山道の逃走①
『つまり、サルクルさんは……
アタシ達の事を、追っ手が勝手に事故った事で、戦わずして逃げられた幸運の持ち主。って事にしたい。って事かい?
サルクルさんならば、追っ手を恐怖のどん底に陥れるような策も練ろうと思えば、練れるんじゃないかい?
それを敢えてしない。って言う事は……敵対する者を殺すのを躊躇している。って事なのかい?』
アルコさんが、僕の発言の意図を探るような感じで質問をしてくる。
「襲撃してきた追っ手に多重事故を起こさせれば、最悪、死人が出る。
それに……たとえ生き残ったとしても、馬喰らい街道で乗り物を失えば、生存の可能性は、かなり低くなる。
勿論、全数の乗り物を潰す訳じゃないので……追っ手が幸運の持ち主であれば、残った乗り物に怪我人を乗せて、全員で撤退する事も可能かもしれない。
だけど……全員が乗れるだけの乗り物が残るかは、運次第だし……
たとえ、全員が乗れるだけの乗り物が残ったとしても……乗り物を失った怪我人を見捨てて、残った者達で、更に追撃して来れるかもしれない。
まぁ……犠牲者が増える事を覚悟の上で、僕達を追う事を優先するのであれば……その心が折れるまで、何度でも、同じ方法を繰り返すつもりだけどね……って、話が逸れたね。
追っ手には、可能な限り、僕達の事を運が良いだけの奴等と誤解されたままの方が良い。と言ったのは、
僕達が強い。追っ手が認識すれば、油断せずに綿密な計画を立てて襲撃して来る筈だからだ。
しかも……人数は、圧倒的に向こうが多い。
いくら、1人・1人が雑魚だったとしても……数の暴力には、敵わない可能性がある。
僕としては、そのリスクを、最小限に抑えたいんだよ。」
『成る程ね。
舐められた負け。って言う、アタシ達のような冒険者とは、真逆の考え方だけど……サルクルさんの言う事にも一理あるわね。』
アルコさんの苦笑いしながら話す声が携帯から聞こえてくる。
『取り敢えず、安全を最優先に考えて、カバパ連邦へのルートとしては、かなり遠回りになってしまうが……馬喰らい街道の南ルートを通り、クパドゥ王国に入ろう。
そして、クパドゥ王国経由で、ガパパ連邦を目指そう。』
『あの国は、カリーナ帝国の世界征服計画に反対しています。
ですから、俺も……ベアゾウさんの意見に賛成です。』
バンオさんが、ベアゾウさんの意見に頷いている。
「じゃあ……ルートは、今、言った内容で決定ね。
少しでも、追っ手に捕まるまでの時間を稼げるように気合いを入れていきましょう。」
嫁が話を上手く纏めてくれたところで、打ち合わせは終了した。
■■■
【ゴロ・ゴロ・ゴロ】・【ピカ・ピカ・ピカ】
【ドォォォーン】
【ゴロ・ゴロ・ゴロ】・【ピカ・ピカ・ピカ】
【ドォォォーン】
【ゴロ・ゴロ・ゴロ】・【ピカ・ピカ・ピカ】
【ドォォォーン】
「キャァァァー。」「ウワァァァー。」
時刻は22時。
バンク ベッドから、メアちゃんと、ルオ君の悲鳴が聞こえてくる。
「今の雷……結構、近くに落ちはったんちゃう?」
プグナコちゃんが、そう言いながら、ムクッと起きてきた。
「メア。ルオ。起きちゃったの。
カーテンは開けない方が良いわよ。」
「だな。
あいつ達の得意とする時間は、まだまだ先なのに……既に、結構な数の幽霊が居るもんな。」
コルとドマが、外の状況を伝えてくれる。
「困った。
喉が乾いたんだけど……飲んだら、オシッコがしたくなる。」
「そん時は、トイレまで、ついて行ったるさかい、気にせんで飲みなはられ。」
「俺も……飲んで良いか?」
「勿の論や。
安心して、水分補給しなはれ。」
「有り難う。」×2
「どういたしまして。」
プグナコちゃんが、優しい笑みを浮かべながら、バンクベッドの上に居る、メアちゃんとルオ君を見ている。
◇◇◇
『拙者達の世界(ムシュ イム アン キ)から召還された方々の中から選抜された1分隊(10名前後)と、ギルドから派遣された冒険者のパーティー1隊が、
拙者達を追う部隊として、新たにカリーナ帝国の帝都から放たれたようでございまする。
