【サイドストーリー】密談(チリゾウ視点)
「ヴェル達が、ムルル自治区に向かってる。って言う話……何処から仕入れたんだい?」
カリーナ帝国の諜報部隊の隊長のイギンゲシュトゥグの副官の地位を得ているカキリの言葉に、
カリーナ帝国のギルドの支部長をしているウルチヨが、前のめりになって質問をする。
時刻は22時。
このバーは、俺達のアジトの1つだ。
しかも、今は、俺達の仲間以外は誰も居ない。
だから、ここでの出来事は……決して表に出る事は無い。
◇◇◇
「十中八九、彼女達は、
貴女が裏で、我が国(カリーナ帝国)に、ヴェル達が持っている携帯用の通信機器から割り出した位置情報を、我が国(カリーナ帝国)にリークしていると考えている筈よ。
だから、自分達が、ガパパ連邦を目指している事や、
今、馬喰らい街道の南回りルートを移動している事を、我が国(カリーナ帝国)に知られている事を前提に動いていると思うわ。
そして、その場合……
蒸気機関車を使って、クパドゥ王国経由でガパパ連邦に入るのを阻止しようとされる事も想定の範囲内でしょうね。
でっ、アタシの予想が当たっていると仮定した場合……
貴女が、彼女達の立場ならば、どうする?
ムルル自治区経由で、ガパパ連邦を目指そうと思わないかしら?」
「貴女が言うように、私が、ヴェル達の情報を、貴女達(カリーナ帝国)に、リークしていればそうなるだろうね。
だけど……そんな危険な真似をしないわよ。
何故ならば、ギルド本部は、カリーナ帝国と他国との境目の緩衝地帯に居る間は、カリーナ帝国軍が、ヴェル達を敵前逃亡の罪で逮捕する事については黙認する。って言う決定を下しただけ。
それ以上の干渉を求めていないのだから。」
ウルチヨが、苦笑いしながら、カキリの質問をはぐらかそうとする。
「はぁ……貴女は……我々、諜報部隊を舐めすぎよ。
ヴェル達を捕まえる為に、我が国(カリーナ帝国)の帝都から出された増援部隊は、
貴女が我が軍(カリーナ帝国軍)の警備隊の総隊長のキルシポ様に進言した部隊でしょ?
因みに、キルシポ様は、この事を、お認めになられているわ。
そんでもって、その証拠となるやり取りのメールを、アタシの上司のイギンゲシュトゥグにも共有しているわ。
嘘だと思うのならば……明日にでも、キルシポ様に聞いてみれば良いわ。」
カキリは、そう言いながらニヤリと笑う。
「…………………」
ウルチヨが、青い顔をしながら黙る。
「その沈黙は……肯定と捉えて宜しいのですね?
しかも……帝都からの増援部隊の案内役として、ギャクコン団とか言うAクラスの冒険者のパーティーまでつけてくれたらしいですわね?
まぁ……ヴェルは元Aクラスの冒険者で、彼女の護衛と言う名目のアルコとベアゾウは現役のAクラスの冒険者。
しかも、その3人は……元パーティーで、ギルドの登録者の多くの人達から慕われていた。
だから、ギャクコン団が素行不良で有名な連中でも……消去的に、彼達を派遣せざる得なかった。
貴女の苦渋の決断は仕方がなかった。とは思うけど……
そもそも、素行不良のギャクコン団の登録を解除していないのが不思議ですわね。って……
失礼。ギルドは我が国(カリーナ帝国)の組織ではありませんでしたよね……越権行為。失言でした。
それはさておき、貴女だけではなく、秘書の方にまで、来て頂いたのには訳があります。
そろそろ、本題に入りますね。」
カキリがそう言いながら、俺にウインクをしてくる。
テンパってる、ウルチヨが、気がつくとは思わねぇが……
俺とお前さん(カキリ)の関係を知られたら、今後の仕事が、やり難くなるんだぞ。
そんでもって、もし、そんな事にでもなれば、
主様に怒られるのは、お前さん(カキリ)だけではないんだぞ。
【虹を見たい者達】が、裏切り者と悪意無き愚者を同列に扱う事を、お前さん(カキリ)だって知ってるだろうが。
全く……お前さん(カキリ)の失態の巻き込まれ事故なんて御免だぞ。
◇◇◇
「そう構えないで下さいな。
アタシが、貴女達を呼んだのは、
イギンゲシュトゥグが、陛下(カリーナ皇帝)や、我が国(カリーナ帝国)の宰相のカブズル様や、我が国(カリーナ帝国)の第1皇女で我が軍(カリーナ帝国軍)の総大将でもあらせられるムシェンサン様に、
今回、貴女が、ヴェル達を捕まえる事に尽力して頂いている旨を報告した上で、
陛下(カリーナ皇帝)へ、貴女への感謝の意を大々的に表明した上で爵位を与えて頂きたい。と進言された。と聞いたからよ。
もし、そうなれば……
貴女は、十中八九、ギルドから追放されるわね。
