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ニートを夢見る脇役達の異世界解放奇譚  作者: モパ
【第2章】大戦前夜
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【サイドストーリ】追う者達の明暗②(クスケ視点)

「クスケ。


先導の連中に、もっとスピードを上げるように指示を出したい。


だから、皆に通信を繋いでくれ。」


「畏まりました。」


俺は、クシソロウ様の指示に頷きつつも……無茶振りをする先導の連中に、心の中で頭を下げた。



ラヤカス様に、キュルコ様への対抗心を煽りに煽られたクシソロウ様の指示は……正直なところ無茶苦茶も良いところだ。


そして、最悪なのは……クシソロウ様、ご本人が、その事に気がつかれていない事だ。



「イコチ。周囲の警戒を怠るなよ。」


「了解です。ご主人様。」


イコチが、小馬鹿にするような感じで俺の指示に頷く。


「おい。

イコチ。ふざけてる場合じゃないぞ。」


ハンドルを握るサツシュンが、そんなイコチの態度に苦言を呈してくれた。



【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】



【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】



後方から爆発音が聞こえると同時に、火柱が立つのが見えた。



「何が起こった?」


「分からない。

分かってる事は……後続が何かに襲われた。って、だけです。」


クシソロウ様への質問に、イコチが大きな声で返答を返した。



◇◇◇



『こちら、5号車。


6号車がリトル アース ドラゴン(ディノニクスに似た姿)の襲撃を受けて、エンジントラブルを起こし……


後続の7・8号車が追突して大破したのが見えました。


最後尾を走る、3台のバイクが、大破した車を避けて、薮の中に突っ込んだのも見えましたが……6・7・8号車の人員と同様、彼達の安否も不明です。』


「了解した。


この闇夜の中、戻っても助けようがない。


彼達が自力で生き残ってくれる可能性を信じて、我々は歩みを止めず先を急ぐぞ。」


『了解。』×15


バイクと車の運転手達が、クシソロウ様の指示に短い返答を返す。



クシソロウ様の言う通り、襲撃された者達を救える可能性は、限りなく0に等しい。


自分本位なクシソロウ様は別として……誰も感情的にならずに、機械的に最善策を取ってくれた事を、今は素直に喜ぼう。



◇◇◇



『5号車と6号車の間に居た、バイク乗りの3名が……三匹の魔虎。もしくは……魔豹に連れ拐われま……』



【ドォォォォーン】



大きな音と共に、少し離れたところから、火花のような物が見えた気がした。



『5号車です。続報です。


6号車が、運転手を失ったバイクに乗り上げて転倒しました。


爆発音や火柱の位置から考えると……どうやら崖下まで転落した模様です。』


『先導のコロイチです。


300メートル程、左にズレれば、崖の下まで、真っ逆さまです。


右側も、それなりにアップダウンはありますが……まだ、助かる確率があります。


道をハズレる場合……取り敢えず、右側にハンドルを切って下さい。』


『了解。』×13 ・「了解。」


コロイチの補足情報に、サツシュンをはじめとしたドライバー達が返答を返す。


「サツシュン。次の待機所で朝まで夜営する。


クスケ。ラヤカス様に現状をメールで報告しておけ。」


「畏まりました。」


俺は、敢えて、丁寧な言葉でクシソロウ様に返答を返す。



プライドの塊のようなクシソロウ様の事だ。


自分の非を認めるような、この指示に内心、イラつかれている筈だ。


だからこそ、些細なミスで、クシソロウ様の、ご機嫌を損ねて、八つ当たりのターゲットにされないように、細心の注意を払わないといけないのだ。



■■■



『こちら、先導のコロイチです。


瘴気の濃度が尋常ではないぐらい濃くなってきています。


通常であれば……待機所から退避するレベルです。


待機所で夜営する策に変更はございませんか?』


『こちら、1号車。

待機所での夜営の案。再考を願います。』


『こちら、5号車。

同じく、待機所での夜営の案。再考を願います。』


コロイチの言葉に、2人のベテラン隊員が反応を示す。


「くう。糞。糞。糞。

ラヤカス様からの評価が……がた落ちになるじゃねぇかよ。」


『こちら3号車のヤリマです。


生きてさえいれば……挽回のチャンスがありますわ。


落ち着いたら、アタシのナイスボディーで、いっぱい。いっぱい。慰めて差し上げますから……


どうか、叔父様方の言葉に耳を傾けて貰えませんでしょうか。』


「分かった。


ヤリマが、そこまで言うのならば……仕方がない。作戦を変更する。


クスケ。ラヤカス様に再度、メールをしろ。」