拙者達を追っている部隊を指揮している、カリーナ帝国軍の警備隊の副総隊長のラヤカスは、
拙者達が、馬喰らい街道の西回りルートから、林道を経由して、ガバパ連邦に繋がる街道に入るルートで、ガバパ連邦を目指している。と踏んでいるようでございまするが……
ギルドのウルチヨは、彼女に、
馬喰らい街道の南ルートから林道を経由して、クパドゥ王国に繋がる街道を通って、クパドゥ王国に入国し、
クパドゥ王国から、ガバパ連邦に入国するルートを選ぶ可能性も考慮するべきだ。と、彼女の上司のキルシポに進言したらしく……
それが発端となり、最初に、お伝えしたメンバーが、それを阻止する為に、クパドゥ王国に繋がる街道に先回りする事になったようでございまする。』
レイヒト君の焦った声が携帯から聞こえてくる。
「なぁ……【空の目】を元に作られた地図を見る限り、今更、カリーナ帝国の帝都から追っ手を出しはっても……ウチ達の先回りなんて出来ひんのちゃうんか?」
プグナコちゃんが、小首を傾げながら、タブレットPCを見ている。
『そうとも言えないでございまする。
理由は……既に、ご承知されているとは思いまするが……この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の町や村以外の道は、アスファルトどころか……石畳での舗装すらされていないでございまする。
そして、木々に囲まれた、大森林地帯では……
今、居る、馬喰らい街道のように、2台の大型トラックが、ギリギリ、すれ違えるぐらいの道幅の道が、
拙者達の世界(ムシュ イム アン キ)では、片側3車線以上ある、大きな幹線道路のよう感覚でございまする。
ですから……スピードは出せても、時速30キロ程度。
場所によっては、時速5キロぐらいが限界でございまする。
そんな中、新たな追っ手は、クパドゥ王国の領土の5キロメートルぐらい手前まで、時速100キロ近くで運行する事が出来る、蒸気機関車を使って移動する事で、拙者達よりも早く、クパドゥ王国に到達するつもりのようでございまするな。
因みに、この蒸気機関車の線路は、クパドゥ王国の領内まで引き込まれているらしいのでございまするが、
クパドゥ王国とカリーナ帝国が険悪な関係になった事で、無期限の運休となっているようでございまする。
このような状況から察するに、
拙者達が、クパドゥ王国の領土に入りさえする事が出来れば……新たな追っ手も、拙者達の追撃を諦めるかと思いまするぞ。』
レイヒト君が、プグナコちゃんの疑問に答えつつ、新たな情報も教えてくれた。
「成る程ね。
馬喰らい街道の南ルートから、クパドゥ王国に繋がる街道を通らずに、クパドゥ王国に入国するルートはある?」
『馬喰らい街道の南ルートから、林道を経由して、ムルル自治区に入り、
ムルル自治区から、林道を通って、クパドゥ王国に入国する事は可能だ。
ただ……ムルル自治区は、犯罪者や冤罪を受けた者や、様々な国や部族で政争で負けた者達が自然と集まって出来た無法地帯。
便宜上、自治区と呼ばれているが、決まった統治者が居る訳ではない危険地帯だ。
カリーナ帝国からの追っ手に、俺達の追撃を躊躇させる事は出来るかもしれねぇが……
俺達自身が危険な状況下にある。と言う意味では、大して変わらないだろうな。』
僕の質問を聞いた、ベアゾウさんが、淡々とした口調で答えてくれる。
「それを言わはったら……カリーナ帝国からの追っ手を撒くために、モンスターや悪霊が跋扈しはる馬喰らい街道を移動してはる、今も、大して変わらへんのちゃう?
せやから、ウチは、カリーナ帝国からの追っ手を撒くために、ムルル自治区を目指すべきや。って思うけどな。」
『プグナコちゃんの言う通りね。
取り敢えず……安全第一で、ムルル自治区に向けて移動しましょう。
ベアゾウさん。アルコさん。先導、宜しくね。』
『了解。』×2 ・『了解。』×2
嫁の指示に、ベアゾウさんとアルコさん。ヴェルさんとバンオさんが、短い返答を返してくれた。
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