そんでもって、貴女がいくら爵位を賜ったとはいえ……
我が国(カリーナ帝国)とギルドとの関係性を考えると、貴女に良い役職を与える事は出来ないでしょうから……
我が国(カリーナ帝国)から頂ける給金は雀の涙ぐらいだと予想する事が出来るわ。
つ・ま・り。
貴女の生活の質は、今よりも格段に落ちる。って事になるわね。
もし、それが、嫌であれば、アタシが、カブズル様やムシェンサン様の協力を得ながら、イギンゲシュトゥグの進言を取り下げさせるとともに、
陛下(カリーナ皇帝)にも、ご理解を頂けるよう説得させて貰うわ。
但し、その見返りとして、
定期的にギルド本部にある情報機器等から、アタシが欲しい情勢を抜き出して欲しいのよねぇ……」
「キルシポは……この事を知ってるのかい?」
ウルチヨが苦々しい顔をしながら、カキリに質問をする。
「えぇ。
貴女が派遣してくれた冒険者のパーティーが、素行不良のギャクコン団だと言う事を知っていたら、増援部隊のメンバーを異世界(ムシュ イム アン キ)人にはしなかった。と困った顔をしていたわ。
まぁ……そうなるわよね……
状況次第では、クパドゥ王国の領内に入る可能性もあるのだから……
もし、そうなれば、国際問題を引き起こす未来しか考えられない。
その理由は……わざわざ、言わなくても分かるわよね?」
カキリが、虚実を織り交ぜながら、ウルチヨを言葉巧みに追い詰めていく。
◇◇◇
「そうそう。
我が軍(カリーナ帝国軍)の警備隊の総副隊長のラヤカス様の指示のミスのせいで、クシソロウと言う名前の高位貴族のバカ息子が率いる部隊が壊滅したらしいのよ。
でっ。ラヤカス様は総副隊長と言う立場の高位貴族。
対する、キルシポ様は総隊長と言う立場の平民。
因みに、能力的な意味では、キルシポ様とラヤカス様では月とスッポン。
なので、今のところ、クシソロウ様の死の責任を、ラヤカス様に取らそうと言う声の方が大きいらしいのだけど……
増援部隊の案内役が、ギャクコン団だと分かれば……どうなるかしらね……
キルシポ様が責任を負わさせるのか……
はたまた、ギルドから追放された平民の貴女になるのか……」
カキリが、ニヤニヤと笑いながら、更に、ウルチヨを追い詰めていく。
「でね。最初の話に戻ろうか。
ヴェル達が、ムルル自治区に向かってる。
もし、アタシが、この情報を、キルシポ様や貴女に流した事にすれば事態は大きく変わる。
何故ならば、あの無法地帯の引率者としてならば、ギャクコン団以上の適任者はいないからよ。
そんでもって増援部隊として、あの無法地帯に行きたい警備隊員など居ない。
だから、異世界(ムシュ イム アン キ)人を派遣せざる得なかった。
一応、筋が通る話になるわよね。
後は……ヴェル達が、クパドゥ王国経由でガパパ連邦を目指せないように、ギャクコン団と警備隊のキュルコ様の部隊を死ぬ気で指揮すれば何とかなる筈よ。
まぁ、これに対しても……見返りを求める。って言いたいところだけどさぁ……
アタシは、欲深くないから、先刻、言った見返り以上は求めないわ。」
「分かった。
ギルド本部の機密情報を含めて、あんたが求める情報を全て流す。
そんでもって、私が動けない場合……
私の秘書のチリゾウを、使い倒してくれて構わない。
だから、どうか……
今後も、私が、この地位(ギルドのカリーナ帝国支部の支部長)で居られるように動いて欲しい。」
「了解。
交渉成立ね。」
カキリは、涙を浮かべながら、土下座するウルチヨに、握手を求める。
「有り難う。
この恩は絶対に忘れない。」
「忘れても良いわよ。
けど……この会話は録音されている事と、この会話が諜報部隊で保管される事は忘れないでね。
そして、もし、貴女が約束を違えた場合、
諜報部隊は、ギルド本部へのリーク等を含め、あらゆる手段を使って、貴女と貴女の家族を叩き潰すつもりだ。って事も忘れないでね。」
涙を浮かべながら、お礼を言うウルチヨを見下ろしながら、
カキリは満面の笑みを浮かべながら最後の脅しをかけていく。
「カキリ様から頂いた、ご恩に報いられるよう、最大限の努力をさせて頂きます。」
ウルチヨが怯えた表情をしながら、カキリに返答を返す。
「はぁ……そんな目で見られたら……
もっと親交を深めたくなっちゃうじゃん。」
カキリが、そう言いながら、自分の陰部をまさぐり始めた。
どうやら、ウルチヨの態度が、カキリの性癖を刺激してしまったらしい。
本当に……面倒臭い事になってしまったわ。
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