたての人達に関しては……ギルドのルールや、カリーナ帝国と他国との国際問題。国家の領土や緩衝地帯のルール等についての、正確な知識を持っているか怪しい気がする。
もし、この僕の勘が当たっていたら……
案内役のギャクコン団に導かれるままに、地の果てまで追って来る可能性がある。って事だよ。」
『成る程。
でっ。拙者達の通った道を追って来られおる部隊の方々は……ギルドのルールや、カリーナ帝国と他国との国際問題。国家の領土や緩衝地帯のルール等を勘案し、拙者達がムルル自治区に入ったところで追跡を断念する。
そう言いたいのでございまするな?』
レイヒト君が、更に踏み込んだ質問をしてくる。
「そう言う事。」
『でっ。もし、その予想が当たった場合……サルクル殿は、どうなされるおつもりでございまするか?』
レイヒト君が、恐る恐る。って感じで質問をしてくる。
「状況次第だね。
最悪、レイヒト君の元同級生を殺すかもしれないけれど……その時は……ゴメンね。」
『元クラスメートの大半は、拙者を苛めた者と、傍観者でございまする。
彼達への非道な仕打ちは……寧ろ、ザマァでございまするが……
何人かは、こっそりとではあるものの拙者を助けてくれたでございまする。
それに……サルクル殿達のように拙者達の召還に巻き込まれただけの方も居らっしゃるようでございまする。
拙者としては、そう言った方々にだけでも、やり直すチャンスを与えて欲しい。と思うのでございまする。』
レイヒト君の真剣な声が携帯から聞こえてくる。
「パパ。可能な限り、レイヒト君の気持ちを汲んだ作戦を立ててあげてね。」
少し前に起きてきた嫁が、会話に加わってくる。
「了解。」
「素直で宜しい。
てか……なんで、ずっと止まってるの?
トイレ休憩の時間にしては……長すぎない?」
嫁が、不思議そうな顔で窓の外を見ている。
『僭越ながら、その説明。
今から、拙者がさせて貰いまする。』
レイヒト君の元気な声が携帯から聞こえてきた。
■■■
『とっ。言う訳でございまする。』
時刻は12時を過ぎたところだ。
レイヒト君の説明を聞いた嫁の指示で、皆を起こし、
レイヒト君から状況を説明して貰ったのだ。
『仮眠させて貰ってる場合じゃなかったわ。』
レイヒト君の説明を聞いたアルコさんが、ボソッと呟く。
『いや。お前さん(アルコ)の判断は間違えてねぇ。
事故るよりかは、遥かにまっしだ。』
「だね。」・『ですよね。』
ベアゾウさんの言葉に、嫁とバンオさんが同時に頷く。
『それよりも、ギャクコン団とはねぇ……
ウルチヨも、面倒な奴達に追っ手の依頼を引き受けさせたもんのだよ。』
『だよね……
ギャクコン団は、アタシがアルコやベアゾウとパーティーを組んでいた時のパーティーですら、互角の相手だった。
まぁ……サルクルさん達から見れば、等しく雑魚なんだろうけど……
あいつ達は、狡猾で執念深い。
バンオやメア・ルオとの今後の生活を考えたら……
個人的には、彼達との因縁を、サルクルさん達と行動を共にしている間に絶ちきっておきたいところよね……』
アルコさんの言葉にヴェルさんが頷く。
『人生とは選択の連続や。
そんでもって、選択の責任は自分で負わなアカン。
勿論、どの選択をしても……結局のところ詰むやん。ちゅうような理不尽な状況になる。ちゅう事は理解してる。
せやけど……ウチ達に他人に事情に配慮してやる程の余裕はない。
それに……そもそも、レイヒトを苛めてはった奴達には、どんな目にあってはったとしとも、1ミリも同情するつもりはあらへん。
何故なら、その事が、レイヒトを苛めてはった事実をチャラにする理由にはならへんからや。』
プグナコちゃんの淡々と話す声が携帯から聞こえてくる。
「でっ。パパ……どうする?
わたしとしては、ムルル自治区に入っても追って来る奴達に関しては、こっちから叩き潰しに行っても良い。って思うんだけど……」
嫁が、僕の意見を聞きつつ、皆の意見を纏めたような内容を提案をしてくる。
◇◇◇
「取り敢えず、追っ手を潰す。潰さない。は……
ムルル自治区に入って来る。入って来ない。で決めよう。
それは、そうと……ムルル自治区にも、子供用の服とか、売ってるのかな?」
『何を企んでるのかは分からないが……ムルル自治区にも子供が住んでいる筈だ。
だから、当然、子供の服も売ってると思うわよ。』
アルコさんの困惑した声が携帯から聞こえてくる。
「じゃあ……ムルル自治区に入り次第、子供用の服を買わないとね。
取り敢えず、今回、僕達の世界(ムシュ イム アン キ)から召還された人の多くは、レイヒト君の事を知っている。
だから、僕達が他の召還者とは別ルートで、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に召還された事を知られない為に、レイヒト君の肉体年齢を子供の頃に戻そうと思うだよね。」
「パパらしい、ズルいけど、合理的な作戦ね。
レイヒト君。嫌だったら……嫌。って言っても良いんだぞ。」
嫁の苦笑いしながら、僕を見ている。
『元クラスメートの多くは、きっと……拙者を見つければ、ウザ絡みしてくるかと思われまする。
拙者も、易々と、やられるつもりはございませんが……
なにぶん、拙者の異能は戦闘向きとは言えないでございまする。
ですから……拙者の事を元クラスメート達に認識され難くする。と言う、サルクル殿の提案は、非常に有難い限りでございまする。』
「了解。
レイヒト君の許可も得られた事だし、ムルル自治区で子供服を買いながら、追っ手の様子を伺うとしますか。」
『了解。』×8・「了解。」×3
僕達は、皆の意見を纏めた、嫁の提案に頷く。
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