「畏まりました。」


俺は、クシソロウ様の指示に短い返答を返す。



ヤリマが体を張って、生き残るチャンスをくれたんだ。


このチャンス……絶対に無駄には出来ないからな。



◇◇◇



【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】



目の前に強烈な光が見えた気がした。



【キュル・キュル・キュル】

【キュル・キュル・キュル】

【キュル・キュル・キュル】



俺達の乗る車が……グルグルとバランスを崩して回り始めた。



【ガゴォォォォォーン】



そして……強烈な振動とともに、車が止まった。



◇◇◇



「外に出るわよ!」


【ガッチャ】


イコチがそう言いいながら、自分の横のドアを開けながら、俺の手を引っ張る。


「エルエル。居るんでしょ!おいで!」


「ニャアァァァ。」



【パァァァァーン】



荷物の番人として、ピックアップ トラックの荷台に居た、猫又のエルエルが、祓い魔法を纏いながら、イコチの肩に飛び乗ってきた。



「クシソロウ様。小瓶に封印しているバイクも出しました。


バイクに乗って、俺について来て下さい。



クスケ。イコチ。まさか、バイクを封印した小瓶を落としてないよな?


もし、落としているのならば……俺はクシソロウ様を連れて先に出る。



だから、お前達は、落とした小瓶を見つけ次第、そっちの林道を使って追って来てくれ。」


サツシュンが、淡々とした口調で指示を出してくる。



◇◇◇



「無い! 無い!バイクを封印していた……小瓶が無い!

クスケ! お願い! 探すの手伝って!」


イコチが、無茶振りをしてくる。



「クスケ。イコチとエルエルを任せた。

クシソロウ様。行きますよ。」


サツシュンは、俺にイコチを押し付けて、クシソロウ様を連れて、サッサと逃げるつもりらしい。



「うむ。先導を任せたぞ。」


クシソロウ様は、怯えた顔で、辺りをキョロキョロと見回しながら、サツシュンが小瓶から出したバイクに跨がる。



【バルルルーン】・【ブォォォォーン】



そして、サツシュンとクシソロウ様は、バイクのエンジンを始動させると……漆黒の闇に消えて行った。



◇◇◇



「こんな暗がりで、バイクを封印した小瓶を探すのは無理だ!


俺のバイクの後ろに乗れ! 直ぐにサツシュンを追うぞ。」


俺は、バイクを封印した小瓶を探しているイコチに怒鳴るように指示を出す。



「その必要はないわ。


『封印解除。』



サツシュンの優しさを無下には出来ない。


取り敢えず、日が昇るまで、止まらずに走り続ける。


だから……お願い。死ぬ気でついて来て。」


封印していたバイクを小瓶から取り出したイコチは、泣きながらバイクに跨がる。



「どう言う事だ?」


「ニャアァァァ。」


エルエルが、祓い魔法を纏いながら、俺の肩にダイブしてくる。


「えっ?えっ?えっ? どう言う事だ?」


俺は……目の前の光景に困惑するしかなかった。



◇◇◇



エルエルがダイブしてくるまでは、

車のフロントバンパーに木が激突して壊れていただけだった。



なのに、今、見えている車の姿は……

右斜め側から崖に激突し、運転席が完全に潰ている。


そして、車内には、サツシュンらしき肉の塊が飛び散っており、

それが見間違いでは無い。と主張するように、俺やイコチの服にも血がベットリとついている。



サツシュンの後ろ(運転席の後ろ)に座っていた俺が無傷だったのは奇跡のようにさえ思えてきた。


何故なら、俺の側のドアは……崖にピッタリとくっついているからだ。


てか、もし、後、数十センチぐらい、右にズレていたら……俺もただでは済まなかっただろうからな。



【ベシン】



「呆けてる場合にゃか!

このまま、ここに止まれば……

悪霊の仲間(にゃかま)入りか、モンスターの餌かの2択しかにゃくにゃるぞ!」


エルエルが、俺の頭を猫パンチしながら、気合いを入れてくれる。


「だよな。


エルエル。気合いを入れてくれて有り難う。

お陰で腹を括れたわ。


イコチ。遠慮は無用。死ぬ気でついて行く。

先導を頼む。」


「おう。」・「気にするにゃ。」


イコチとエルエルが、同時に返答を返す。



「クスケは(イチコ)を見失わないように頑張ると言ってるにゃ。


そんでもって、クスケの露払いは妾がするにゃ。


にゃから、イコチ。

(イチコ)は……自分の事だけに専念するにゃ。


そうする事が、妾達が生き残る為の最善策にゃ。」


「言われなくても分かってる。

出るよ。」


イコチは、そう言いながら、バイクのエンジンを吹かし始めた。


「おう。」・「うにゃ。」


そして、俺とエルエルの返答を聞くや否や、漆黒の闇に向かって、バイクを走らせ始めた。

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